アストロサイトによる認知症治療の可能性

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アストロサイトによる認知症予防.jpg
Nature Neuroscience誌に、
2025年11月21日付でウェブ掲載された、
認知症の新しい治療の可能性についての論文です。

アルツハイマー型認知症の治療には新薬も導入され、
一定の進歩が得られていますが、
その有効性は病状の初期段階に限られ、
脳の出血性の合併症などのリスクも存在しています。

ある程度症状の進行した認知症に対しても有効性があり、
より安全な治療法はないのでしょうか?

これまでのアルツハイマー型認知症の治療は、
主に脳の神経細胞に照準を合わせたものでした。

ただ、脳の細胞には神経細胞以外に、
グリア細胞という一群の細胞が、
実は脳神経細胞より数の上ではずっと多く存在しています。

そうした細胞は脳の神経細胞の周辺環境を適正に維持し、
神経細胞を障害から守るような働きを持っています。

アルツハイマー型認知症で脳神経細胞に蓄積する、
βアミロイドの異常タンパクは、
通常の状態でも産生はされ、
それが速やかに除去され排泄されています。
この有害細胞を取り込んで、
除去する掃除機のような働きをしているのが、
グリア細胞の1つであるアストロサイト(星状膠細胞)です。

実はアルツハイマー型認知症においては、
このアストロサイトの働きが低下して、
それがβアミロイドの沈着の一因となっているのです。

それでは、このアストロサイトの機能を亢進させることによって、
脳から有害物質を取り除き、
認知症を治療することが出来るのではないでしょうか?

今回の研究はその仮説を実証するために、
症状が出現しているアルツハイマー病のモデル動物(マウス)を用いて、
アストロサイトの貪食受容体の機能に関わる遺伝子である、
Sox9を働かなくした場合と、
過剰に発現された場合とを比較して、
その有効性を検証しています。

その結果、
Sox9を過剰発現させたマウスでは、
脳に沈着したβアミロイドが除去され、
脳の認知機能が保持されることが確認されました。

つまり、アストロサイトの特定の遺伝子を増加させることにより、
βアミロイドを貪食して分解する働きが促進され、
それが結果として認知機能の保持に結び付いたことが示唆されたのです。

今回の研究が画期的なのは、
従来とは全くアプローチの違う治療法であると共に、
既に症状が進行してる状態であっても、
脳の状態を改善させる効果が確認されたことにあります。

これはまだ動物実験の段階であり、
実際に治療法として使用されるまでには、
まだまだ研究の積み重ねが必要ですが、
これまでにない画期的な治療であることは間違いがなく、
今後の進捗に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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