「黒牢城」(黒沢清監督映画版)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
黒牢城.jpg
米澤穂信さんの戦国時代を舞台としたミステリー小説を、
黒沢清監督が映画化して、
本木雅弘さん、菅田将暉さんら、
豪華なキャストを揃えた映画が今ロードショー公開されています。

黒沢清監督は大好きで、
原作も読んでいたので、
これはもう見逃す訳にはいかない、
ということで映画館に足を運びました。

これ、原作は安楽椅子探偵ものの、
連作短編集という体裁をとっているんですね。
荒木村重が織田信長を裏切って、
堅牢な有岡城に籠城し、
そこで雪の密室殺人など、
村重を悩ませるような奇怪な事件が起こり、
困った村重は、
地下牢にレクター博士よろしく閉じ込められている、
黒田官兵衛に知恵を求めるのです。
安楽椅子探偵に黒田官兵衛、
相談するのが荒木村重というアイデアが秀逸です。
それだけではなく、
トータルには歴史上の謎を解き明かすという、
「歴史ミステリ」という側面も持っているのですね。
戦国時代を舞台にして、
ミステリーのジャンルである、
歴史ミステリと安楽椅子探偵を、
結び付けた点も凄いと思います。

ただ、1つ1つの事件は割と小粒なもので、
明かされる真相も、
それほど意外という感じではありません。
最終的には何故村重は1人で城から逃げたのか、
という歴史上の謎に収斂するのですが、
その真相も、
フーン、そうなのね、という感じで、
ちょっとモヤモヤする部分があるのです。

正直これをそのまま映画化するのは、
相当難しそうだなあ、
という感じは原作を読んだ時点でありました。

黒沢監督自身による脚本は、
ほぼほぼ忠実に原作を台詞化していて、
これまでの監督の原作ものの多くは、
オリジナルが分からないほど改変されたものが多かったので、
ある意味新鮮でした。

ただ、改めて忠実に再現された物語を観ると、
映像にするには弱いなあ、
という感じは否めませんでした。

戦国の籠城戦で戦争なのですから、
矢張り後半にはもっとスケールの大きな感じや、
アクションが欲しいですよね。

そこは少し物足りなくはありました。

映像は後半の持仏堂や地下牢の場面などで、
得意の長回しもあるのですが、
全体としては黒澤時代劇的な構図や切り返しを、
かなり意識した絵作りで、
オープニングで村重と官兵衛が向かい合うショットなど、
「影武者」を観ているような感じもありました。
カメラの高低の動きで構図がビシッと決まるところなど、
「赤ひげ」や「天国と地獄」のテイストもありました。

黒澤時代劇の絵作りをトリビュートする、
というのが、
今回の黒沢監督の1つの狙いであったように思います。

ミステリー映画としてのポイントは、
通常見せ場である筈の、
解決編の部分の回想シーンを、
一切入れないという構成で、
これは黒沢監督は以前から、
「回想シーンをやると映画は一気に嘘くさくなる」
という趣旨のことを言われていたので、
観る前からほぼそうするのだろうなあ、
と思っていたのですが、
実際に映画を観てみると、
ちょっと苦しいなあ、という感じはありました。

市川崑監督の「犬神家の一族」で、
最も魅力的なのは、
解決編の回想シーンでしたよね。
それまで秘められていた事実が、
極彩色の血みどろの画面で明らかにされる、
という趣向が結構ワクワクさせられるんですね。

時間の流れを切らない方が良い、
という気持ちは分かるのですが、
人物が会話しているだけの解決編というのは、
そこは監督のポリシーなので仕方がないのですが、
かなり欲求不満を感じるものではありました。

そんな訳で成功かと言われると、
そうは言えない映画ではあったのですが、
本格的な時代劇としての絵作りは、
最近あまりないワクワクさせるもので、
今回を足掛かりにして、
また新たな黒沢印の時代劇が、
作られることを期待したいと思います。

黒沢監督のファンであれば、
失望はしないと思います。
それ以外の方、
特に本格的な時代劇映画を期待して、
映画館に足を運ばれると、
ちょっと肩透かしを感じるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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