コレステロール降下剤による白内障リスク

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの白内障リスク.jpg
Scientific Reports誌に2025年4月19日付でウェブ掲載された、
コレステロール降下剤スタチンの、
白内障リスクについての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
アトルバスタチンやロスバスタチン、シンバスタチンなどが、
その代表的な薬剤です。

このタイプの薬剤は、
強力なコレステロール降下作用と共に、
抗炎症作用なども併せ持ち、
今では動脈硬化の予防薬的な位置づけとして、
幅広く使用されています。

その有効性は特に狭心症や心筋梗塞などの、
心臓の血管の病気を持っている人の、
再発予防や予後の改善において最も認められています。

このように非常に優秀な薬であるスタチンですが、
幾つかの副作用や有害事象も報告され研究されています。

最も指摘されることが多いのが、
横紋筋融解症で代表される、
筋肉系の有害事象で、
それ以外に新規糖尿病リスクの増加、
肝機能障害や腎機能低下などが報告されています。

そして、最近になって時々指摘されることのあるのが、
スタチンの使用により、
白内障のリスクが高まるのではないか、
という指摘です。

白内障は目の水晶体(レンズ)が白濁する現象ですが、
水晶体におけるコレステロール合成が阻害されると、
白内障が進行し易いのではないか、
という仮説があり、
実際にスタチンの使用によって、
白内障リスクが増加したとするデータが発表されています。
ただ、多くのデータをまとめた解析したメタ解析の論文では、
白内障リスクが増加したとする報告がある一方で、
そうした変化は認められなかった、
という報告もあって、
その結果は一致していません。

今回の研究は日本における、
健康診断や健康保険のデータベースを元に解析したもので、
健康診断で脂質異常症と診断された1178560名を対象とし、
その中で新規にスタチンの使用が開始された57434名を、
年齢などをマッチングさせたスタチンを使用していない724060名と比較して、
白内障の発症リスクとの関連を検証しています。
スタチン使用群の平均年齢は51.7歳で非使用群は45.9歳です。
観察期間の平均はスタチン使用群で1.3年、非使用群で3.2年でした。

解析の結果、
スタチン使用群は非使用群と比較して、
観察期間中の白内障の発症リスクが、
1.56倍(95%CI:1.43から1.70)有意に増加していました。

個々のスタチンでの解析では、
スタチン非使用群と比較して、
アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、
プラバスタチンのそれぞれにおいて、
1.35から1.73倍の白内障リスクの増加が認められました。
フルバスタチンとシンバスタチンについては、
有意な増加は認められませんでしたが、
これはこの2種の薬剤使用事例が、
少ないためと考えられました。

今回の検証はこうしたデータとしては、
観察期間がかなり短く、
スタチン開始以前から、
白内障の兆候があった可能性は否定出来ませんが、
ほぼ全てのスタチンの新規使用で、
明確に白内障のリスクが増加している点は興味深く、
今後そのメカニズムを含めて、
より厳密な検証の積み重ねに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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