CTの医療被曝による将来の発がんリスク推計(2025年アメリカのリスク解析データ)
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年4月14日付で掲載された、
CT検査の発がんリスクについての論文です。
CT検査の有用性は、
医療の検査としては、
揺るがないものですが、
この検査による医療被曝は、
血管造影などを除けば、
量的には多いので、
その特にお子さんの時期の施行により、
将来的な発がんのリスクが増すのではないか、
という危惧は、以前から指摘をされていました。
しかし、
その被曝線量は、
通常の各臓器をターゲットとした検査において、
1回のCTで高く見積もっても、
5~50mSv(ミリシーベルト)程度ですから、
そうした低線量で、
実際に人間で検出出来るような、
発癌リスクの上昇があるかどうかについては、
未だ議論のあるところです。
CT検査と発がんリスクとの関連性を、
検証した研究データの多くは、
原爆の被ばく者のデータを元に、
そのリスクを推計する、
という手法を取っていました。
つまり、CT検査を受けた人と受けない人とを、
直接比較するのではなく、
CTによりこれこれの線量が組織に吸収されるので、
原爆の被ばく者のデータから推測すると、
発がんのリスクがこれこれくらいは上昇する筈だ、
というようなものです。
ただし、
原爆の被ばく線量は、
CTと比べれば桁が違いますから、
それをそのまま低線量のリスクに活用する、
という手法には批判も多く寄せられました。
2012年に初めて、
18万人を解析したイギリスの疫学研究において、
小児期のCT検査による医療被曝による発がんリスクの上昇が、
白血病と脳腫瘍という2種類のがんに限って、
統計的に有意であるとの結果が報告されました。
これは初めて直接の疫学データの比較において、
CTによる発がんリスクを計算したものです。
それを更に大規模に検証したのが、
2013年に発表されたオーストラリアの疫学データです。
オーストラリアにおいて、
1985年時点で0~19歳であったか、
1985年~2005年の間に生まれた、
1090万人あまりのお子さんを対象とし、
そのうち0~19歳でCT検査を施行された、
68万人あまりのその後の経過を、
CT未施行群と比較して、
CT検査後1年経過以降に、
がんを発症するリスクを検証しています。
CT検査施行群の平均観察期間は9.5年で、
論文発表後も観察は継続中です。
CT検査の平均被曝線量は、
4.5ミリシーベルトですから、
比較的低線量の検査が行なわれています。
経過観察中に60674例のがんが報告され、
そのうち3150例がCT検査施行群です。
全てのがんの発症の確率は、
CT検査を施行したお子さんでは、
有意に1.24倍増加していました。
この発がんリスクの上昇は、
CTの撮影回数が多いほど増加しており、
放射線量との間に用量依存性が成立しています。
CT検査によるその後の発がんリスクは、
その検査時の年齢が低いほど、
高い傾向にあり、
1~4歳時の検査では、
その後のリスクは1.35倍と最も上昇していました。
この研究で注目すべき点は、
この発がんリスクの上昇が、
白血病や脳腫瘍ばかりでなく、
消化器系のがんや女性器由来のがん、皮膚がんや甲状腺がんなど、
広範な種類のがんで認められている、
という点です。
これは初めて得られた知見です。
観察の範囲で、
608例のがんがCTの被曝により発症したと考えられ、
その内訳は脳腫瘍が147例、
48例が白血病や骨髄組織由来のがん、
57例がリンパ組織由来で、
356例がそれ以外の固形がんでした。
発がんリスクの上昇は、
CT検査後1年で既に認められ、
2007年までの解析において、
年間10万人当たり9.38人のがんが、
CT検査により過剰に発症する、
という頻度となっています。
これは生涯のリスクではなく、
患者さんの最高齢はまだ40代ですから、
今後また修正される可能性が残っています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23694687/
今回の研究はアメリカにおいて、
2023年に施行されたと推計されるCT検査により、
将来的にがんの患者が放射線被曝の影響で、
どの程度増えるかを数理モデルにより推測したものです。
2023年にアメリカ全土で、
6151万人の患者に9300万件のCT検査が施行されたと推計されていて、
これらの検査の部位や線量、年齢性別などの情報より、
将来的に103000件の放射線誘発がんが発生すると想定されました。
これは将来的に予測されるがんの罹患数のうち、
その5%に相当することになります。
予測されるがんのうち、
最も多かったのは肺がんで22400件、
大腸がんが8700件、白血病が7900件、膀胱がんが7100件、
などとなっていました。
今回は数理モデルによる推計で、
元になっているデータは原爆の被ばく者や、
原発施設などの従事者のものを元にしている部分が大きい、
という点には注意が必要ですが、
特に若年齢で行われるCT検査が、
僅かながら将来的ながんのリスクとなり、
現行のようにCT検査が多数行われている状況では、
その累積は全がんの5%と、
決して無視出来ない比率になり得る、
という知見は医療者にとっても患者にとっても、
注意するべき情報であることは間違いがなく、
今後のCT検査の適正使用について、
より実際的な指針の作成に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年4月14日付で掲載された、
