コーヒーとカフェインの健康効果(2026年アメリカ心臓協会の見解)
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Circulation誌に2026年7月20日付で掲載された、
コーヒーとカフェインの健康効果についての、
アメリカ心臓協会(AHA)による科学的提言です。
トータルには、
これまで何度もブログでご紹介した内容ですが、
幾つか興味深い知見も紹介されているので、
その辺りをクローズアップしてご紹介したいと思います。
カフェインは、
主にコーヒーやお茶などの飲み物に含まれる成分として、
古くから人間に好んで摂取されてきた、
天然の植物由来成分で、
細胞間の伝達に使用される伝達物質の一種である、
アデノシンに構造が似ているため、
アデノシンの受容体に結合して、
結果としてアデノシンの作用を抑制する、
拮抗薬としての働きを持っています。
脳を興奮させるドーパミン系の神経では、
アデノシンがその興奮を抑制しているため、
カフェインはアデノシンに拮抗することによって、
その働きを抑制し、
結果として脳を覚醒させ、
眠気を抑制します。
これがカフェインの覚醒作用と呼ばれるものです。
このカフェインのアデノシン受容体拮抗作用は、
通常飲むレベルのカフェインでも発現します。
脳以外へのカフェインの作用として、
心臓を動かしているペースメーカーの細胞の、
アデノシン受容体に結合することにより、
その細胞を興奮させ、心拍を増加させる作用があります。
また脳の興奮が交感神経を刺激して、
交感神経刺激による心臓の刺激も相俟って、
カフェインには強心作用があり、
血管を収縮させ血圧を一時的に上昇させるような働きも持っています。
腎尿細管のナトリウムと水の再吸収を抑制することにより、
尿量を増加させる作用があります。
これがカフェインの利尿作用と呼ばれるものです。
カフェインの代謝産物にテオフィリンがあり、
これは強い気管支の拡張作用を持っていて、
実際に気管支喘息の治療に使用されています。
胃腸の運動を刺激するような働きも持っています。
ガストリンという胃酸分泌ホルモンを刺激して、
胃酸分泌を促進する働きもあります。
ベンゾジアゼピンの作用に拮抗したり、
筋肉細胞の中にある筋小胞体からカルシウムを放出させ、
筋力を高めるような働きがありますが、
これらはいずれも高用量でのみ認められる効果で、
通常飲み物として摂取するレベルのカフェインでは、
殆ど認められないと考えられています。
フォスフォジエステラーゼという酵素を阻害することにより、
サイクリックAMPの働きを強めます。
結果として脂肪細胞の燃焼を促進しますが、
これも明確にそうした作用が認められるためには、
高用量のカフェインが必要となると考えられています。
カフェインは経口摂取された場合、
非常に迅速に吸収されることが分かっています。
口から摂取されたカフェインは、
20%が胃で、80%が小腸などの腸管から吸収され、
ほぼ100%が血液中に入ります。
血液濃度は摂取後1時間でピークに達し、
血中半減期は通常で4から5時間ですが、
代謝には個人差が大きく、
病的状態も含めると、
半減期は2から12時間と幅があります。
カフェインは主に肝臓において、
CYP1A2とCYP2C9という薬物代謝酵素によって分解され、
ほぼ全てが尿から排泄されます。
カフェインの人間の血圧への影響は複雑で、
急性の影響と慢性の影響とを、
分けて考える必要があります。
高血圧のある人が高用量のカフェインを摂取すると、
血圧の上昇を招くとする結果がありますが、
2011年のメタ解析の論文では、
コーヒーを殆ど飲まない人と比較して、
毎日1から3杯飲む人では高血圧のリスクが9%増加したものの、
3杯を超えて飲む人では、
むしろ高血圧のリスクは減少に転じたという結果になっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21450934/
概ねカフェインそのものの摂取や、
カフェインを多く含むエナジードリンクの摂取では、
特に高血圧を持つ人で、
血圧の上昇が見られやすい一方、
コーヒーやお茶などの使用では、
カフェイン量はほぼ同一でも、
血圧に対する悪影響は少ないか、
むしろ高血圧のリスク低下に繋がる、
という報告が多いのが特徴です。
糖尿病については、
以前にも何度かご紹介しているように、
コーヒーを適度に飲む習慣のある人は、
糖尿病のリスクが低下しているとする報告が、
多く認められています。
ただ、これがカフェインの作用によるものかどうかについては、
データにより結果は分かれています。
デカフェのコーヒーでも同様の結果が得られた、
という報告がある一方で、
カフェインの摂取量と糖尿病の予防効果には相関があり、
デカフェでは関連は低かった、
というような報告もあります。
カフェインは脂肪燃焼作用がありますが、
紙フィルターを使用しないコーヒーでは、
脂の成分であるカフェストールが多く含まれることにより、
LDLコレステロールが上昇することが知られています。
従って、健康のことを優先に考えれば、
