PPI関連胃症による胃底腺ポリープと薬剤中止の効果
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

DEN Open誌に2025年掲載された、
胃薬により誘発された胃ポリープの、
薬剤中止による縮小経過を詳細に観察した症例報告の論文です。
掲載されているのは英文誌ですが、
日本消化器内視鏡学会の学会誌です。
プロトンポンプ阻害剤は、
胃酸を強力に抑制する作用を持つ胃薬で、
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療薬として、
ピロリ菌の除菌薬の1つとして、
また胃酸が食道に逆流して炎症を起こす、
逆流性食道炎の治療薬として広く使用されています。
通常は1から2か月以内の短期間で、
その使用は終了しますが、
難治性の逆流性食道炎に限っては、
その慢性の経過から、
数年以上という長期間、
使用が継続されることが稀ではありません。
また、バイアスピリンなどの潰瘍のリスクのある薬剤の使用時にも、
再発抑制に限ってこの薬の長期使用が認められています。
プロトンポンプ阻害剤や、
その強化版と言える薬剤である、
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)は、
従来の胃酸抑制剤と比較して、
効果が強力で安定しているという特徴があります。
ただ、その長期使用により、
幾つかの副作用や有害事象が報告されています。
現時点でその関連が明確であるものとしては、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用により、
急性と慢性を含めた腎機能障害と、
低マグネシウム血症、
クロストリジウム・デフィシル菌による腸炎、
骨粗鬆症のリスクの増加などが確認されています。
それに加えて、
近年特に日本において、
胃内視鏡検査における異常所見が、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用で認められることが、
複数報告されています。
その中でも特徴的なのは、
胃酸などを分泌する腺組織から発生する、
胃底腺ポリープと呼ばれる良性の胃ポリープです。
こちらをご覧下さい。

上記文献に紹介されている1例目の事例です。
逆流性食道炎のため、
プロトンポンプ阻害剤のエソメプラゾールを、
1日20㎎で10年間使用継続していた、
63歳の女性のケースです。
図の左上の(a)は胃カメラ施行時の胃粘膜で、
胃の中央部分に非常に多くのポリープが出来ています。
赤い矢印の先には一際巨大なポリープがあり、
その大きさは25ミリくらいあります。
通常であればポリープの切除を検討する事例ですが、
薬剤の影響を考え、
プロトンポンプ阻害剤を中止して、
他の薬剤による治療に切り替えました。
それから35日後の胃カメラ画像が、
下の(c)と(d)になります。
この画像の赤い矢印の先の小さなポリープが、
実は当初の巨大ポリープと同じものです。
大きさは10ミリ未満に縮小しており、
勿論切除は必要ないと判断されました。
次にこちらをご覧ください。

