GLP-1アナログと慢性の咳症状との関係

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
GLP-1アナログと慢性咳嗽.jpg
JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery誌に、
2025年11月26日付でウェブ掲載された、
糖尿病や肥満症の治療薬の、
あまり知られていない副作用についての論文です。

GLPは消化管ホルモンの一種で、
膵臓のインスリン分泌細胞の受容体に結合し、
ブドウ糖によるインスリン分泌を促進させることで、
血糖を低下させ、
グルカゴン分泌を抑制する働きがあります。

GLP-1受容体作動薬というのは、
このGLPの受容体に結合して、
その働きを促進するタイプの注射薬(一部内服もあり)で、
それ以前のインスリン分泌を刺激する薬剤と比較して、
低血糖を来しにくいという特徴や、
体重を減少させる効果を持っています。
そのため、現在では糖尿病のみならず、
肥満症の治療にも使用され、
心不全や腎機能低下などの予防効果についても、
研究が進められています。

このようにここまでは良いこと尽くめのGLP1受容体作動薬ですが、
主に消化器系の有害事象のリスクがあることも知られています。
それは、胆道系疾患、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺、
などの発症増加です。

GLP1受容体作動薬には、
胃腸の動きを低下させるような働きがあり、
それが主に胃腸関連の副作用に繋がっています。

食道や胃の機能低下は、
胃酸の逆流も誘発し易くなり、
喉頭への胃酸の刺激により、
慢性の咳が生じやすくなるのではないかと推測されます。

慢性の咳はしばしば認められる症状ですが、
こうした症状とGLP1受容体作動薬の使用との関連については、
これまであまり明確な知見がありませんでした。

今回の研究では、
アメリカの医療保険のデータを解析することで、
この問題の検証を行っています。

18歳以上の2型糖尿病の患者さんで、
GLP1受容体作動薬を使用している427555名を、
他のタイプの糖尿病治療薬を使用している、
1614495名と比較したところ、
GLP1受容体拮抗薬の使用は、
8週間以上持続する慢性の咳症状を、
他の関連する因子を補正した結果として、
12%(95%CI:1.08から1.16)有意に増加させていました。

ここでサブ解析として、
胃食道逆流症との診断を事前に受けていた患者さんを除外して解析すると、
そのリスクはより高く、
29%(95%CI:1.17から1.42)の増加となっていました。

このように、
今回の検証では、
医療保険データの二次活用で、
実際の患者さんの個別データではないという点に注意は必要ですが、
GLP1受容体作動薬の使用が、
その後の慢性の咳症状と、
一定の関連のある可能性が示されました。
従来GLP1受容体作動薬を使用していた患者さんの咳症状は、
胃酸の逆流によると想定されていましたが、
そうした患者さんを除外してもリスクが認められる、
という今回の結果は興味深く、
今後そのメカニズムの解明に期待としたいと思いますし、
薬剤使用時の咳症状の持続には、
より注意を払う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
コメントでご指摘を受けまして、
一部記載を修正しました。
(2025年8時18分修正)

この記事へのコメント

内科医
2025年12月22日 14:16
いつも勉強になる投稿ありがとうございます
「After removing patients with a previous diagnosis of gastroesophageal reflux disease from analysis」なので、もともと逆食のない患者が29%のリスクなのではないでしょうか。
つまり、全体解析では逆食の慢性咳嗽で非GLP-1群にも咳嗽患者がまぎれていたためaHR 1.12と低めにでてしまったということではないでしょうか。
fujiki
2025年12月24日 08:20
内科医様
ご指摘ありがとうございます。
確かにその通りですね。
本文修正しました。
これからもよろしくお願いします。