コーヒーを飲むタイミングと生命予後
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は保育園の健診と産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

European Heart Journal誌に2025年1月8日付で掲載された、
コーヒーを飲むタイミングが、
その健康効果に与える影響についての論文です。
分かり易いテーマなので、
しばしばネット記事などで紹介されている知見の、
元になっているものです。
コーヒーは健康に良い飲み物として、
今では世界中に認知をされていて、
国内外の健康についてのガイドラインでも、
1日3から4杯くらいまでのコーヒーを飲む習慣は、
健康に良い習慣として推奨をされています。
コーヒーを適度に飲むことは、
健康寿命を延ばし、
糖尿病や心血管疾患、肝臓病などのリスクを低下させることが、
これまでの多くの大規模な疫学データによって実証をされています。
ただ、1日5杯を超えるようなコーヒーの摂取は、
問題がないとする報告がある一方で、
若干の健康上のリスクを指摘する意見もあって、
その有効性は専門家の間でも一致していません。
食事のような生活習慣は、
その時間帯によっても有効性が異なる、
という意見があります。
コーヒーのようにカフェインを含む飲み物では、
その覚醒効果や心臓への刺激作用から、
飲む時間帯によって、
身体への影響が異なる、
という可能性は否定出来ないところです。
ただ、それについての検証は、
これまであまりされては来ませんでした。
今回の研究はアメリカの大規模な健康調査のデータを活用することで、
コーヒーを飲むタイミングと、
その健康効果との関連を検証しているものです。
対象となっているのは、
2つの大規模な健康調査の対象となっている、
トータル42188名のアメリカの一般住民です。
コーヒーを飲むタイミングは、
午前4時から午後0時、午後0時から午後5時、午後5時から午前4時、
という3つに区分して聞き取りが行われていて、
午前4から午後0時に、
専らコーヒーを飲んでいる人を「朝型(morning-type)」と規定し、
2つ以上の区分に分散してコーヒーを飲んでいる人を、
「分散型(all-day-type)」と規定して、
その区分と健康効果との関連を検証しています。
中間値で9.8年の経過観察を施行して、
コーヒー以外の因子を補正して計算したところ、
朝型でコーヒーを飲んでいる人は、飲まない人と比較して、
総死亡のリスクが12%(95%CI:0.81から0.96)、
心血管疾患による死亡のリスクが31%(95%CI:0.55から0.87)、
それぞれ有意に低下していました。
一方で分散型で1日を通してコーヒーを飲んでいる人では、
総死亡のリスクも、心血管疾患による死亡のリスクも、
低い傾向は認められたものの、
有意ではありませんでした。
癌による死亡のリスクについては、
コーヒーの飲み方には関わらず、
明確な低下は認められませんでした。
それを図示したものがこちらになります。

ここでコーヒーの摂取量と総死亡リスクとの関係を、
朝型と分散型とに分けて検討してみます。
すると朝型で、
毎日1から2杯コーヒーを飲む人は、
飲まない人と比較して、
16%(95%CI:0.73から0.96)、
毎日2から3杯飲む人は、
29%(95%CI:0.60から0.86)、
3杯を超えて飲む人は、
21%(95%CI:0.65から0.96)、
総死亡のリスクがそれぞれ有意に低下していました。
一方で分散型の人では、
摂取量に関わらず、
総死亡リスクの有意な低下は認められませんでした。
それを図示したものがこちらになります。

このように、
今回の研究においては、
早朝から午前中にコーヒーを飲んだ方が、
午後以降に飲む場合と比較して、
生命予後への効果が強く認められました。
これが事実として、
何故飲む時間によって、
コーヒーの健康効果に差があるのでしょうか?
上記文献の著者らは考察で、
以下2つの仮説を提唱しています。
その1つは特に夜にコーヒーを飲むことにより、
その覚醒作用から体内時計が乱され、
それがコーヒーの健康作用を相殺してしまうのではないか、
というものです。
もう1つの仮説は、
健康上のリスクとなる炎症性のマーカーやサイトカインなどが、
主に朝に上昇して病気の原因となる可能性があり、
朝にコーヒーを飲むことによって、
原因となる炎症を、
効率的に抑えられるのではないか、
というものです。
個人的にはコーヒーは、
好きな時間に楽しみで飲めばそれでいいのではないか、
というように思いますが、
モーニングコーヒーは意外に健康的、
という今回の知見は、
それはそれとして興味深いもので、
今後の更なる検証に期待をしたいと思います。
ただ、朝型という記載は誤解を招くもので、
実際には午前中のうちに、
と言う意味であることは最後に強調しておきたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は保育園の健診と産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

