生活改善とメトホルミンの糖尿病予防効果

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メトホルミンの糖尿病予防効果.jpg
The Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2025年4月28日付でウェブ掲載された、
糖尿病の予防についての論文です。

2型糖尿病は肥満や内臓脂肪の増加が先行することが多く、
その発症に食事や運動などの生活習慣の長期の影響が、
大きいと考えられています。

そのため、早期の生活改善は、
糖尿病の予防に有効と考えられていますが、
それを長期の観察において証明したような研究は、
それほど多い訳ではありません。

また、一部の糖尿病治療薬を、
まだ糖尿病になる前から使用することによって、
糖尿病の予防効果があるのでは、
というような考え方がありますが、
そうした報告はあるものの、
精度の高い研究は多くはありません。

その中で、
アメリカ糖尿病予防プログラム(DPP)と題された研究は、
糖尿病をまだ発症はしていない、
前糖尿病(糖尿病予備軍)の3234名を、
減量や運動療法などについての、
積極的な介入を行った場合、
糖尿病治療薬であるメトホルミンを、
1日1700㎎内服してもらった場合、
通常の生活指導に加えて、偽薬を飲んでもらった場合、
の3つの群に分けて3年間の観察を行ったもので、
その結果は2002年のthe New England Journal of Medicine誌に発表されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11832527/

それによると、
積極的生活改善への介入により、
糖尿病のリスクは58%(95%CI: 0.34から0.52)、
メトホルミンの使用により31%(95%CI:0.57から0.83)、
それぞれ有意に低下していました。

つまり、徹底した生活改善には劣るものの、
メトホルミンにも一定の糖尿病予防効果があった、
とする結果です。

今回の研究はこのDPP研究をその後も継続し、
20年を超える長期の観察を行った結果を解析したものです。

メトホルミン使用群では、
問題がなければ、その使用を継続し、
偽薬群はその使用は中止。
積極的生活改善群では、
年に2回の生活指導を継続しています。

3195人が解析対象となり、
登録時の年齢は平均で50.6歳で、
観察期間は中間値で8.0年、0.2年から23.2年に分布していました。
解析の結果、
通常の生活指導のみと比較して、
積極的生活改善指導群では、
糖尿病のリスクは24%(95%CI:0.68から0.85)、
メトホルミン使用群では17%(95%CI: 0.74から0.93)、
それぞれ有意に低下していました。

つまり長期の観察においても、
メトホルミンや生活改善には、
一定の糖尿病予防効果が確認された、
と言う結果が確認されました。

細かく見ると、
生活改善の有効性も、
メトホルミンの有効性も、
最初の3年の介入において、
その効果が顕著に見られていて、
その後は徐々に減衰してゆくと共に、
両者の介入の効果も、
ほぼ同等のものになってゆく、
と言う傾向が見られました。

当初の3年を過ぎて、
指導が緩んだ以降も、
その生活パターンを継続することは、
実際にはかなり困難であったと想定されますから、
これは想定される結果であるように思います。

一方でメトホルミンが3年の使用後に、
中止してもそれほどの影響がないのか、
それとも継続に一定の意味があるのかについては、
今回の結果のみからは、
明確ではないような気がします。

いずれにしても、
これだけ長期の検討において、
生活改善やメトホルミンの使用により、
一定の糖尿病予防効果が確認されたことの意義は大きく、
今後の生活指導においても、
重要なデータの1つとなると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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