飲酒量と飲酒パターンが糖尿病リスクに与える影響(2025年アメリカの疫学データ)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
飲酒回数と糖尿病リスク.jpg
Diabetes Care誌に2025年2月18日付で掲載された、
飲酒量と飲酒パターンが糖尿病リスクに与える影響についての論文です。

お酒を飲む人は糖尿病になり易いでしょうか?

お酒は基本的に、
糖質のみのカロリーの塊のような飲み物ですから、
お酒飲みの人は糖尿病になり易いように思えます。

大量のお酒を飲んでいれば、
肝臓も悪くなりますし、
心臓病や脳卒中、高血圧などにも、
悪影響を及ぼすことは間違いがありません。

ただ、アルコールを少量飲む習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりも、
一部の病気のリスクは低くなり、
寿命にも良い影響がある、
というような知見も複数存在しています。

日本では厚労省のe-ヘルスケアネットに、
日本のデータを元にして、
がんと心血管疾患、総死亡において、
純アルコールで平均23グラム未満(日本酒1合未満)の飲酒習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりリスクが低い、
という結果が以前は紹介されていました。
(現在は飲酒ガイドラインとして個々のリスクが表として提示)

またお酒を一定量飲む人の方が、
飲まない人よりも糖尿病のリスクが低い、
つまりお酒に一定の糖尿病予防効果がある、
ということを示唆するデータも複数報告されています。

たとえば、大阪市立大学の研究者らによる、
The Kansai Healthcare Studyという日本の疫学データの解析では、
お酒を飲まない人と比較して、
週に4から7日お酒を飲んでいる人は、
糖尿病になるリスクが26%低下していた、
という結果が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21131305/

e-ヘルスケアネットにも、
1日20から25グラムくらいの飲酒習慣は、
糖尿病リスクを低下させると記載されています。

今回の研究は、
アメリカの医療従事者を対象とした、
有名な大規模疫学研究のデータを活用して、
糖尿病リスクと飲酒習慣との関連を検証しているものです。
観察期間は30年を超え、
200969名の医療従事者を対象として、
観察期間中に20551名の2型糖尿病患者が発症しています。

解析の結果、
お酒を飲まない人と比較して、
飲酒習慣のある人は、
糖尿病になるリスクが有意に低下していました。
この飲酒習慣の糖尿病予防効果は、
飲酒量よりも飲酒回数と関連性が高く、
女性では週に1、2回から、
男性では週に3、4回からリスク低下が認められ、
男女とも週5回以上が最大となっていました。
今回の研究は3つの疫学データを解析したものですが、
いずれのデータにおいても、
週に1から2日の飲酒と比較して、
週に5から6日飲酒している人は、
糖尿病のリスクが20%以上低下していることが確認されました。

つまり、今回の大規模な疫学データの解析においても、
飲酒習慣は糖尿病リスクを低下させていたのです。

それでは、何故こうした現象が認められるのでしょうか?

現状はその理由は不明です。

アルコールの代謝促進作用が有効に働いている、
という仮説や、
お酒を飲む人は、
それ以外の糖質の摂取が抑えられている、
と言う意見、
またアルコール代謝関連の遺伝子の個人差が、
関連しているという意見などがありますが、
未だ推測の域は出ていません。

ただ、アルコールには強い常用性があり、
依存症や中毒も存在し、
肝臓病など多くの病気のリスクになることもまた間違いのない事実です。

従って、本論文の末尾にも、
糖尿病予防目的の飲酒は推奨されない、
と記載されています。

飲酒習慣に糖尿病の予防効果があるという今回の結果は、
いずれにしても非常に興味深く、
その背景にある因子の解明を、
今後は期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

この記事へのコメント