European Heart Journal誌に2025年1月8日付で掲載された、
コーヒーを飲むタイミングが、
その健康効果に与える影響についての論文です。
分かり易いテーマなので、
しばしばネット記事などで紹介されている知見の、
元になっているものです。
コーヒーは健康に良い飲み物として、
今では世界中に認知をされていて、
国内外の健康についてのガイドラインでも、
1日3から4杯くらいまでのコーヒーを飲む習慣は、
健康に良い習慣として推奨をされています。
コーヒーを適度に飲むことは、
健康寿命を延ばし、
糖尿病や心血管疾患、肝臓病などのリスクを低下させることが、
これまでの多くの大規模な疫学データによって実証をされています。
ただ、1日5杯を超えるようなコーヒーの摂取は、
問題がないとする報告がある一方で、
若干の健康上のリスクを指摘する意見もあって、
その有効性は専門家の間でも一致していません。
食事のような生活習慣は、
その時間帯によっても有効性が異なる、
という意見があります。
コーヒーのようにカフェインを含む飲み物では、
その覚醒効果や心臓への刺激作用から、
飲む時間帯によって、
身体への影響が異なる、
という可能性は否定出来ないところです。
ただ、それについての検証は、
これまであまりされては来ませんでした。
今回の研究はアメリカの大規模な健康調査のデータを活用することで、
コーヒーを飲むタイミングと、
その健康効果との関連を検証しているものです。
対象となっているのは、
2つの大規模な健康調査の対象となっている、
トータル42188名のアメリカの一般住民です。
コーヒーを飲むタイミングは、
午前4時から午後0時、午後0時から午後5時、午後5時から午前4時、
という3つに区分して聞き取りが行われていて、
午前4から午後0時に、
専らコーヒーを飲んでいる人を「朝型(morning-type)」と規定し、
2つ以上の区分に分散してコーヒーを飲んでいる人を、
「分散型(all-day-type)」と規定して、
その区分と健康効果との関連を検証しています。
中間値で9.8年の経過観察を施行して、
コーヒー以外の因子を補正して計算したところ、
朝型でコーヒーを飲んでいる人は、飲まない人と比較して、
総死亡のリスクが12%(95%CI:0.81から0.96)、
心血管疾患による死亡のリスクが31%(95%CI:0.55から0.87)、
それぞれ有意に低下していました。
一方で分散型で1日を通してコーヒーを飲んでいる人では、
総死亡のリスクも、心血管疾患による死亡のリスクも、
低い傾向は認められたものの、
有意ではありませんでした。
癌による死亡のリスクについては、
コーヒーの飲み方には関わらず、
明確な低下は認められませんでした。
それを図示したものがこちらになります。

ここでコーヒーの摂取量と総死亡リスクとの関係を、
朝型と分散型とに分けて検討してみます。
すると朝型で、
毎日1から2杯コーヒーを飲む人は、
飲まない人と比較して、
16%(95%CI:0.73から0.96)、
毎日2から3杯飲む人は、
29%(95%CI:0.60から0.86)、
3杯を超えて飲む人は、
21%(95%CI:0.65から0.96)、
総死亡のリスクがそれぞれ有意に低下していました。
一方で分散型の人では、
摂取量に関わらず、
総死亡リスクの有意な低下は認められませんでした。
それを図示したものがこちらになります。

このように、
今回の研究においては、
早朝から午前中にコーヒーを飲んだ方が、
午後以降に飲む場合と比較して、
生命予後への効果が強く認められました。
これが事実として、
何故飲む時間によって、
コーヒーの健康効果に差があるのでしょうか?
上記文献の著者らは考察で、
以下2つの仮説を提唱しています。
その1つは特に夜にコーヒーを飲むことにより、
その覚醒作用から体内時計が乱され、
それがコーヒーの健康作用を相殺してしまうのではないか、
というものです。
もう1つの仮説は、
健康上のリスクとなる炎症性のマーカーやサイトカインなどが、
主に朝に上昇して病気の原因となる可能性があり、
朝にコーヒーを飲むことによって、
原因となる炎症を、
効率的に抑えられるのではないか、
というものです。
個人的にはコーヒーは、
好きな時間に楽しみで飲めばそれでいいのではないか、
というように思いますが、
モーニングコーヒーは意外に健康的、
という今回の知見は、
それはそれとして興味深いもので、
今後の更なる検証に期待をしたいと思います。
ただ、朝型という記載は誤解を招くもので、
実際には午前中のうちに、
と言う意味であることは最後に強調しておきたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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