コーヒーは紙フィルターを使用して飲むことが良いのです。
カフェインそのもののコレステロールに対する影響については、
あまりデータがなく検証出来ないのが実際です。
カフェインは、
主にそれを含むコーヒーのデータで見る限り、
心血管疾患や心不全に対しては、
特に影響を及ぼさないか、
そのリスクを低下させるか、
そのどちらかと考えられます。
カフェインを含むコーヒーは、
心房細動のリスクを上げるのではないか、
という危惧があり、そうした報告は存在していましたが、
2025年のJAMA誌に掲載された介入試験の論文では、
心房細動の患者さんの再発が、
カフェイン入りのコーヒーを飲んだ方が、
39%減少したという結果が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41206802/
コーヒーと脳卒中との関連については、
2021年のメタ解析の論文で、
1日3から4杯のコーヒーを飲む人は、
脳卒中のリスクが21%低下していた一方で、
それを超える量においては、
リスク低下は減弱する傾向を示していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33188952/
ただ、2022年に発表されたUKバイオバンクのデータを用いた解析では、
1日4から5杯以上のコーヒーで、
脳卒中リスクの低下が認められています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36162818/
この論文ではコーヒーを、
カフェイン入りのレギュラーコーヒー、デカフェのコーヒー、インスタントに、
分けて解析を行っていますが、
病気のリスクは概ねレギュラーコーヒーで最も低下していますが、
デカフェやインスタントでも、
それほど遜色のない結果になっています。
唯一不整脈の予防効果については、
カフェイン入りのコーヒーのみで認められていました。
こうしたデータを元にして今回米国心臓協会では、
カフェインを1日400㎎以内の範囲で摂取することは、
糖尿病など多くの心血管疾患のリスク因子を予防し、
虚血性心疾患や心不全のリスクも低下する可能性があり、
心房細動や脳卒中のリスクも低下させる可能性が高い、
とする提言をまとめています。
ただ、これは主にコーヒーを主体とするデータで、
そのうちのどの程度の部分がカフェインの作用であるのかについては、
現状は確定的な知見はないと考えておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Circulation誌に2026年7月20日付で掲載された、
コーヒーとカフェインの健康効果についての、
アメリカ心臓協会(AHA)による科学的提言です。
トータルには、
これまで何度もブログでご紹介した内容ですが、
幾つか興味深い知見も紹介されているので、
その辺りをクローズアップしてご紹介したいと思います。
カフェインは、
主にコーヒーやお茶などの飲み物に含まれる成分として、
古くから人間に好んで摂取されてきた、
天然の植物由来成分で、
細胞間の伝達に使用される伝達物質の一種である、
アデノシンに構造が似ているため、
アデノシンの受容体に結合して、
結果としてアデノシンの作用を抑制する、
拮抗薬としての働きを持っています。
脳を興奮させるドーパミン系の神経では、
アデノシンがその興奮を抑制しているため、
カフェインはアデノシンに拮抗することによって、
その働きを抑制し、
結果として脳を覚醒させ、
眠気を抑制します。
これがカフェインの覚醒作用と呼ばれるものです。
このカフェインのアデノシン受容体拮抗作用は、
通常飲むレベルのカフェインでも発現します。
脳以外へのカフェインの作用として、
心臓を動かしているペースメーカーの細胞の、
アデノシン受容体に結合することにより、
その細胞を興奮させ、心拍を増加させる作用があります。
また脳の興奮が交感神経を刺激して、
交感神経刺激による心臓の刺激も相俟って、
カフェインには強心作用があり、
血管を収縮させ血圧を一時的に上昇させるような働きも持っています。
腎尿細管のナトリウムと水の再吸収を抑制することにより、
尿量を増加させる作用があります。
これがカフェインの利尿作用と呼ばれるものです。
カフェインの代謝産物にテオフィリンがあり、
これは強い気管支の拡張作用を持っていて、
実際に気管支喘息の治療に使用されています。
胃腸の運動を刺激するような働きも持っています。
ガストリンという胃酸分泌ホルモンを刺激して、
胃酸分泌を促進する働きもあります。
ベンゾジアゼピンの作用に拮抗したり、
筋肉細胞の中にある筋小胞体からカルシウムを放出させ、
筋力を高めるような働きがありますが、
これらはいずれも高用量でのみ認められる効果で、
通常飲み物として摂取するレベルのカフェインでは、
殆ど認められないと考えられています。
フォスフォジエステラーゼという酵素を阻害することにより、
サイクリックAMPの働きを強めます。
結果として脂肪細胞の燃焼を促進しますが、
これも明確にそうした作用が認められるためには、
