スタチンの高齢者への一次予防効果(2026年オーストラリアの介入試験)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの高齢者への一次予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2026年8月29日付で掲載された、
スタチンの高齢者への健康効果についての論文です。

スタチンというのは、
コレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力に血液中のコレステロールを低下させる作用を持ち、
高コレステロール血症の治療薬として、
世界的に広く使用されている薬剤です。

その使用は、
特に心筋梗塞などの心血管疾患の、
再発予防(二次予防)に有効性が高く、
こうした病気の診療においては、
必須の薬としての地位が確立しています。

スタチンにはコレステロール低下作用だけではなく、
抗炎症作用など、
動脈硬化などの血管病変を抑制するような、
多彩な作用が確認されていて、
その相乗効果として、
血管病変のトータルな進行予防に有効であることが、
これまでの精度の高い臨床データにより、
明らかになっています。

ただ、70歳以上の高齢者については、
あまり明確なことが分かっていません。

多くの臨床試験において、
高齢者はその対象外となっているからです。

そこで今回の研究はオーストラリアにおいて、
70歳以上で心血管疾患や糖尿病、認知症の既往がなく、
生活も自立している9971名の高齢者を対象として、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は代表的なスタチンの1つであるアトルバスタチンを、
1日40㎎で使用し、
もう一方は偽薬を同様に使用して、
中央値で5.9年の経過観察を施行しています。

スタチンはそもそもはコレステロールの降下剤ですが、
この試験ではコレステロールの数値には関わらす、
スタチンは使用されています。
対象者のLDLコレステロールの平均値は127mg/dLです。

その結果、
スタチン使用群は偽薬群と比較して、
心血管疾患による死亡や心筋梗塞、脳卒中などを併せたリスクを、
30%(95%CI;0.61から0.82)有意に低下させていました。
ただ、総死亡や認知症、身体障碍を併せたリスクについては、
明確な両群の違いは認められませんでした。
安全性の面ではスタチン使用群で、
糖尿病の発症などは少し増加していましたが、
有害事象は少なくとも重度のものは、
両群での有意な差は認められませんでした。

このように、
今回の高齢者のみを対象とした厳密な検証において、
高用量のスタチンの使用は、
心血管疾患の発症リスクを低下させる効果が確認されました。
ただ、トータルに障碍のない生存期間を延長するような効果については、
明確に確認はされませんでした。

今回のデータのポイントは、
これまで高齢者ではスタチンは無効、
という考え方もあったのですが、
そうではないよ、ということで、
大きな病気のない健康な人に、
70代以上で使用を開始しても、
一定の脳卒中や心筋梗塞の予防効果はありそうだ、
ということがまず1点。
一方で、寝たきりや認知症になることなく、
健康な長生きを達成出来るかというと、
そこまでの効果はなさそう、
というのが2点目になるかと思います。

ただ、今回使用されている1日40㎎というのは、
日本の健康保険では、
家族性コレステロール血症のみに、
使用可能な高用量なので、
その点は注意する必要があります。

70歳以上の年齢での、
一次予防目的でのスタチンの継続的使用については、
こうしたデータを参考にしながら、
個別に検討する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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