消炎鎮痛剤の認知症予防効果(オランダの疫学データ解析)
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Journal of the American Geriatrics Society誌に、
2025年3月4日付でウェブ掲載された、
消炎鎮痛剤(痛み止め)の認知症予防効果についての論文です。
認知症の有効な予防法は、
現時点で様々な報告はあるものの、
未だ確立されたものはありません。
認知症の発症メカニズムにも様々な仮説がありますが、
その1つとして神経組織の炎症が、
誘因となっているというものがあります。
仮にそうであるとすれば、
炎症を抑える薬である、
消炎鎮痛剤を継続的に使用することにより、
認知症のリスクは減らせるのでしょうか?
これまでに幾つかの疫学データや観察研究が報告されていますが、
その結論は必ずしも一致していませんでした。
今回の研究は、
オランダで現在も継続中である、
大規模な疫学研究であるロッテルダム研究のデータを活用して、
登録時に認知症のない11745名の一般住民を対象とし、
平均で14.5年の観察期間中に、
認知症の発症の有無と、
その間の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用との関連を検証しています。
その結果、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の24か月を超える長期使用は、
認知症リスクを12%(95%CI:0.84から0.91)有意に低下させていました。
その一方で24か月以下の使用継続では、
明確な認知症リスクの低下は認められませんでした。
また、累積の消炎鎮痛剤の使用量と、
認知症リスクとの間には、
有意な関連が認められませんでした。
非ステロイド系消炎鎮痛剤の中には、
脳の異常蛋白であるアミロイドβの蓄積を、
減少させるような効果が、
動物実験などで示唆されている、
ジクロフェナクなどと、
そうした効果はないと考えられている、
セレコキシブなどの種別がありますが、
むしアミロイドβの抑制作用のない消炎鎮痛剤の方が、
認知症予防効果は高くなっていました。
このように、
今回の大規模な疫学データの解析において、
一定の認知症予防効果が、
数年を超える長期の消炎鎮痛剤の使用において認められました。
ただ、その効果は累積の使用量とは一致せず、
これまでのアミロイドβなどに対する有効性のデータとも一致しないなど、
不明の点が多く、
現時点で明確な認知症予防効果があると、
言い切るには時期尚早であるように思われます。
更に非ステロイド系消炎鎮痛剤の長期使用には、
腎機能低下や消化管出血など、
副作用や有害事象のリスクも存在しているため、
そのリスクを超えた有用性があるとは言えません。
従って、
現時点で認知症予防に消炎鎮痛剤、
というような予防法は推奨は出来ませんが、
今後抗炎症作用と認知症リスクとの関連については、
より多角的な検証が必要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Journal of the American Geriatrics Society誌に、
2025年3月4日付でウェブ掲載された、
消炎鎮痛剤(痛み止め)の認知症予防効果についての論文です。
認知症の有効な予防法は、
現時点で様々な報告はあるものの、
未だ確立されたものはありません。
認知症の発症メカニズムにも様々な仮説がありますが、
その1つとして神経組織の炎症が、
誘因となっているというものがあります。
仮にそうであるとすれば、
炎症を抑える薬である、
消炎鎮痛剤を継続的に使用することにより、
認知症のリスクは減らせるのでしょうか?
これまでに幾つかの疫学データや観察研究が報告されていますが、
その結論は必ずしも一致していませんでした。
今回の研究は、
オランダで現在も継続中である、
大規模な疫学研究であるロッテルダム研究のデータを活用して、
登録時に認知症のない11745名の一般住民を対象とし、
平均で14.5年の観察期間中に、
認知症の発症の有無と、
その間の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用との関連を検証しています。
その結果、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の24か月を超える長期使用は、
認知症リスクを12%(95%CI:0.84から0.91)有意に低下させていました。
その一方で24か月以下の使用継続では、
明確な認知症リスクの低下は認められませんでした。
また、累積の消炎鎮痛剤の使用量と、
認知症リスクとの間には、
有意な関連が認められませんでした。
非ステロイド系消炎鎮痛剤の中には、
脳の異常蛋白であるアミロイドβの蓄積を、
減少させるような効果が、
動物実験などで示唆されている、
ジクロフェナクなどと、
そうした効果はないと考えられている、
セレコキシブなどの種別がありますが、
むしアミロイドβの抑制作用のない消炎鎮痛剤の方が、
認知症予防効果は高くなっていました。
このように、
今回の大規模な疫学データの解析において、
一定の認知症予防効果が、
数年を超える長期の消炎鎮痛剤の使用において認められました。
ただ、その効果は累積の使用量とは一致せず、
これまでのアミロイドβなどに対する有効性のデータとも一致しないなど、
不明の点が多く、
現時点で明確な認知症予防効果があると、
言い切るには時期尚早であるように思われます。
更に非ステロイド系消炎鎮痛剤の長期使用には、
腎機能低下や消化管出血など、
副作用や有害事象のリスクも存在しているため、
そのリスクを超えた有用性があるとは言えません。
従って、
現時点で認知症予防に消炎鎮痛剤、
というような予防法は推奨は出来ませんが、
今後抗炎症作用と認知症リスクとの関連については、
より多角的な検証が必要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
この記事へのコメント