「シラート」

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
シラート.jpg
フランス出身のオリベル・ラシェ監督による、
2025年のフランス・スペイン合作映画で、
カンヌ国際映画祭で審査員賞などを獲得した話題作です。

モロッコの砂漠地帯を舞台にして、
失踪した娘を探す、
父親と息子の少年2人の奇妙な旅路を描いた、
一種のロードムービーですが、
淡々とした前半から、
後半は衝撃的な場面が連続する、
一種独特の不思議な映画で、
カンヌで賞を獲る映画は概ねそうしたものが多いのですが、
通常の常識や倫理観から、
少し離れたところに成立している怪作です。

以下基本的にネタバレはしませんが、
どうしても内容を推測させる記載はありますので、
鑑賞予定の方は、
是非是非鑑賞後にお読みください。

この映画は、
予備知識なく観た方が絶対に面白く、
衝撃的なので、
別にミステリーではなく、
どんでん返しという訳でもないのですが、
まっさらな状態で鑑賞されるのが吉です。

よろしいでしょうか?

それでは先に進みます。

作品はまず巨大なPAセットを、
砂漠に積み上げる場面から始まり、
それが何やら神殿のように見える、
という辺りから既に異常な雰囲気が醸成されます。

音効の効果が作品の肝になっていて、
PAからの重低音が鳴り響くところから、
物語が始まるのがユニークです。

レイブパーティーの模様が、
まずドキュメンタリー的に描かれ、
そこで失踪した娘がレイブパーティーに参加している、
という情報を得た父親が、
息子と共にパーティーの参加者に声を掛けるのですが、
情報は得られず、
途中でモロッコの軍隊がパーティー会場に現われ、
パーティーは解散となります。

そこで軍隊の命令に従わず、
別のパーティー会場に向かう参加者のグループがいるので、
姉を探す弟の少年は、
向こう見ずにもそれを追うように父親に頼み、
パーティー参加者の改造車2台に、
家族のボロボロのバンという奇妙な車列が、
荒地の中を、
「マッドマックス怒りのデスロード」を彷彿とさせる雰囲気で、
疾走するところでタイトルが表示されます。

一種のロードムービーという雰囲気ですが、
ただ、パーティー会場を目指す旅の筈なのに、
増水した川を渡ったり、
転落の危険が高い崖上の山道を走ったりと、
その道程は死と隣り合わせのような困難を極めます。

ものものしく現れる軍隊の車列は、
その場所が戦時下のような危機的な状態であることを示唆し、
最初は気がつかないのですが、
パーティーの参加者は、
手や足などに大きな障害を負っています。

つまり、描写はリアルであるものの、
物語は次第に幻想的な雰囲気を孕み、
現代の人間を取り囲む危機的な状況を、
どうやら象徴的に表しているらしい、
ということが分かって来ます。

そこでほぼほぼ全ての観客が予想しないタイミングで、
唖然とするような悲劇が起こり、
更にその悲劇を軸に物語が展開されるのだと、
多くの観客が理解したタイミングで、
今度は全く別の次元から、
衝撃的なカタストロフが主人公達を襲うのです。

そのカタストロフが、
映画の最初から流れ続ける轟音と、
密接な関わりがあるという点が、
なかなかクレヴァーで、
その瞬間の衝撃は、
ちょっとこれまでの映画体験では、
味わったことがないものだと思います。

最後に主人公の父親が危機から逃れる時、
何も考えず無心になったら大丈夫だった、
というようなことを唐突に言うので、
鑑賞後それがどのような意味であるのか、
ちょっとモヤモヤしてしまったのですが、
後情報として、
監督はイスラム神秘主義の影響を受けている、
というようなお話をされていて、
なるほど、ラストのシークエンスはその思想を体現したもので、
至って真面目な場面であったのね、
と得心することが出来ました。

結局失踪した娘の話は、
最初に登場するだけで、
何ら物語と関連はしないので、
ある種破格の構成なのですが、
そうしたところを含めて、
通常のドラマ構成とは外れたところに成立している怪作で、
素直に面白いとも、
理解したとも言い切れないのですが、
後半の衝撃は一見の価値はあり、
音響の良い映画館でないと、
その真価は感じられない映画であることは間違いがないので、
ご興味のある方は、
映画館に是非足をお運び下さい。

非常に変な映画です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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