上記文献に紹介されている2例目の事例です。
患者は60歳の男性医師で、
逆流性食道炎の治療のため、
プロトンポンプ阻害剤のラベプラゾールを1日10㎎、
12年に渡り服用しています。
その時点での胃カメラの画像が(a)と(b)になります。
胃の中にトータルで15個の胃底腺ポリープが認められ、
(a)の中央の矢印の先にあるのが、
20ミリ大の大きなポリープです。
黄色い球体が傍にありますが、
これは大きさを示すためのマーカーで大きさは丁度5ミリです。
(b)の矢印の先にあるはそれとは別のポリープで、
こちらは15ミリくらいあります。
事例1と同様にラベプラゾールを中止して、
その途中経過を示しているのが
(c)になり、
最終的に中止49日目を示しているのが(d)になります。
2つの大きなポリープは、いずれも5ミリ未満の大きさに縮小しています。
このように、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用により、
胃底腺ポリープと呼ばれる良性のポリープが、
胃粘膜に出現し増加します。
その出現メカニズムには不明の点もありますが、
プロトンポンプ阻害剤によって誘発される、
胃底腺の拡張が、
その原因として想定されています。
胃底腺拡張の原因としてはガストリンの上昇や、
ペプシノーゲンの上昇が関連するという説がありますが、
今回の事例ではガストリンの上昇は認められておらず、
この辺りはまだ一定の結論に至っていないようです。
いずれにしても、
プロトンポンプ阻害剤により出現し増大した、
胃底腺ポリープは、
その薬剤の中止により、
比較的速やかに縮小する性質のものです。
胃底腺ポリープは基本的に良性の病変ですから、
プロトンポンプ阻害剤の継続の可否は、
薬剤の必要性などを勘案して決定される必要があります。
ただ、それ以外にもプロトンポンプ阻害剤やその類似薬の、
長期使用による胃粘膜の変化は報告されており、
その全てが良性の経過を取ると断言出来るものではないので、
今後の知見の蓄積を注意深く見守りたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
DEN Open誌に2025年掲載された、
胃薬により誘発された胃ポリープの、
薬剤中止による縮小経過を詳細に観察した症例報告の論文です。
掲載されているのは英文誌ですが、
日本消化器内視鏡学会の学会誌です。
プロトンポンプ阻害剤は、
胃酸を強力に抑制する作用を持つ胃薬で、
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療薬として、
ピロリ菌の除菌薬の1つとして、
また胃酸が食道に逆流して炎症を起こす、
逆流性食道炎の治療薬として広く使用されています。
通常は1から2か月以内の短期間で、
その使用は終了しますが、
難治性の逆流性食道炎に限っては、
その慢性の経過から、
数年以上という長期間、
使用が継続されることが稀ではありません。
また、バイアスピリンなどの潰瘍のリスクのある薬剤の使用時にも、
再発抑制に限ってこの薬の長期使用が認められています。
プロトンポンプ阻害剤や、
その強化版と言える薬剤である、
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)は、
従来の胃酸抑制剤と比較して、
効果が強力で安定しているという特徴があります。
ただ、その長期使用により、
幾つかの副作用や有害事象が報告されています。
現時点でその関連が明確であるものとしては、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用により、
急性と慢性を含めた腎機能障害と、
低マグネシウム血症、
クロストリジウム・デフィシル菌による腸炎、
骨粗鬆症のリスクの増加などが確認されています。
それに加えて、
近年特に日本において、
胃内視鏡検査における異常所見が、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用で認められることが、
複数報告されています。
その中でも特徴的なのは、
胃酸などを分泌する腺組織から発生する、
胃底腺ポリープと呼ばれる良性の胃ポリープです。
こちらをご覧下さい。
上記文献に紹介されている1例目の事例です。
逆流性食道炎のため、
プロトンポンプ阻害剤のエソメプラゾールを、
1日20㎎で10年間使用継続していた、
63歳の女性のケースです。
図の左上の(a)は胃カメラ施行時の胃粘膜で、
胃の中央部分に非常に多くのポリープが出来ています。
赤い矢印の先には一際巨大なポリープがあり、
その大きさは25ミリくらいあります。
通常であればポリープの切除を検討する事例ですが、
薬剤の影響を考え、
プロトンポンプ阻害剤を中止して、
他の薬剤による治療に切り替えました。
それから35日後の胃カメラ画像が、
下の(c)と(d)になります。
この画像の赤い矢印の先の小さなポリープが、
実は当初の巨大ポリープと同じものです。
大きさは10ミリ未満に縮小しており、
勿論切除は必要ないと判断されました。
次にこちらをご覧ください。
上記文献に紹介されている2例目の事例です。
患者は60歳の男性医師で、
逆流性食道炎の治療のため、
プロトンポンプ阻害剤のラベプラゾールを1日10㎎、
12年に渡り服用しています。
その時点での胃カメラの画像が(a)と(b)になります。
胃の中にトータルで15個の胃底腺ポリープが認められ、
(a)の中央の矢印の先にあるのが、
20ミリ大の大きなポリープです。
黄色い球体が傍にありますが、
これは大きさを示すためのマーカーで大きさは丁度5ミリです。
(b)の矢印の先にあるはそれとは別のポリープで、
こちらは15ミリくらいあります。
事例1と同様にラベプラゾールを中止して、
その途中経過を示しているのが
(c)になり、
最終的に中止49日目を示しているのが(d)になります。
2つの大きなポリープは、いずれも5ミリ未満の大きさに縮小しています。
このように、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用により、
胃底腺ポリープと呼ばれる良性のポリープが、
胃粘膜に出現し増加します。
その出現メカニズムには不明の点もありますが、
プロトンポンプ阻害剤によって誘発される、
胃底腺の拡張が、
その原因として想定されています。
胃底腺拡張の原因としてはガストリンの上昇や、
ペプシノーゲンの上昇が関連するという説がありますが、
今回の事例ではガストリンの上昇は認められておらず、
この辺りはまだ一定の結論に至っていないようです。
いずれにしても、
プロトンポンプ阻害剤により出現し増大した、
胃底腺ポリープは、
その薬剤の中止により、
比較的速やかに縮小する性質のものです。
胃底腺ポリープは基本的に良性の病変ですから、
プロトンポンプ阻害剤の継続の可否は、
薬剤の必要性などを勘案して決定される必要があります。
ただ、それ以外にもプロトンポンプ阻害剤やその類似薬の、
長期使用による胃粘膜の変化は報告されており、
その全てが良性の経過を取ると断言出来るものではないので、
今後の知見の蓄積を注意深く見守りたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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