乳製品の摂取と慢性肝疾患リスクとの関連(2025年アメリカの疫学データ)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヨーグルトと肝疾患.jpg
乳製品の摂取と肝疾患との関連についての論文です。

慢性肝疾患というのは、
肝臓の炎症が長期に渡り継続する状態のことで、
肝硬変や肝不全、肝臓癌などのリスクが生じます。
ウイルス性肝炎やお酒の飲み過ぎに伴うアルコール性肝疾患が、
以前は主に注目されていましたが、
最近はアルコールとは関連の少ない、
非アルコール性脂肪性肝疾患も、
その罹患率の高さや治療の困難さから、
注目されるようになっています。

慢性肝疾患は飲酒を含め、
生活習慣との関連が深い病気です。

食生活との関連もしばしば指摘されることがあります。

乳製品には牛乳以外に、
ヨーグルトやチーズなどが含まれ、
蛋白やカルシウム、各種ビタミンなどの摂取において、
欠かせない食品であることは間違いがありません。

ただ、その一方で動物性脂肪を多く含み、
脂肪性肝疾患のリスクとなる可能性は否定出来ません。
またインスリン様成長因子など、
細胞の増殖を促すような成分を含有していることが、
成人以降においては、
細胞老化や発癌のリスクになる可能性を、
指摘する意見もあります。

これまでにも乳製品の摂取と肝臓病との関係については、
疫学研究の報告がありますが、
その結果は必ずしも一致したものではありませんでした。

今回の研究はアメリカで過去に施行された健康調査の結果を解析することで、
慢性肝疾患と乳製品の摂取との関連を検証したものです。

対象は485931名の一般住民で、
中央値で15.5年の経過観察が施行されています。
乳製品を成分無調整などの高脂肪乳や高脂肪の乳製品と、
脂肪量を調整した低脂肪乳と低脂肪の乳製品とに分けて、
その摂取量(回数)と慢性肝疾患の発症との関連を検証しています。
乳製品にはチーズ、ヨーグルト、コンデンスミルク、アイスクリーム、
コーヒーミルク、バター、マーガリンなどが含まれていて、
ヨーグルトは別個に単独の解析対象にもなっています。

解析の結果、
高脂肪乳及び高脂肪の乳製品の摂取が多いほど、
慢性肝疾患のリスクも増加していました。
全く乳製品を摂取しない場合と比較して、
週に14回(単位)以上摂取している人は、
慢性肝疾患のリスクが2.03倍(95%CI:1.31から3.14)、
有意に増加していました。

その一方で低脂肪乳や低脂肪の乳製品の摂取は、
慢性肝疾患のリスク低下と結びついていました。
全く乳製品を摂取していない場合と比較して、
週に14回(単位)以上低脂肪の乳製品を摂取している人は、
慢性肝疾患のリスクが46%(95%CI:0.41から0.70)、
こちらは有意に低下していました。

ヨーグルトのみの摂取量も、
慢性肝疾患のリスク低下と結びついていました。
ヨーグルトを摂取しない人と比較して、
週に4回(単位)以上摂取している人は、
慢性肝疾患のリスクが40%(95%CI:0.37から0.97)、
有意に低下していました。

高脂肪乳製品の摂取量が多いと、
肝細胞癌のリスクも高い傾向があり、
全く高脂肪乳製品を摂取していない場合と比較して、
週に14から21回(単位)摂取している人は、
肝細胞癌のリスクが1.35倍(95%CI:1.07から1.70)、
有意に増加していました。

このように、今回の大規模な疫学データの解析では、
高脂肪の生乳及び乳製品は、
慢性肝疾患や肝細胞癌のリスクになる一方で、
低脂肪の乳製品やヨーグルトの摂取については、
そのリスク低下に結び付く、
という興味深い知見が得られています。

これは概ね、
これまで発表されたデータとも、
一致する点の多いもので、
乳製品や生乳よりもヨーグルトやチーズを、
高脂肪よりも低脂肪を選択することが、
肝臓の健康のためには望ましい選択であると言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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