脳梗塞後のコレステロール値と再発リスク

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳卒中後のコレステロール低下療法.jpg
Circulation誌に2025年11月3日付で掲載された、
脳梗塞後のコレステロールの目標値についての論文です。

コレステロール、特に悪玉コレステロールと呼ばれることのある、
LDLコレステロールが増加すると、
動脈硬化進行のリスクになり、
心筋梗塞や脳卒中などのリスク増加になることが分かっています。

そのため特に心筋梗塞などの虚血性心疾患では、
その発症後に強力にLDLコレステロールを低下させることにより、
再発が予防されることが実証されています。

脳卒中の一種である虚血性脳梗塞も、
動脈硬化に伴って生じる脳の病気です。

そのため、虚血性脳梗塞の受傷後にも、
コレステロールを低下させることで、
その再発が予防されることが期待されています。

ただ、1つ問題があります。

最も広く使用されているコレステロール降下剤であるスタチンで、
虚血性脳梗塞後の患者さんのLDLコレステロールを強力に低下させると、
出血性脳卒中のリスクが、
増加するという報告があるのです。

これは心臓病では見られない知見です。

脳卒中には大きく分けて出血と梗塞とがあり、
虚血性脳梗塞は脳を栄養する血管が詰まって、
その先に血液が行かなくなり、脳が壊死してしまうという病気です。
これは脳を栄養する結果が破れて、
周囲に出血する脳内出血とは別の病気ですが、
実際には脳の虚血に伴って、
障害された血管から出血することがしばしばあり、
これを出血性脳梗塞と呼んでいます。

スタチンを使用して強力にコレステロールを低下させると、
虚血性脳梗塞は予防されても、
出血性脳梗塞が増える、
という現象が報告されているのです

近年スタチン以外に、
強力にコレステロールを低下させる薬剤として、
抗PCSK9モノクローナル抗体、
と呼ばれる注射薬が使用され、
その有効性が確認されています。

2021年のStroke誌に発表されたメタ解析の論文によると、
スタチンでは見られた出血性脳卒中の増加が、
抗PCSK9モノクローナル抗体では認められない、
という知見が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34154390/

そこで今回の研究では、
虚血性脳梗塞の既往のある患者さんに、
抗PCSK9モノクローナル抗体であるエボロクマブを使用して、
コレステロールを低下させた臨床試験のデータを活用して、
従来の基準より強力にコレステロール値を低下させることの、
有効性と安全性とを検証しています。

対象は虚血性脳卒中に罹患した5291例の患者で、
エボロクマブを使用することにより、
血液中のLDLコレステロールは強力に低下し、
12.6%では20mg/dL未満となっていました。

このLDLコレステロールが低いほど、
その後の脳卒中などの再発リスクは低下していて、
LDLが70g/dL以上と比較した時の、
40mg/dL未満の群は、
心筋梗塞や脳卒中、心血管疾患による死亡などを併せたリスクを、
31%(95%CI:0.57から0.84)、
脳卒中の再発リスクを27%(95%CI:0.53から0.99)、
それぞれ有意に低下させており、
虚血性脳梗塞の再発リスクも有意ではないものの低下傾向を示しました。
また出血性脳卒中のリスクの有意な増加は認められませんでした。

このように、
抗PCSK9モノクローナル抗体を用いたコレステロール降下療法は、
スタチンのようなリスクなく、
脳卒中などの再発を予防する効果があり、
従来より強力にコレステロールを低下させることの意義がある、
と言う結果が今回の検証では得られました。

ただ、新薬は非常に高価で、
スタチンはこれまでのデータの蓄積により、
その有効性も安全性も、
検証され尽くした薬でもあるので、
今後その使い分けは、
より診療の実地に即して、
検証される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

この記事へのコメント