CT検査の発がんリスクについての論文です。
CT検査の有用性は、
医療の検査としては、
揺るがないものですが、
この検査による医療被曝は、
血管造影などを除けば、
量的には多いので、
その特にお子さんの時期の施行により、
将来的な発がんのリスクが増すのではないか、
という危惧は、以前から指摘をされていました。
しかし、
その被曝線量は、
通常の各臓器をターゲットとした検査において、
1回のCTで高く見積もっても、
5~50mSv(ミリシーベルト)程度ですから、
そうした低線量で、
実際に人間で検出出来るような、
発癌リスクの上昇があるかどうかについては、
未だ議論のあるところです。
CT検査と発がんリスクとの関連性を、
検証した研究データの多くは、
原爆の被ばく者のデータを元に、
そのリスクを推計する、
という手法を取っていました。
つまり、CT検査を受けた人と受けない人とを、
直接比較するのではなく、
CTによりこれこれの線量が組織に吸収されるので、
原爆の被ばく者のデータから推測すると、
発がんのリスクがこれこれくらいは上昇する筈だ、
というようなものです。
ただし、
原爆の被ばく線量は、
CTと比べれば桁が違いますから、
それをそのまま低線量のリスクに活用する、
という手法には批判も多く寄せられました。
2012年に初めて、
18万人を解析したイギリスの疫学研究において、
小児期のCT検査による医療被曝による発がんリスクの上昇が、
白血病と脳腫瘍という2種類のがんに限って、
統計的に有意であるとの結果が報告されました。
これは初めて直接の疫学データの比較において、
CTによる発がんリスクを計算したものです。
それを更に大規模に検証したのが、
2013年に発表されたオーストラリアの疫学データです。
オーストラリアにおいて、
1985年時点で0~19歳であったか、
1985年~2005年の間に生まれた、
1090万人あまりのお子さんを対象とし、
そのうち0~19歳でCT検査を施行された、
68万人あまりのその後の経過を、
CT未施行群と比較して、
CT検査後1年経過以降に、
がんを発症するリスクを検証しています。
CT検査施行群の平均観察期間は9.5年で、
論文発表後も観察は継続中です。
CT検査の平均被曝線量は、
4.5ミリシーベルトですから、
比較的低線量の検査が行なわれています。
経過観察中に60674例のがんが報告され、
そのうち3150例がCT検査施行群です。
全てのがんの発症の確率は、
CT検査を施行したお子さんでは、
有意に1.24倍増加していました。
この発がんリスクの上昇は、
CTの撮影回数が多いほど増加しており、
放射線量との間に用量依存性が成立しています。
CT検査によるその後の発がんリスクは、
その検査時の年齢が低いほど、
高い傾向にあり、
1~4歳時の検査では、
その後のリスクは1.35倍と最も上昇していました。
この研究で注目すべき点は、
この発がんリスクの上昇が、
白血病や脳腫瘍ばかりでなく、
消化器系のがんや女性器由来のがん、皮膚がんや甲状腺がんなど、
広範な種類のがんで認められている、
という点です。
これは初めて得られた知見です。
観察の範囲で、
608例のがんがCTの被曝により発症したと考えられ、
その内訳は脳腫瘍が147例、
48例が白血病や骨髄組織由来のがん、
57例がリンパ組織由来で、
356例がそれ以外の固形がんでした。
発がんリスクの上昇は、
CT検査後1年で既に認められ、
2007年までの解析において、
年間10万人当たり9.38人のがんが、
CT検査により過剰に発症する、
という頻度となっています。
これは生涯のリスクではなく、
患者さんの最高齢はまだ40代ですから、
今後また修正される可能性が残っています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23694687/
今回の研究はアメリカにおいて、
2023年に施行されたと推計されるCT検査により、
将来的にがんの患者が放射線被曝の影響で、
どの程度増えるかを数理モデルにより推測したものです。
2023年にアメリカ全土で、
6151万人の患者に9300万件のCT検査が施行されたと推計されていて、
これらの検査の部位や線量、年齢性別などの情報より、
将来的に103000件の放射線誘発がんが発生すると想定されました。
これは将来的に予測されるがんの罹患数のうち、
その5%に相当することになります。
予測されるがんのうち、
最も多かったのは肺がんで22400件、
大腸がんが8700件、白血病が7900件、膀胱がんが7100件、
などとなっていました。
今回は数理モデルによる推計で、
元になっているデータは原爆の被ばく者や、
原発施設などの従事者のものを元にしている部分が大きい、
という点には注意が必要ですが、
特に若年齢で行われるCT検査が、
僅かながら将来的ながんのリスクとなり、
現行のようにCT検査が多数行われている状況では、
その累積は全がんの5%と、
決して無視出来ない比率になり得る、
という知見は医療者にとっても患者にとっても、
注意するべき情報であることは間違いがなく、
今後のCT検査の適正使用について、
より実際的な指針の作成に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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