高用量のカフェインが必要となると考えられています。
カフェインは経口摂取された場合、
非常に迅速に吸収されることが分かっています。
口から摂取されたカフェインは、
20%が胃で、80%が小腸などの腸管から吸収され、
ほぼ100%が血液中に入ります。
血液濃度は摂取後1時間でピークに達し、
血中半減期は通常で4から5時間ですが、
代謝には個人差が大きく、
病的状態も含めると、
半減期は2から12時間と幅があります。
カフェインは主に肝臓において、
CYP1A2とCYP2C9という薬物代謝酵素によって分解され、
ほぼ全てが尿から排泄されます。
カフェインの人間の血圧への影響は複雑で、
急性の影響と慢性の影響とを、
分けて考える必要があります。
高血圧のある人が高用量のカフェインを摂取すると、
血圧の上昇を招くとする結果がありますが、
2011年のメタ解析の論文では、
コーヒーを殆ど飲まない人と比較して、
毎日1から3杯飲む人では高血圧のリスクが9%増加したものの、
3杯を超えて飲む人では、
むしろ高血圧のリスクは減少に転じたという結果になっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21450934/
概ねカフェインそのものの摂取や、
カフェインを多く含むエナジードリンクの摂取では、
特に高血圧を持つ人で、
血圧の上昇が見られやすい一方、
コーヒーやお茶などの使用では、
カフェイン量はほぼ同一でも、
血圧に対する悪影響は少ないか、
むしろ高血圧のリスク低下に繋がる、
という報告が多いのが特徴です。
糖尿病については、
以前にも何度かご紹介しているように、
コーヒーを適度に飲む習慣のある人は、
糖尿病のリスクが低下しているとする報告が、
多く認められています。
ただ、これがカフェインの作用によるものかどうかについては、
データにより結果は分かれています。
デカフェのコーヒーでも同様の結果が得られた、
という報告がある一方で、
カフェインの摂取量と糖尿病の予防効果には相関があり、
デカフェでは関連は低かった、
というような報告もあります。
カフェインは脂肪燃焼作用がありますが、
紙フィルターを使用しないコーヒーでは、
脂の成分であるカフェストールが多く含まれることにより、
LDLコレステロールが上昇することが知られています。
従って、健康のことを優先に考えれば、
コーヒーは紙フィルターを使用して飲むことが良いのです。
カフェインそのもののコレステロールに対する影響については、
あまりデータがなく検証出来ないのが実際です。
カフェインは、
主にそれを含むコーヒーのデータで見る限り、
心血管疾患や心不全に対しては、
特に影響を及ぼさないか、
そのリスクを低下させるか、
そのどちらかと考えられます。
カフェインを含むコーヒーは、
心房細動のリスクを上げるのではないか、
という危惧があり、そうした報告は存在していましたが、
2025年のJAMA誌に掲載された介入試験の論文では、
心房細動の患者さんの再発が、
カフェイン入りのコーヒーを飲んだ方が、
39%減少したという結果が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41206802/
コーヒーと脳卒中との関連については、
2021年のメタ解析の論文で、
1日3から4杯のコーヒーを飲む人は、
脳卒中のリスクが21%低下していた一方で、
それを超える量においては、
リスク低下は減弱する傾向を示していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33188952/
ただ、2022年に発表されたUKバイオバンクのデータを用いた解析では、
1日4から5杯以上のコーヒーで、
脳卒中リスクの低下が認められています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36162818/
この論文ではコーヒーを、
カフェイン入りのレギュラーコーヒー、デカフェのコーヒー、インスタントに、
分けて解析を行っていますが、
病気のリスクは概ねレギュラーコーヒーで最も低下していますが、
デカフェやインスタントでも、
それほど遜色のない結果になっています。
唯一不整脈の予防効果については、
カフェイン入りのコーヒーのみで認められていました。
こうしたデータを元にして今回米国心臓協会では、
カフェインを1日400㎎以内の範囲で摂取することは、
糖尿病など多くの心血管疾患のリスク因子を予防し、
虚血性心疾患や心不全のリスクも低下する可能性があり、
心房細動や脳卒中のリスクも低下させる可能性が高い、
とする提言をまとめています。
ただ、これは主にコーヒーを主体とするデータで、
そのうちのどの程度の部分がカフェインの作用であるのかについては、
現状は確定的な知見はないと考えておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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