全自動ロボット採血装置の有効性と安全性

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻っています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ロボット採血装置の有効性.jpg
Clinical Chemistry誌に2026年8月付で掲載された、
全自動のロボット採血装置の臨床試験についての論文です。

AIやロボットの進歩は凄まじく、
医療の世界でも人間の診断よりAI、
という流れがありますし、
手術をサポートするようなロボットも、
広く使用されて実績を上げています。

ただ、現時点でまだ専ら人間が行っている、
という医療行為も多く、
その代表の1つが採血や点滴などの手技です。

採血というのは、
注射器や採血管に付けた針で皮膚を刺し、
静脈から血液を採取して検査を行う、
という医療の基本的な手技の1つです。

血液検査でしか得られない情報は多く、
医療にとって必要不可欠な検査の1つですが、
その施行には幾つかの問題があります。

通常上腕を圧迫して抹消の静脈をうっ血させ、
血管を目で見て指で触りその感触を確かめ、
針を皮膚に刺す訳ですが、
これは採血者の感覚や経験に左右される部分が大きく、
採血をされる患者さん(健診では受診者、研究などでは被験者)の、
皮膚の厚みや血管の状態などにも大きな影響を受けます。

端的に言えば、
採血をする医療従事者の手技(上手い下手)や、
採血をされる方の血管の状態によって、
その成功率には大きな差があります。

また皮膚を刺すことで当然痛みがありますし、
患者さんによっては、
それで体調を崩したり、
血圧が一時的に低下して倒れたりすることもあります。
不快で出来ればやらずに済ましたいものですし、
誤って動脈を刺して大きく出血をしたり、
神経に触れて痺れや激しい痛みが生じることもあります。

それでは、
採血を完璧にこなせるようなロボットを開発して、
採血は全てロボットに任せれば、
こうした問題は解決するのではないでしょうか?

そこでオランダのVitestro社が開発したのが、
Alettaという装置です。

これは医療従事者の監督のもとに、
採血を受ける患者が自動の採血ロボットの前に座り、
スタートボタンを押すだけで、
後は全てロボットが採血を完了するというものです。

装置の全貌はこちらをご覧下さい。
ロボット採血装置の図.jpg
腕を装置に固定すると、
赤外線と超音波を活用して、
ロボットが適切な静脈を同定し、
皮膚を消毒して採血針を血管に挿入、
採血を完了して止血までを行います。

ポイントは赤外線と超音波検査で血管を同定し、
そこに正確にロボットが穿刺することで、
これにより人為的な採血ミスやトラブルは、
かなり低下することが期待されます。

それでは、実際の装置の性能はどうだったのでしょうか?

今回の臨床試験では、
オランダの外来採血を行っている医療機関において、
まず153名の被験者を対象に、
通常の人間による採血のデータと、
このロボット採血装置による採血のデータを、
複数の検査項目で比較をして、
結果として検査値に有意な差がないことを確認しています。

次に1633名の被験者を対象として、
ロボット自動採血装置による検査を施行。
その結果、
装置が採血可能な血管があると判断した事例において、
最初の穿刺で採血に成功する確率は、
94.5%(95%CI:93.3から95.5)と算出されました。

事前のアンケートで採血が難しいと言われている人でも92.7%、
肥満のある人でも97.4%、65歳以上の年齢でも93.4%と、
通常人間での採血で失敗しやすい人でも、
ロボットは高い採血成功率を示していました。

採血で今回の検査の範囲では、
後遺症を残すような採血トラブルはなく、
有害事象は0.6%に報告され、
採血による一時的血圧低下などの、
体調不良が主なものでした。

ロボット採血後の被験者へのアンケート結果では、
人間の採血と痛みは同等だったと言う人が39%、
うんと痛みが少なかったと答えた人が19%、
やや痛みが少なかったと答えた人が32%でした。

次回もロボットによる採血を希望するかと聞くと、
強く希望する人が16%、
希望する人が31%、
どちらでも良いと答えた人が35%でした。

要するに、
ロボット採血装置による採血は、
今回の臨床試験の結果では、
ベテランの採血者と同等以上の採血成功率があり、
被験者に与える不安や痛みなどの影響も、
人間の採血を上回るものではない、
という結果です。

この結果を受けてアメリカのFDAは、
人間の監督下でのロボット採血装置による採血を、
2026年8月正式に承認したようです。

ただ、
採血をされる人の痛みや不安を、
理解することはないロボットが、
痛みを伴う採血を行うという点には、
若干の違和感を感じます。
これが無痛の処置であれば問題はないと思うのですが、
痛みを伴うという点が問題と感じるのです。

また、
赤外線と超音波で血管を同定するという方法に、
予期せぬ落とし穴はないのかと、
その点も若干の不安を感じるところです。
何か他の構造物を血管と誤認して、
穿刺する可能性はあり得ると思うからです。

そんな訳で現時点で素直に受け入れるという、
気持ちにはなれないロボット採血装置ですが、
こうした機器の進歩は凄まじいものなので、
近い将来採血がロボットの業務になることは、
それほど絵空事とは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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