便通異常と大腸がんリスク(2026年ドイツの疫学データ)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸がんの腹部症状は?.jpg
BMJ Open Gastroenterology誌に2026年7月6日付でウェブ掲載された、
便通異常と大腸がんとの関連についての論文です。

どんな時に大腸がんを疑うでしょうか?

下血はマストですし、
大腸がん検診として行われている便潜血検査で、
陽性反応が出た時も、
大腸がんを疑って、
大腸内視鏡検査が施行されます。

ただ、それ以外に下痢と便秘を繰り返すなどの便通異常も、
大腸がんを疑う症状として、
指摘されることがあります。

確かに食物繊維の摂取量が少ないことは、
大腸がんのリスクとなることが知られていて、
このことからは、
慢性の便秘症が大腸がんのリスクとなることが示唆されます。

ただ、2024年に発表されたメタ解析の論文では、
トータルには大腸がんリスクと慢性の便秘症との間に、
明確な関連は認められませんでした。
https://www.immunopathol.com/Article/ipp-40617

便通異常と大腸がんリスクとの関係は、
そこまで明確なものではないのです。

そこで今回の研究では、
ドイツのプライマリケアの医療情報を活用することで、
10941名の大腸がんと診断された患者さんを、
年齢などの因子をマッチングさせた
54705名の非がん患者群と比較して、
大腸がん診断前の期間における下痢や便秘の症状と、
がんのリスクとの関連を検証しています。

その結果、
大腸がんと診断される半年以内の期間に、
1回プライマリケアで便秘と診断された人は、
ない人と比較して、
その後大腸がんと診断されるリスクが、
3.23倍(95%CI:2.85から3.66)有意に増加していました。
その期間での診断回数が増えると、
その差は明瞭ではなくなり、
期間が半年を超えても、
その差は認められなくなっていました。

下痢と診断された人も、
ない人と比較して、
その後大腸がんと診断されるリスクが増加していましたが、
半年以内での診断回数が多いほど、
その後の大腸がんのリスクは増加していました。
診断回数が1回以上の場合、
そのリスクは3.37倍(95%CI:3.03から3.75)でしたが、
診断回数が3回以上では、
そのリスクは6.82倍(95%CI:4.43から10.49)と高くなっていました。
その関連は大腸がん診断より半年以上前では減弱し、
1年を超える前においては認められなくなっていました。

このように、
傾向の差はあるものの、
便秘や下痢の診断と、
その後の大腸がんの診断との間には、
一定の関連が認められました。
ただ、それは大腸がんの診断の、
半年以内に限った現象で、
このことは下痢や便秘は大腸がんの原因ではなく、
その初期症状であった可能性を、
示しているように思われます。

つまり、
比較的最近便通の状態が変化し、
それまでに認められなかったような、
下痢や便秘の症状が出現した場合には、
大腸がんの初期症状の可能性を考えて、
大腸の検査を施行した方が良いのではないか、
という点を示唆する結果です。

ただ、下痢や便秘は一般的な症状でもあるので、
そうした患者さんに、
全て大腸の精密検査を施行するというのは、
医療経済的観点からは、
あまり推奨される対応ではありません。

今後どのような下痢や便秘が、
より大腸がんの初期症状の可能性が高いのか、
他の検査との組み合わせなど、
より効率的に大腸がんを検出するスクリーニングの確立に向けて、
データが蓄積されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

この記事へのコメント