減塩と降圧剤の高血圧治療における相互影響(2024年メタ解析)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
減塩効果のメタ解析.jpg
Hypertension誌に2024年11月付で掲載された、
高血圧の患者さんへの減塩の効果が、
使用している降圧剤によって、
どのように違うのかについての論文です。

食事の塩分を控える減塩に、
血圧の低下作用のあることは、
広く知られている事実です。

ただ、全ての高血圧患者さんに減塩が有効であるかと言うと、
必ずしもそうではなく、
塩分感受性という言い方をすることがありますが、
その人の体質によって、
減塩で血圧が急激に下がる人と、
あまり効果のない人がいることも分かっています。

降圧剤にも多くの種類があり、
その中にはサイアザイド系利尿剤のように、
尿へのナトリウムの排泄を促す、
減塩に近いメカニズムを持つものもあり、
またナトリウムの排泄には、
殆ど影響を与えないようなもののもあります。

それでは、
高血圧の患者さんにおいて、
使用している降圧剤の種類と、
減塩の効果との間には、
どのような関係があるのでしょうか?

今回の研究では、
尿に排泄されるナトリウムの測定から、
塩分摂取量を推計する方法を用いて、
減塩の効果を検証した、
これまでの臨床データをまとめて解析するメタ解析の手法で、
降圧剤の種類が減塩の降圧効果に与える影響を検証しています。

これまでの35の臨床研究に含まれる、
トータルで2885名の高血圧患者さんのデータをまとめて解析したところ、
尿中ナトリウムが100mmol(塩化ナトリウム換算で約5.9グラム)減少する毎に、
収縮期血圧が6.81mmHg(95%CI:4.96から8.66)、
拡張期血圧が3.85mmHg(95%CI:2.26から5.43)、
それぞれ有意に低下することが確認されました。

ただ、この減塩の降圧効果は、
その患者さんが使用している降圧剤により差があり、
β遮断薬、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬の使用群と、
2種類の降圧剤併用群では、
明らかに認められた一方で、
サイアザイド系利尿薬では認められず、
カルシウム拮抗薬も収縮期血圧のみ、
一定の低下が認められたものの、
僅かな低下に留まっていました。

理屈の上でも、
減塩とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の薬剤の併用は、
塩分が失われることによって、
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が活性化するのを、
薬剤で抑え込むような形になるので、
相乗効果を示す可能性が高い一方で、
利尿剤は減塩と同様の効果をもたらす薬剤なので、
その併用はあまり有効ではない、
と言うように考えると、
妥当な結果であるように思います。

逆に減塩が実際には難しいような高血圧患者さんでは、
その代替として利尿剤を使用することが、
有効な戦略であるような気がします。

いずれにしても、
高血圧の患者さんには通常一様に、
塩分制限の指導が行われているのですが、
その有効性は実際には患者さんの体質のみならず、
使用している降圧剤によっても異なるという今回のデータは、
臨床に関わるものとしては非常に興味深く、
治療の効率化にも繋がる、
重要な知見であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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