新型コロナウイルス感染症罹患後の動脈硬化の進行について

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19罹患後の動脈の老化.jpg
European Heart Journalに2025年8月17日付で掲載された、
新型コロナ感染後の動脈硬化のリスクについての論文です。

新型コロナ感染症が変異を繰り返し、
今また国内でも流行の兆しがあります。

当初のパンデミックの頃と比較すると、
症状はかなり軽くなり、
重症で入院が必要となる方は減りました。

療養期間の定めがあるなど、
幾つかの違いはありますが、
それ以外の点では普通の風邪と、
ほぼ同じ対応でも問題ないとも感じられるのですが、
その一方でまだ注意すべき点も残っています。

その1つが感染後の後遺症とでも言うべき、
罹患後の身体の変化です。

新型コロナウイルス感染症の罹患時には、
その急性症状が回復した後に、
数か月から経過によっては数年に渡り持続する、
倦怠感や息苦しさ、眩暈や精神症状など、
幅広い症状が見られることが知られています。

この現象には多くの呼び方がありますが、
厚労省は「新型コロナウイルス感染症罹患後症状(いわゆる後遺症)」
という言い方を採用しています。

これはWHOが提唱している、
Post-COVID-19 Conditionを翻訳したものと思います。

これとは別個に、
特に重症の新型コロナウイルス感染症の罹患後には、
その後数か月から1年に渡り、
心臓病や脳卒中などの、
心血管疾患のリスクが高まることが知られています。

その原因としては、
新型コロナウイルスによる血管の炎症が持続するため、
など幾つかの説明がありますが、
まだ仮説の域を出ていません。

今回の研究は新型コロナの感染により、
動脈硬化が進行しているのではないかという推測の元に、
PWV(脈波伝播速度)という簡便な検査を指標として、
新型コロナ感染と動脈硬化との関連を検証しています。

PWVという指標は、
日本でも血管年齢の検査などとして活用されています。

実はまだその機器が商品化される前の時期に、
僕は大学病院でPWVのデータを集めて研究をしていたので、
この検査については結構詳しいのです。

この検査は身体の距離のある場所2点の脈波を記録し、
そこから動脈を流れる血液の速度を測定。
動脈の血管の壁が硬くなると、
それだけ血流速度が速くなるという理屈から、
血管の硬さを割り出すという手法を取っています。

それを分かり易く示しているのが、
所謂「血管年齢」です。

この検査は簡単に動脈硬化を数値化出来る、
という点では画期的なのですが、
血管の硬さそのものを測定している訳ではないので、
その数値の解釈には注意が必要です。

今回の研究は世界16か国の32の専門施設において、
新型コロナの遺伝子検査が陰性を確認しているコントロール群と、
新型コロナに数か月以内に感染したが入院はしていない患者群、
新型コロナに感染して一般病棟に入院した患者群、
新型コロナに感染して集中治療室に入院した重症患者群の、
4群に分けてPWVを複数回測定。
その比較を行っているものです。
トータルは対象者数は2390名です。

検証の結果、新型コロナ感染患者全体では、
非感染のコントロール群と比較して、
PWV値は有意に高くなっていました。

これを男女に分けて比較すると、
意外なことに女性のみで、
感染によるPWVの有意な増加が認められました。

この感染によるPWVの増加は、
5歳程度の血管年齢の上昇に相当するもので、
その重症度による差は有意なものは認められせんでした。
その一方で感染後に後遺症のような症状が継続していた場合には、
PWVは有意に高値を示していました。
ワクチン接種をしている女性では、
感染によるPWVの上昇は有意に抑制されていました。
また、1年後にPWVを再検査すると、
感染事例の多くではPWVの数値は低下傾向を示していました。

このように今回の結果では、
新型コロナウイルスの感染後に、
女性のみで動脈硬化の進行が認められ、
この現象は疾患の重症度よりも、
新型コロナの後遺症と関連が深く、
概ね1年で軽減することが確認されました。
ワクチン接種には、
この動脈硬化の進行を、
一定レベル抑制する効果が示唆されました。

今後新型コロナ感染による血管の変化に、
本当に性差があるのかを含めて、
より詳細な検証が必要と考えられます。

当面は新型コロナの感染時には、
その後1年は動脈硬化に伴う病気のリスクが、
一定レベル上昇することを想定して、
症状に注意をすることが肝要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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