シベリア少女鉄道 vol.39 「降臨 -ワールドヒーロズユニバース-」

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
シベリア少女鉄道2026.jpg
大好きなシベリア少女鉄道の新作公演が、
池袋のあうるすぽっとで先日上演されました。

これだけは絶対観逃せないので平日に足を運びました。

シベリア少女鉄道は基本的に、
ネタバレ厳禁の世界なので、
ブログの感想も舞台が終わった後で書くようにしています。

以下少し内容のネタバレがありますので、
ご注意下さい。

シベリア少女鉄道を初めて観たのは、
2005年の「アパートの窓割ります」からなのですが、
これは正直全然ピンと来なくて、
次作の「笑顔の行方」も理解不能だったのですが、
2006年の「残酷な神が支配する」という作品に仰天して、
ああ、もっと早く観ておけば良かったと、
第七病棟の「ビニールの城」を見逃したことと、
ポツドールのセミドキュメント演劇を見逃したことと併せて、
生涯の個人的3大演劇大後悔と呼んでいます。

たとえば、状況劇場の「ベンガルの虎」を見たかったとか、
天井桟敷の「疫病流行記」を見たかった、
というのは、
観たくとも世代的に絶対無理だったので仕方がないのですが、
上記の3大後悔は、
見ようと思えば見ることは出来たのに、
見るという選択をしなかったという大後悔です。

その後「永遠かも知れない」を観て、
また大興奮をして、
僕の中でシベリア少女鉄道は絶対になりました。

その当時の作品と比較して、
最近のシベリア処女鉄道は、
土屋亮一さんも心に余裕が出来たからなのか、
作品に世界の終わりを目撃するような、
ある種切羽詰まった感じがなく、
とてもウェルメイドな感じになっています。
それと、ネタがかなり「演劇」に傾斜していて、
演劇を上演するという枠の中に留まることが多くなっている、
という点も少し物足りなく感じる点ではあります。

ただ、作品の技術的クオリティは、
昔と比べれば格段に上がっていて、
演技も美術も音響も、
しっかりとプロのレベルに仕上がっているのはさすがです。

昔はその発想や構成は奇蹟のように素晴らしくても、
演技は正直学芸会かおままごとレベルということが、
通常であったからです。
ただ、「永遠かも知れない」のように、
そこをまた逆的に取ったような傑作もありました。

さて、今回の作品は以前の「VR」という作品にちょっと近いのですね。
最初にテレビをザッピングするように、
幾つかの番組的世界がドラマとして展開され、
それから刑事ドラマと青春ものを掛け合わせたような、
ありがちな物語が始まるのですが、
それが途中から人物の出し入れが、
やや辻褄の合わないような感じになり、
外野からの声が響いて、
今まで見ていたものが、
対戦型のカードゲームの世界であったことが明らかになります。

その後はカードの出し入れによって、
生身のキャストが複数の役を演じないといけない事態となり、
そのドタバタを何とか収束しつつ、
物語の大団円を全員が目指す、
といういつもの展開になります。

以前の「VR」ではモニター上に、
そのゲームのプレイヤーの日常が投影されるのですね。
そのプレイヤーの日常世界と、
舞台上で進行するゲームの枠の中の物語の世界が、
同時進行するという流れになります。

物語が実は外部世界から操られて存在していた、
というのは、
演劇のみならず、映像メディアや活字メディアでも、
昔から定番の多層世界の趣向ですが、
シベリア少女鉄道の新しさは、
その多層世界を目撃している、
第三層とも言うべき観客の存在もそこに取り込んで、
崩壊しそうな世界を、
その3者で何とかもちこたえ、
世界を収拾に向かわせるというゲームを、
シニカルかつ必死に、
それでいて徹底して遊んでしまおう、
という、これまでより一歩進んだ展開を、
演劇という枠組みに与えた、
という点にあります。

今回の作品ではキャスト陣が精鋭揃いで、
精緻な仕掛けを熟練の手際で動かし、
拡散する物語を纏め上げた手腕に感心させられました。

ただ、ゲームを操っている世界が、
この作品では数回のナレーションでしか提示されず、
後はキャラの頑張りのみがクローズアップされる、
という後半の展開は、
最近のシベ少はほぼ全てそうなのですが、
少し物足りない感じを持ちました。

「残酷な神が支配する」の衝撃は、
巨大なアントニオ猪木の映像が現れて、
それが舞台全体をぶん回す、
という圧倒的な奇想的場面にこそあったので、
普段目にしてはいけない異常な存在が、
この世界を成立させている、
というような奇想を、
個人的には想像してしまったのでした。

また今回上演時間は2時間強で、
後半の1時間以上は、
ネタバレ後の混乱収束が延々と続くので、
やや単調で長過ぎる、
という感じは否めませんでした。

ただ、そうした点を割り引いても、
最近のシベ少の舞台の中では、
最もそのからくり仕掛けの凄みを、
堪能出来た作品であったことは確かで、
これからも必ず足を運びたいとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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