胃炎や潰瘍のピロリ菌除菌治療後の胃癌リスク(2025年日本の疫学データ)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ピロリ菌除菌後の胃がんリスク.jpg
BMC Gastroenterology誌に2025年7月1日付で掲載された、
ピロリ菌除菌後の胃癌リスクについての論文です。

ヘリコバクター・ピロリ菌は胃粘膜に生育している細菌で、
その持続的な感染は、
胃の粘膜が薄くなる、
萎縮性胃炎というタイプの慢性胃炎や、
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
また一部の血液疾患の原因となることが知られています。
萎縮性胃炎は腺癌というタイプの胃癌のリスクになることが分かっているので、
ピロリ菌の感染は胃癌のリスクとなることも実証されているのです。

ピロリ菌の感染が確認され、
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎などの所見がある場合、
そうした病気の予防と、
胃癌の予防のため、
ピロリ菌の除菌治療が推奨されます。

除菌治療が成功すると、
多くの場合胃粘膜の状態は改善し、
潰瘍のリスクも低下します。

ただ、除菌の時点である程度粘膜の萎縮が進行していると、
除菌をしても萎縮胃炎の状態は完全には元に戻らないので、
除菌後も一定の胃癌リスクは残存すると考えられます。

実際の臨床において、
そのリスクはどの程度のものなのでしょうか?

今回の研究は日本において、
JMDCデータベースという、
1700万人を超える、
健康保険組合の医療機関からの請求データなどを、
匿名化して集積しているデータベースを活用することで、
除菌後の胃癌リスクの検証を行っているものです。

これは件数は膨大で、
ほぼほぼ日本の医療の全体を網羅している、
という点は大きな意義があるのですが、
医療機関から健保組合に提出された、
請求データ(レセプト)を元にしているので、
その病状などを直接患者さんに確認しているものではない、
という点には注意が必要です。

ピロリ菌の健康保険における除菌治療は、
主にピロリ菌関連胃炎と胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対して行われていますが、
十二指腸潰瘍で除菌をした患者さんと比較して、
ピロリ菌関連胃炎で除菌をした患者さんでは2.03倍(95%CI:1.31から3.13)、
胃潰瘍で除菌をした患者さんでは2.37倍(95%CI:1.52から3.71)、
その後の胃癌のリスクがそれぞれ有意に増加していました。

中央値で3.8年の観察期間において、
除菌後の累積の胃癌リスクは、
ピロリ菌関連胃炎の患者さんで0.44%(95%CI:0.39から0.48)、
胃潰瘍の患者さんで0.54%(95%CI:0.46から0.63)、
十二指腸潰瘍の患者さんで0.22%(95%CI:0.10から0.33)、
と算出されました。

つまり、
十二指腸潰瘍の場合と比較して、
胃粘膜のピロリ菌による変化がより強いと想定される、
胃潰瘍やピロリ菌関連胃炎(特に萎縮性胃炎)の患者さんでは、
除菌後の胃癌のリスクがより高くなっていて、
定期的な胃カメラなどによる、
胃癌のスクリーニングが重要であると考えられます。

ピロリ菌の除菌は、
胃癌予防に有効な方法ですが、
特に胃の粘膜に萎縮性変化がある場合には、
除菌後も一定の胃癌リスクは残るので、
定期的な検査を続けることが必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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