人類が絶滅しないために必要な出生数は?

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
子どもの数と人口減少.jpg
PLOS One誌に2025年4月30日付で掲載された、
人口減少と出生率との関係についての論文です。

生まれる子供の数が減り、
少子化が日本でも深刻な問題となっています。

地球の人口増加は1960年代がピークで、
推計では2030年の世界の人口は85億人に達すると考えられています。

この数字自体に大きなくるいはありません。

そのため1970年代くらいには人口爆発というような言い方がされ、
このまま人間が増えてゆくと、
食料は不足して地球には人間が住めなくなる未来が待っている、
というようなイメージが世の中に溢れていました。

確かに現在において食糧不足は深刻な問題ではあります。

しかし、それは必ずしも人口爆発が原因ではなく、
実際にはその国や地域が豊かになるにつれ、
子どもの数は減ってゆきました。

上記文献の記載によれば、
現在世界の3分の2の地域では、
現状の出生率は、
その地域の人口を長期的に維持する水準を下回っていて、
このままの出生率であれば、
人口はいずれは減少に向かいます。
問題は経済的に豊かな国や地域において、
むしろその傾向が顕著だと言うことです。

個々が幸せを求め、生活が充足することが、
結果としてその種の絶滅に向かうという、
やや逆説的な現象が起きているのです。

厚生労働省が2025年6月4日発表した人口動態統計によると、
2024年に生まれたお子さんの数は初めて70万人を割り込み、
1人の女性が生涯に産む子供の数を示す指標である、
合計特殊出生率(fertility rate)は1.15と過去最低を更新した、
報道されています。

人口置換水準(the replacement level fertility)という考え方があります。
これは、合計特殊出生率があるレベルより低くなると、
人口は継続的に減少し、
最終的には「絶滅」に向かう、
という危機的な水準のことです。

この指標が2.1を下回ると危機的である、
というのが専門家の間で、
一定のコンセンサスのある数値とされて来ました。

ただ、この数値は、
男女比が一定であるなど、
幾つかの現実離れした仮定が前提となっています。

今回の検証では別個のより現実に即した数理モデルを用いて、
人口置換水準の再検討を行っています。

その結果、
人口置換水準は合計特殊出生率が2.7と、
より高くなることが推定されました。

この結果はかなり深刻なもので、
平均で全女性が3人以上の子供を産むことを想定しないと、
今後の人口減少を食い止めることは出来ず、
すぐではないにしても人類は絶滅に向かう、
という未来が待っているのです。

先日発表された日本の合計特殊出生率1.15というのが、
如何に絶望的な数字であり、
付け焼刃で何か対策を講じたからと言って、
未来が大きく変わる性質ものではないことが、
お分かり頂けるかと思います。

ただ、こうした推定はそれ自体、
多くの仮定の積み重ねの上に成り立っていて、
たとえば出生したお子さんの男女比が、
少し変化するだけでも変化する性質のものです。

従って、あまり悲観的にばかり考えても意味はなく、
科学的に推定される変動の範囲の中で、
どのような未来を希望するのかを、
各人の責任の中で考えるしかないのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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