妊娠時の貧血と先天性の心疾患リスクとの関係
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

An International Journal of Obstetrics & Gynaecology誌に、
2025年4月23日付で掲載された、
先天性心疾患と妊娠女性の貧血との関連についての論文です。
生まれつきの身体の異常の中でも、
最も多いものが、
心臓に何らかの形態的な異常がある、
「先天性心疾患」で、
統計にもよりますが、
世界的に生まれるお子さんの1から2%は、
先天性心疾患を持っている、
と報告されています。
その重症度は、
生まれてからすぐに手術などの治療が必要な、
そのままでは命が危ない重症のものから、
当面は経過観察のみで問題のない軽症のものまで様々です。
この先天性心疾患は、
遺伝子や染色体の異常による場合と、
お母さんのお腹の中での環境に、
何らかの原因がある場合とに分かれます。
遺伝子や染色体の異常についての研究は進歩していますが、
そうした遺伝素因で説明可能なのは、
2019年に発表された遺伝学の専門誌の論文によると、
先天性心疾患全体の30%程度(31%)だと報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30293987/
つまり、残りの7割のお子さんの心臓疾患は、
環境要因が影響していた可能性が高いのです。
それでは、
胎児に影響を与える環境要因には、
どのようなものがあるのでしょうか?
これまでに可能性が指摘されているものとしては、
母体のウイルス感染や高熱、葉酸欠乏、耐糖能異常、
肥満、抗けいれん剤などの薬剤の影響、
などがあります。
そして、上記文献の著者らが注目しているのは、
母体の貧血や鉄欠乏の影響です。
貧血に伴う胎児への酸素供給の低下は、
心臓の正常な発育に、
悪影響を及ぼすという可能性があるからです。
そこで今回の研究ではイギリスにおいて、
電子化された医療データを活用することで、
母体の貧血(この場合ヘモグロビン濃度が11.0g/dL未満)と、
出産したお子さんの先天性心疾患リスクとの関連を、
比較検証しています。
お子さんが先天性心疾患と診断された、
トータル2776名の母親を、
13880名のコントロール群と比較したところ、
心疾患群の4.4%に当たる123名と、
コントロール群の2.8%に当たる390名が、
妊娠100日以内の妊娠初期に貧血と診断されました。
関連する因子を補正して解析したところ、
母体の貧血はお子さんの先天性心疾患のリスクを、
1.47倍(95%CI:1.18から1.83)有意に増加させていました。
これはまだ確定的な知見とは言えませんが、
従来考えられていたより、
妊娠初期の貧血の胎児に与える影響が、
大きい可能性がある、
という今回の結果は、
重く考える必要があり、
今後貧血改善への介入が、
どのような影響を与えるのかについても、
検証が進むことを期待したいと思います。
その一方で少数ながら、
妊娠中のヘモグロビン濃度や鉄濃度の上昇が、
先天性心疾患のリスクなる、
という報告もあることから、
現時点で妊娠初期の軽度の貧血を、
積極的に治療する必要があるかどうかについては、
まだ慎重に考えた方が良いことを、
補足しておきたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

An International Journal of Obstetrics & Gynaecology誌に、
2025年4月23日付で掲載された、
先天性心疾患と妊娠女性の貧血との関連についての論文です。
生まれつきの身体の異常の中でも、
最も多いものが、
心臓に何らかの形態的な異常がある、
「先天性心疾患」で、
統計にもよりますが、
世界的に生まれるお子さんの1から2%は、
先天性心疾患を持っている、
と報告されています。
その重症度は、
生まれてからすぐに手術などの治療が必要な、
そのままでは命が危ない重症のものから、
当面は経過観察のみで問題のない軽症のものまで様々です。
この先天性心疾患は、
遺伝子や染色体の異常による場合と、
お母さんのお腹の中での環境に、
何らかの原因がある場合とに分かれます。
遺伝子や染色体の異常についての研究は進歩していますが、
そうした遺伝素因で説明可能なのは、
2019年に発表された遺伝学の専門誌の論文によると、
先天性心疾患全体の30%程度(31%)だと報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30293987/
つまり、残りの7割のお子さんの心臓疾患は、
環境要因が影響していた可能性が高いのです。
それでは、
胎児に影響を与える環境要因には、
どのようなものがあるのでしょうか?
これまでに可能性が指摘されているものとしては、
母体のウイルス感染や高熱、葉酸欠乏、耐糖能異常、
肥満、抗けいれん剤などの薬剤の影響、
などがあります。
そして、上記文献の著者らが注目しているのは、
母体の貧血や鉄欠乏の影響です。
貧血に伴う胎児への酸素供給の低下は、
心臓の正常な発育に、
悪影響を及ぼすという可能性があるからです。
そこで今回の研究ではイギリスにおいて、
電子化された医療データを活用することで、
母体の貧血(この場合ヘモグロビン濃度が11.0g/dL未満)と、
出産したお子さんの先天性心疾患リスクとの関連を、
比較検証しています。
お子さんが先天性心疾患と診断された、
トータル2776名の母親を、
13880名のコントロール群と比較したところ、
心疾患群の4.4%に当たる123名と、
コントロール群の2.8%に当たる390名が、
妊娠100日以内の妊娠初期に貧血と診断されました。
関連する因子を補正して解析したところ、
母体の貧血はお子さんの先天性心疾患のリスクを、
1.47倍(95%CI:1.18から1.83)有意に増加させていました。
これはまだ確定的な知見とは言えませんが、
従来考えられていたより、
妊娠初期の貧血の胎児に与える影響が、
大きい可能性がある、
という今回の結果は、
重く考える必要があり、
今後貧血改善への介入が、
どのような影響を与えるのかについても、
検証が進むことを期待したいと思います。
その一方で少数ながら、
妊娠中のヘモグロビン濃度や鉄濃度の上昇が、
先天性心疾患のリスクなる、
という報告もあることから、
現時点で妊娠初期の軽度の貧血を、
積極的に治療する必要があるかどうかについては、
まだ慎重に考えた方が良いことを、
補足しておきたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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