家庭での調理と肺癌リスク(2025年システマティックレビュー)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
家庭の調理と肺がん.png
BMJ Open誌に2025年6月20付で掲載された、
家庭での調理の油の吸引と肺癌リスクとの関係についての論文です。

喫煙が肺癌の最も大きなリスクであることは、
これまでの多くの疫学データによって、
実証されている事実です。

ただ、全くタバコを吸わない人でも、
肺癌になることはあります。

上記文献の記載によれば、
世界的に10から25%の肺癌は、
非喫煙者に発症しています。

この非喫煙者の肺癌は、
組織の種類としては肺腺癌というタイプが多く、
比較的若い女性に多い、
という特徴があります。

この非喫煙者に発症する、
肺癌の原因は何でしょうか?

環境要因として注目されているものの1つが、
家庭での食事の調理の油から発生する、
油煙を吸入することの影響です。

確かに中華料理屋さんや焼き鳥屋さんのお店では、
換気フードやダクトに黒っぽい油が、
大量にこびりついていることが多く、
それは当然調理によって空気中に巻き上げられた、
油などを含む微粒子が、
沈着したものであることは明らかです。

こうした調理由来の微粒子が肺に吸入され、
それが肺癌の原因となることはないのでしょうか?

これまでに主に低所得から中所得の国や地域において、
そうした環境要因と肺癌との関連が検証され、
一定の癌リスクが存在することが報告されています。

しかし、衛生環境がより整備されていると想定される高所得国においても、
そうした家庭内での調理のリスクが存在するのかについては、
あまり明確なことが分かっていませんでした。

今回の研究は高所得地域における、
家庭での調理に由来する煙の吸入と、
肺癌の発症についての、
これまでの主だった研究データを解析したものです。

今回の解析では3つの疫学研究のデータが取り上げられていますが、
そのうちの2つは台湾のもので、
残りの1つは香港の研究でした。

いずれの研究においても、
家庭で調理をしている女性は、
その調理時間などが長いほど、
肺癌のリスクが増加していました。

香港の研究においては、
調理にあまり携わっていない場合と比較して、
調理時間が最も多い群では、
その後の肺癌リスクが、
6.15倍(95%CI:2.16から17.55)有意に増加していました。
その殆どは肺腺癌の増加によるものでした。
台湾の2つの研究においても、
同種の結果が得られていました。

換気フードなどの使用は、
そのリスクをかなり低減していることも確認されました。

このように、
食事の調理における油煙を吸い込むことは、
肺癌のリスクになる行為であって、
その吸引量を極力減らすような対策が、
健康のためには講じられる必要がありそうです。

ただ、現状こうしたデータは高所得地域においては、
台湾と香港の中華料理の調理によるものしかなく、
他の地域においても、
こうしたデータが蓄積され、
どのような調理においてリスクが高いのかなど、
より詳細な解析がなされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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