「兄を持ち運べるサイズに」

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はお正月でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
兄を持ち運べるサイズに.jpg
家族劇に独自の冴えを見せる中野量太監督が、
村井理子さんのエッセイを元にして、
得意の家族劇映画の新作を作りました。

中野監督は何と言っても、
「湯を沸かすほどの熱い愛」が抜群に素晴らしく、
難病もので風呂屋ものという、
非常にベタな設定でありながら、
命が短いことを告げられた1人の女性が、
自分の人生でやり残したことを、
1つずつ解決する姿を真摯に描いて素晴らしく、
それでいて、自主製作映画的なアングラ風味も、
スパイス的に散りばめられた傑作でした。

また、「浅田家!」も家族写真という設定で、
豪華なキャストを巧みに構成した力作で、
家族というテーマが、
後半震災に結び付く辺りも感動的でした。

ただ、この2作が監督のオリジナル脚本で成功した一方で、
「長いお別れ」は中島京子さんの原作を、
比較的忠実に映画化した趣向が、
正直あまり成功しておらず、
監督らしさがあまり感じられない作品でした。

今回は5年ぶりの中野作品でとても楽しみであった一方で、
エッセイの原作の映画化という趣向に、
少し不安も感じる鑑賞となりました。

鑑賞後の感想としては、
個人的には鑑賞前の危惧が当たったという感じで、
主人公の名前も原作者と同じという時点で、
改変の余地が少ない素材で、
平凡でこじんまりとした作品になってしまったな、
という印象でした。

主人公はエッセイストとして成功している女性で、
自由人で複雑な感情を持っていた兄が、
急死したという連絡を受け、
その後始末をすることで、
自分の家族と改めて向き合う、
というお話なんですね。

要するに形は少し違っていますが、
「湯を沸かすほどの熱い愛」の変奏曲という感じのお話で、
それなら過去作を超えないと意味がないと思うのですが、
とてもそうなっているとは思えません。

もともと中野監督の作品の魅力は、
お話の自由度の大きさと、
それを破格なく成立させるための、
過去の映画を研究し尽くした、
絶妙な構図などの映像的な技巧にあると思うのですね。

今回の作品は原作もので、
それもエッセイでリアルな話で、
主人公はそれなりに成功していて、
生活にも余裕のある人なので、
お話の自由度が殆どないという感じになっています。

確かにテーマは中野監督の過去作と、
かなり一致する部分があるのですが、
せっかくの中野作品の魅力が死んでしまいます。

更に中野作品の映画的魅力は、
シネスコ画面を縦横につかった構図にあると思うのですが、
今回の作品はビスタサイズで、
構図の魅力も殆ど感じられません。

これではとても駄目だと個人的には思いましたが、
キャストは魅力的ですし、
過去作と比較してしまうので、
中野監督のファンとしては点が辛くなるのですが、
お話もシンプルで良いお話になっているので、
こうした家族劇の娯楽作としては、
そう悪くはないのかなと、
鑑賞して少し日が経った今では、
少し思い直しているところです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良いお正月をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

この記事へのコメント