イキウメ「ずれる」
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。

イキウメの新作公演が、
今三軒茶屋のシアタートラムで上演されています。
イキウメの前川知大さんの作品は、
最初に観た「関数ドミノ」の初演に衝撃を受けて、
その後はかなりマメに劇場に足を運びました。
そのシュールで、
常識的な価値観や倫理観を、
飛び越えたようなセンスが素晴らしく、
ちょっと危険なものを観ているような気にも、
させられるところがありました。
ただ、最近の作品はちょっと傾向が変わって来ていて、
あまりそうした異常な論理の飛躍、
というような雰囲気はなく、
正直好みではありませんでした。
また、「関数ドミノ」を含めて、
過去作の再演が一時期多くなったのですが、
再演を繰り返す度に、
どんどん作品が劣化してゆくような印象があり、
演出も「劇中劇」みたいなタイプのものが増えて、
「ああ、こんな風にしたら台無しなのに」
と思うことが多くなりました。
自分で演出もするタイプの劇作家には2通りあって、
再演によって作品がよりブラッシュアップされ、
毎回新鮮な驚きがあるタイプの人と、
再演すると却って、
作品の良い部分を変えてしまって、
作品が劣化してしまうタイプの人がいると思うのですが、
前川さんは後者のように個人的には思います。
ただ、前者のタイプの人が良いという訳では、
必ずしもなくて、
前者のタイプの人は、
初演はまだ未完成で今一つ、
ということが多いのです。
今回の作品で一旦、
イキウメの定期公演はお休みとアナウンスされていて、
それで今回は是非行かなければと思って、
劇場に足を運んだのですが、
今回の作品はイキウメの現時点までの集大成と言って、
過言ではない素晴らしい作品で、
イキウメのこれまでの歴史が凝縮されている、
という感がありましたし、
新たなステップを垣間見せてくれる、
という感じさえある傑作でした。
戯曲の完成度が素晴らしいだけではなくて、
演出、音効、照明などの技術的完成度も高く、
何より、イキウメという劇団の歴史そのものでもある、
5人の役者さんのお芝居が素晴らしく、
安田順平さんや浜田信也さんの多方面での活躍も、
イキウメで培われ成長したものであることは間違いがないのですから、
その円熟したお芝居を観ているだけでも、
イキウメがこれまで積み重ねた演劇的遺産が、
今ここに花開いているという感じがあって、
胸が熱くなります。
内容は細かく説明するのは野暮になるので、
あらすじなどはお示ししませんが、
ウェルズの「モロー博士の島」のような感じ。
人間と動物との境界が不安定になるような、
不穏な空気が漂う中、
ある兄弟の屈折した関係が徐々に家庭の崩壊へと向かい、
それがもっと大きな何かの崩壊に繋がることが示唆されて終わります。
イキウメ初期の歪んだ論理と、
そこからの超常現象の解明という、
初期イキウメの僕の大好きな感じもあり、
最近の社会観察的な視野の広がりもあって、
最初の水槽の中の2匹の魚が、
ちゃんと後半に繋がる構成も鮮やかです。
気が早いのですが、
もう今年のベストプレイに認定してもいいかな、
そう簡単にこれを超える作品が出ることもないと思うし、
というくらいに感じました。
ただ、これだけの傑作であるにも関わらず、
客席ではいびきをかいて寝ている人も1人ならずいましたし、
ネットでも今一つという感想もありましたので、
つくづく演劇は難しいな、
好みによる評価の違いが大きいよね、
というようにも思います。
それですので、
全ての方が面白いと思うかは分かりませんが、
東京公演は明日までですが、
大阪公演もありますし、
個人的にはイキウメの代表作の1つで、
間違いなく今年を代表する演劇の1つだと思いますので、
是非是非劇場に足をお運びください。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。

イキウメの新作公演が、
今三軒茶屋のシアタートラムで上演されています。
イキウメの前川知大さんの作品は、
最初に観た「関数ドミノ」の初演に衝撃を受けて、
その後はかなりマメに劇場に足を運びました。
そのシュールで、
常識的な価値観や倫理観を、
飛び越えたようなセンスが素晴らしく、
ちょっと危険なものを観ているような気にも、
させられるところがありました。
ただ、最近の作品はちょっと傾向が変わって来ていて、
あまりそうした異常な論理の飛躍、
というような雰囲気はなく、
正直好みではありませんでした。
また、「関数ドミノ」を含めて、
過去作の再演が一時期多くなったのですが、
再演を繰り返す度に、
どんどん作品が劣化してゆくような印象があり、
演出も「劇中劇」みたいなタイプのものが増えて、
「ああ、こんな風にしたら台無しなのに」
と思うことが多くなりました。
自分で演出もするタイプの劇作家には2通りあって、
再演によって作品がよりブラッシュアップされ、
毎回新鮮な驚きがあるタイプの人と、
再演すると却って、
作品の良い部分を変えてしまって、
作品が劣化してしまうタイプの人がいると思うのですが、
前川さんは後者のように個人的には思います。
ただ、前者のタイプの人が良いという訳では、
必ずしもなくて、
前者のタイプの人は、
初演はまだ未完成で今一つ、
ということが多いのです。
今回の作品で一旦、
イキウメの定期公演はお休みとアナウンスされていて、
それで今回は是非行かなければと思って、
劇場に足を運んだのですが、
今回の作品はイキウメの現時点までの集大成と言って、
過言ではない素晴らしい作品で、
イキウメのこれまでの歴史が凝縮されている、
という感がありましたし、
新たなステップを垣間見せてくれる、
という感じさえある傑作でした。
戯曲の完成度が素晴らしいだけではなくて、
演出、音効、照明などの技術的完成度も高く、
何より、イキウメという劇団の歴史そのものでもある、
5人の役者さんのお芝居が素晴らしく、
安田順平さんや浜田信也さんの多方面での活躍も、
イキウメで培われ成長したものであることは間違いがないのですから、
その円熟したお芝居を観ているだけでも、
イキウメがこれまで積み重ねた演劇的遺産が、
今ここに花開いているという感じがあって、
胸が熱くなります。
内容は細かく説明するのは野暮になるので、
あらすじなどはお示ししませんが、
ウェルズの「モロー博士の島」のような感じ。
人間と動物との境界が不安定になるような、
不穏な空気が漂う中、
ある兄弟の屈折した関係が徐々に家庭の崩壊へと向かい、
それがもっと大きな何かの崩壊に繋がることが示唆されて終わります。
イキウメ初期の歪んだ論理と、
そこからの超常現象の解明という、
初期イキウメの僕の大好きな感じもあり、
最近の社会観察的な視野の広がりもあって、
最初の水槽の中の2匹の魚が、
ちゃんと後半に繋がる構成も鮮やかです。
気が早いのですが、
もう今年のベストプレイに認定してもいいかな、
そう簡単にこれを超える作品が出ることもないと思うし、
というくらいに感じました。
ただ、これだけの傑作であるにも関わらず、
客席ではいびきをかいて寝ている人も1人ならずいましたし、
ネットでも今一つという感想もありましたので、
つくづく演劇は難しいな、
好みによる評価の違いが大きいよね、
というようにも思います。
それですので、
全ての方が面白いと思うかは分かりませんが、
東京公演は明日までですが、
大阪公演もありますし、
個人的にはイキウメの代表作の1つで、
間違いなく今年を代表する演劇の1つだと思いますので、
是非是非劇場に足をお運びください。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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