アルツハイマー病診断のために新規血液検査について

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルツハイマー病の新規血液検査.jpg
Alzheimer’s & Dementia 誌に2025年3月付で掲載された、
アルツハイマー病を診断する、
新規の血液検査についての論文です。

狭義のアルツハイマー病を含む、
アルツハイマー型認知症の診断は、
通常は症状の経過やMRI検査などによる、
脳の形態的な検査によって、
一般の臨床では行われていることが多いのですが、
確定診断のためには、
その特徴である脳への異常蛋白アミロイドβの蓄積が、
証明されることが必要です。

そのためには、
髄液でのアミロイドβやタウ蛋白の計測と、
アミロイドPET検査と呼ばれる、
アミロイドβの蓄積に特化した、
放射性物質を用いる画像検査の、
いずれかが必要です。

こうした検査は最近まで、
健康保険での施行は出来ませんでしたが、
2023年12月にレカネマブという、
アミロイドβの抗体製剤の使用が認可されたので、
その使用を検討する場合に限って、
検査の健康保険適応が認められました。

ただ、髄液検査は背中に針を刺す、
腰椎穿刺という手技が必要な、
身体に負担の掛かる検査ですし、
アミロイドPETは放射性物質を使用する検査で、
施行可能な施設はかなり限定されてしまいます。

もっと簡単に、
アミロイドβの脳への沈着を、
証明するような検査はないのでしょうか?

そこで今注目されているのが、
血液検査でアミロイドβとタウ蛋白を測定して、
そこから脳へのアミロイドβの蓄積を、
推定しようという方法です。

これは富士レビオ・ホールディングス株式会社の、
アメリカの子会社である、
Fujirebio Diagnostics, Inc.が開発したもので、
全自動化学発光酵素免疫測定システム「ルミパルス®Gシリーズ」を利用して、
血漿中の217位リン酸化タウ蛋白(pTau217)とβ-アミロイド1-42の比率を測定することにより、
脳へのβアミロイド異常蛋白の、
蓄積を推測しよう、と言う検査です。

今回ご紹介する論文では、
この血液検査の診断能を確認する目的で、
アルツハイマー病の患者さん391名と、
認知症の兆候のない一般住民121名を対象として、
この検査を施行し、
アミロイドPETや髄液検査との比較を行っています。

その結果この血液検査はアミロイドPETと高い相同性を示し
(ROC曲線下面積:0.963から0.966)、
髄液検査にも匹敵する診断能を持つことが確認されました。

こうした結果を受けてアメリカのFDAは、
2025年の5月16日付で、
この血液検査を正式に承認しました。
アルツハイマー病の診断補助的検査としての位置づけです。

今後の問題は検査のコストになるかと思いますが、
これまで身体に大きな負担のある検査や、
施設が限られる検査しかなかった認知症の確定診断において、
より簡便な採血による方法が確立されたことは大きな進歩で、
今後こうした検査がアルツハイマー型認知症の診断においても、
スクリーニング的な位置づけとなることは間違いないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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