大動脈弓の大きさと生命予後との関連(2025年中国の疫学データ)
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Journal of Internal Medicine誌に、
2025年5月付で掲載された、
胸部レントゲン検査で簡単に計測可能な指標と、
生命予後などとの関連についての論文です。
胸部レントゲン検査は、
健診などでも施行されることの多い、
心臓や肺の病気の診断を主な目的とした簡便な検査で、
その精度は胸部CT検査に比べると、
かなり劣る点があり、
CTでは発見可能な病変が、
見落とされてしまう危険がある一方、
その機器は小規模なクリニックなどにも広く普及していて、
簡単かつ安価に検査が可能であると共に、
CT検査に比べると、
その放射線の被ばく線量も低く抑えられる、
という利点があります。
胸部レントゲン検査の、
健康指標としての活用として、
心臓の大きなや大動脈の大きさなどを計測し、
それを1つのリスク指標として活用する、
と言う考え方があります。
こちらをご覧ください。

図の右上に記載されている、
Aortic Knob Width(AKW)というのは、
大動脈弓部径などと言われることもあります。
これは気管の左の端から大動脈弓の左の端までの長さのことです。
(この場合の左右の表記は通常とは逆になります)
次に斜めのラインで表現された、
Ascending Aortic Length(AAL)というのは、
心臓右の窪んだ部分から左上の弓部の端までの長さのことです。
最後にAscending Aortic Width(AAW)というのは、
胸部の中央から大動脈弓の左の端までの長さのことです。
この中で特にAKWという指標は、
大動脈の大きさを推計するものとして、
一般臨床でも広く活用されています。
ただ、明らかに病的な拡張は、
大動脈瘤などを疑って、
CT検査などで精査を検討することになりますが、
そこまでではない軽度の拡張が、
どの程度の健康上のリスクと関連しているのか、
というような点についてはまだデータは限られています。
今回の研究は中国において、
50歳以上の一般住民27047名を対象として、
平均16.3年という長期の観察を行い、
上記のような胸部レントゲン検査の指標と、
対象者の予後との関連を比較検証しているものです。
その結果AKWが1SD(標準偏差)増加する毎に、
総死亡のリスクが13%(95%CI: 1.11から1.16)、
心血管疾患による死亡のリスクが20%(95%CI:1.15から1.25)、
心血管疾患発症のリスクが11%(95%CI: 1.08から1.14)、
ぞれぞれ有意に増加していました。
AALとAAWという指標についても、
同様の傾向は認められました。
このように胸部レントゲンにおける簡便な指標が、
高血圧の患者さんなど、
病気のリスクの高い集団のみならず、
一般の住民においても、
長期的な心血管疾患のリスクを推計する指標となり得る、
という今回の結果は、
同じアジア人種のデータとしても興味深く、
今後より厳密な検証の積み重ねに期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Journal of Internal Medicine誌に、
2025年5月付で掲載された、
胸部レントゲン検査で簡単に計測可能な指標と、
生命予後などとの関連についての論文です。
胸部レントゲン検査は、
健診などでも施行されることの多い、
心臓や肺の病気の診断を主な目的とした簡便な検査で、
その精度は胸部CT検査に比べると、
かなり劣る点があり、
CTでは発見可能な病変が、
見落とされてしまう危険がある一方、
その機器は小規模なクリニックなどにも広く普及していて、
簡単かつ安価に検査が可能であると共に、
CT検査に比べると、
その放射線の被ばく線量も低く抑えられる、
という利点があります。
胸部レントゲン検査の、
健康指標としての活用として、
心臓の大きなや大動脈の大きさなどを計測し、
それを1つのリスク指標として活用する、
と言う考え方があります。
こちらをご覧ください。

図の右上に記載されている、
Aortic Knob Width(AKW)というのは、
大動脈弓部径などと言われることもあります。
これは気管の左の端から大動脈弓の左の端までの長さのことです。
(この場合の左右の表記は通常とは逆になります)
次に斜めのラインで表現された、
Ascending Aortic Length(AAL)というのは、
心臓右の窪んだ部分から左上の弓部の端までの長さのことです。
最後にAscending Aortic Width(AAW)というのは、
胸部の中央から大動脈弓の左の端までの長さのことです。
この中で特にAKWという指標は、
大動脈の大きさを推計するものとして、
一般臨床でも広く活用されています。
ただ、明らかに病的な拡張は、
大動脈瘤などを疑って、
CT検査などで精査を検討することになりますが、
そこまでではない軽度の拡張が、
どの程度の健康上のリスクと関連しているのか、
というような点についてはまだデータは限られています。
今回の研究は中国において、
50歳以上の一般住民27047名を対象として、
平均16.3年という長期の観察を行い、
上記のような胸部レントゲン検査の指標と、
対象者の予後との関連を比較検証しているものです。
その結果AKWが1SD(標準偏差)増加する毎に、
総死亡のリスクが13%(95%CI: 1.11から1.16)、
心血管疾患による死亡のリスクが20%(95%CI:1.15から1.25)、
心血管疾患発症のリスクが11%(95%CI: 1.08から1.14)、
ぞれぞれ有意に増加していました。
AALとAAWという指標についても、
同様の傾向は認められました。
このように胸部レントゲンにおける簡便な指標が、
高血圧の患者さんなど、
病気のリスクの高い集団のみならず、
一般の住民においても、
長期的な心血管疾患のリスクを推計する指標となり得る、
という今回の結果は、
同じアジア人種のデータとしても興味深く、
今後より厳密な検証の積み重ねに期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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