毎日の歩数と健康寿命との関連(2024年日本の疫学研究)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
健康寿命と毎日の歩数との関係.jpg
BMC Health & Care Informatics誌に、
2024年5月1日付で掲載された、
毎日の歩数と健康寿命との関連についての論文です。

これは京都府立大学の研究者らによる日本の疫学研究です。

毎日の歩数と健康や病気との関連については、
このブログでも何度も取り上げていますし、
多くの報告が世界中で発表されています。

厚労省は健康維持のために、
1日5000歩から8000歩あるくことを推奨していて、
これは主に久山町研究を元にしたものですが、
国外でも概ねこれと同様の報告が多くあります。

その効果は、
主に総死亡のリスクや、
心血管疾患などの慢性病のリスクを低下させる、
という指標で評価されています。

総死亡リスクを低下させるというのは、
端的に言えば「長生き」ということですが、
ただ長く生きても、
元気で活動できる状態でなければ意味がない、
という意見もあります。

一般の大多数の方はそう思われるのではないでしょうか。

これを「健康寿命」のように言うことが、
最近多くなっています。

英語では、
「healthy life years」もしくは「healthy life expectancy」、
と言われることが多いようです。

健康寿命というのは、
基本的には自覚的な指標で、
自分が健康であると感じることが出来て、
実際に制限なく自由に生活出来ている状態、
ということです。

仮にがんがあったとしても、
糖尿病があったとしても、
それが何ら生活に制限を及ぼしていないのであれば、
自覚的には健康である、
ということになる訳です。

勿論、糖尿病が進行して合併症が生じるようになれば、
病気の症状が出るようになり、
身体の不都合を感じることで、
健康寿命も短縮することになるので、
慢性の病気の存在と健康寿命とは、
無関係ではないのですが、
その糖尿病が軽症のままで推移して、
何ら寿命や生活に影響しない、
と言う可能性もあり得るので、
その場合は病気はあっても、
健康寿命とは無関係、と言うことになる訳です。

上記文献の著者らは、
この健康寿命を算定するAIを用いた手法を研究し、
それを元にして、
毎日の歩数と健康寿命との関係を検証しています。

対象となっているのは、
国民生活基礎調査に含まれる、
成人4957名のデータです。

健康寿命は主指標と副指標とがあり、
主指標は毎日の活動に制限のないこと
(やりたいことが身体的な制限なく出来る状態)で、
副指標は自覚的に健康だと感じていること
(自分として病気を疑うような症状がない)、
ということです。

解析の結果、
毎日の歩数が増加すると、
健康寿命の指標も改善し、
概ね1日9000歩までは、
歩数が多いほど主指標も改善、
1日11000歩までは副指標も改善し、
その後はほぼフラットになる、
という関係が認められました。

これまでと同じ病気は死亡の指標で見ると、
死亡リスクは1日8800歩まで低下し、
心血管疾患リスクは1日7200歩までは低下していました。

つまり、
これまでと同様に病気の指標で見れば、
ほぼほぼ5000から8000歩くらいに収まっていて、
これまでのデータと変わりはないのですが、
健康寿命と言う観点から見ると、
もう少し上の歩数を目標としても良さそうだ、
ということになります。

このデータをどう考えるかは難しいところで、
元気で活動的な人は、
実際沢山歩いていることが多いでしょうから、
そのことを単純に反映しているだけ、
のように思えなくもありません。

ただ、確かに病気のリスクより、
健康と感じて生活に制限なく長生きすることの方が、
実際に重要であることは間違いがなく、
こうしたデータが蓄積されることが、
今後の健康上の施策において、
必要な情報であることもまた間違いのないことだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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