喘息患者の気道可逆性の季節変動

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
喘息の気道反応性の季節変動.jpg
Thorax 誌に2025年3月11日付でウェブ掲載された、
喘息の診断のための検査値が、
季節や時間によって変動することを示した論文です。

気管支喘息は、
アレルギー性の炎症によって、
気道が閉塞し易い状態となって、
特有の「喘鳴」を伴う発作を起こす病気です。

その診断は特徴的な症状と共に、
幾つかの検査を組み合わせて判断されます。

典型的な喘息は、
その発作が即効性の気管支拡張剤の吸入によって、
速やかに改善することがその一番の特徴です。

これを「気道可逆性検査」と呼んでいます。

まず通常の未治療の状態で呼吸機能の検査を行って、
喘息に特徴的な呼吸機能の異常を確認します。
通常1秒量もしくは一秒率という数値が、
低下していることがその特徴です。

ここで即効型の気管支拡張剤を吸入し、
その後にもう一度呼吸機能の検査を行います。

そこで一定の1秒量や1秒率の改善が見られた場合に、
気管支喘息の可能性が高いと判断されるのです。

現行の2022年に改訂された世界的な喘息のガイドラインでは、
吸入後に10%を超える改善が見られた場合に、
気道可逆性検査が陽性と決められています。
(2024年の日本のガイドラインでは、
まだその新基準は採用されていません)

ただ、この気道の反応は、
多くの外的要因によって変化する可能性があります。

喘息は起こり易い季節や時間帯があることが知られています。
深夜から早朝に掛けて重症の発作が多かったり、
季節の変わり目に悪化し易いなどは、
その特徴とされています。

それでは、気道可逆性検査も、
こうした変動の影響を受けるのでしょうか?

そうした点については、
これまであまり実証的な研究がされていませんでした。

そこで今回の研究では、イギリスの単独施設において、
18歳以上で気道可逆性検査を施行された、
喘息や喘息の疑われる患者1620名のデータを解析することで、
時間や季節と検査結果との関連を検証しています。

その結果、
気道可逆性検査の陽性率は、
季節では冬に高く、秋には低下していました。
また1日のうちでは、
午前中に高く、午後には低下していました。

気温の低い冬や朝の時間帯は、
気道はより過敏になっていて、
喘息発作も起こり易く、
気管支拡張剤による反応も、
明確に得られやすいことが確認されたのです。

従って、喘息の疑われる患者さんで気道可逆性検査を行う場合には、
なるべく午前中の早い時間帯で行うことが、
検査の精度を上げる上で重要であると考えられました。

こうした生理学的検査の判断は、
施行されたタイミングも加味して、
慎重に行う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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