SGLT2阻害剤が心不全に有効なメカニズム
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Science誌に2026年8月27日付で掲載された、
心不全に非常に有効性が高く評価の高い薬剤の、
これまで不明であった作用メカニズムを検証した論文です。
SGLT2阻害剤というのは、
SGLT2という尿細管に発現している、
尿中のブドウ糖を血液に再吸収させる働きを持つ、
蛋白質の作用を阻害することにより、
尿に出るブドウ糖を増加させ、
血糖を低下させる作用を持つ薬です。
こうしたメカニズムから、
2型糖尿病の治療薬として使用が開始されましたが、
その臨床試験の段階から、
心不全の進行や、心不全の増悪を、
糖尿病の重症度とは別個に抑制する、
という効果が確認され、
心不全の治療薬としても使用が開始された経緯があります。
臨床的には、
心不全の治療薬としての有効性は確立していますが、
その一方で、
何故糖尿病の治療薬が心不全に有効なのか、
という点については、
現在でも明確なことが分かっていません。
本来のSGLT2阻害剤の作用は、
SGLT2という蛋白質の働きを抑えることですが、
心臓にはSGLT2は殆ど発現していない、
ということが分かっています。
SSGLT2阻害剤を継続的に使用すると、
身体は相対的に糖分が不足した状態となり、
糖質制限に近い効果があるのでは、
という仮説はあります。
脂肪の分解が促進されてケトン体が増加し、
それが心臓のエネルギー代謝にも、
良い影響を与えるのではないか、
という考え方です。
ただ、動物実験のデータでは、
SGLT2の遺伝子を働かなくしたネズミでも、
その心保護作用自体は認められています。
こうした知見からは、
SGLT2阻害剤には、
直接SGLT2を介さないような作用もあり、
それが心臓への効果に結び付いているのでは、
という方向性が見えて来ます。
しかし、それは一体どのような作用なのでしょうか?
今回の研究では、
心臓移植時などに採取された、
人間の心筋(心臓の筋肉)の組織を用い、
そこに培養液を還流させて、
ほぼ人間の心臓に近い環境を再現。
通常の投薬でも達する組織濃度に調整した、
SGLT2阻害剤のエンパグリフロジンを添加して、
そこで心筋に起こる現象を詳細に検証しています。
その結果、
エンパグリフロジンは心筋組織の、
PANK1という酵素に結合し、
心筋のエネルギー代謝に関連する、
コエンザイムAを結果として増加させる、
というメカニズムが確認されました。
要するに、
もともと尿細管のSGLT2に結合して、
その働きをブロックすることで効果を発現するように、
創薬された薬剤が、
それとは別個の部位である、
PANK1という酵素にも結合し、
当初は想定されないような効果を来した、
ということが確認されたのです。
これが事実であるとすると、
糖尿病に対するSGLT2阻害剤の効果と、
心不全に対するそれとは別物ということになり、
尿細管のSGLT2には影響せずに、
PANK1のみに結合して作用する、
という薬剤が創薬される可能性があるので、
SGLT2阻害剤がその特有の有害事象である、
外陰部や尿路の感染症などのために、
使用が困難な患者さんにおいては、
福音となる可能性もあります。
ただ、複数の作用を併せ持つ薬剤の場合、
それを分離して創薬することは、
それほど簡単ではないことも多く、
今後の経緯を慎重に見守りたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Science誌に2026年8月27日付で掲載された、
心不全に非常に有効性が高く評価の高い薬剤の、
これまで不明であった作用メカニズムを検証した論文です。
SGLT2阻害剤というのは、
SGLT2という尿細管に発現している、
尿中のブドウ糖を血液に再吸収させる働きを持つ、
蛋白質の作用を阻害することにより、
尿に出るブドウ糖を増加させ、
血糖を低下させる作用を持つ薬です。
こうしたメカニズムから、
2型糖尿病の治療薬として使用が開始されましたが、
その臨床試験の段階から、
心不全の進行や、心不全の増悪を、
糖尿病の重症度とは別個に抑制する、
という効果が確認され、
心不全の治療薬としても使用が開始された経緯があります。
臨床的には、
心不全の治療薬としての有効性は確立していますが、
その一方で、
何故糖尿病の治療薬が心不全に有効なのか、
という点については、
現在でも明確なことが分かっていません。
本来のSGLT2阻害剤の作用は、
SGLT2という蛋白質の働きを抑えることですが、
心臓にはSGLT2は殆ど発現していない、
ということが分かっています。
SSGLT2阻害剤を継続的に使用すると、
身体は相対的に糖分が不足した状態となり、
糖質制限に近い効果があるのでは、
という仮説はあります。
脂肪の分解が促進されてケトン体が増加し、
それが心臓のエネルギー代謝にも、
良い影響を与えるのではないか、
という考え方です。
ただ、動物実験のデータでは、
SGLT2の遺伝子を働かなくしたネズミでも、
その心保護作用自体は認められています。
こうした知見からは、
SGLT2阻害剤には、
直接SGLT2を介さないような作用もあり、
それが心臓への効果に結び付いているのでは、
という方向性が見えて来ます。
しかし、それは一体どのような作用なのでしょうか?
今回の研究では、
心臓移植時などに採取された、
人間の心筋(心臓の筋肉)の組織を用い、
そこに培養液を還流させて、
ほぼ人間の心臓に近い環境を再現。
通常の投薬でも達する組織濃度に調整した、
SGLT2阻害剤のエンパグリフロジンを添加して、
そこで心筋に起こる現象を詳細に検証しています。
その結果、
エンパグリフロジンは心筋組織の、
PANK1という酵素に結合し、
心筋のエネルギー代謝に関連する、
コエンザイムAを結果として増加させる、
というメカニズムが確認されました。
要するに、
もともと尿細管のSGLT2に結合して、
その働きをブロックすることで効果を発現するように、
創薬された薬剤が、
それとは別個の部位である、
PANK1という酵素にも結合し、
当初は想定されないような効果を来した、
ということが確認されたのです。
これが事実であるとすると、
糖尿病に対するSGLT2阻害剤の効果と、
心不全に対するそれとは別物ということになり、
尿細管のSGLT2には影響せずに、
PANK1のみに結合して作用する、
という薬剤が創薬される可能性があるので、
SGLT2阻害剤がその特有の有害事象である、
外陰部や尿路の感染症などのために、
使用が困難な患者さんにおいては、
福音となる可能性もあります。
ただ、複数の作用を併せ持つ薬剤の場合、
それを分離して創薬することは、
それほど簡単ではないことも多く、
今後の経緯を慎重に見守りたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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