玄米のヒ素汚染リスク

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
玄米のヒ素汚染.jpg
Risk Analysis誌に2025年付で掲載された、
玄米と白米の無機ヒ素含有量についての論文です。

ヒ素というのは、
地殻に多く分布する元素で、
土や水などに多く含まれ、
体内にも微量ながら存在しています。
土や水に含まれるヒ素は無機ヒ素ですが、
魚介類や海藻などには有機ヒ素という形で存在しています。

ただ、大量のヒ素を一度に摂ると、
急性の中毒症状が起こり、
下痢や嘔吐、神経症状や内臓障害を来し、
最悪は死に至ります。

また慢性に多くのヒ素を摂取していると、
膀胱癌や皮膚癌、肺癌の発症リスクとなることや、
高血圧や心疾患、糖尿病などのリスク増加に繋がることも分かっています。

玄米は精米されていない状態の米で、
白米より多くの食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素を含み、
その糖質の吸収もより緩やかであることから、
白米より健康的で、
ダイエットや糖尿病予防にも、
有効性が高いと考えられています。

そうした利点のため、
白米より玄米を、
主食として好む人も増加しています。

しかし、注意が必要な点は、
米は元々土由来のヒ素を多く含む食品で、
精米しない玄米は、
白米より多くのヒ素を含有している、
という点にあります。

それでは、白米と比較して玄米には、
どの程度多くのヒ素が含まれているのでしょうか?

比較的よく引用される、
2008年のMehargらの報告によると、
白米のヒ素含有量が1キロ当たり0.28μgであったのに対して、
玄米のそれは0.44μgで、
玄米のヒ素含有量は白米より、
57%高値となっていました。

データは測定された地域や方法によってもかなりのばらつきがあり、
一概には言えませんが、
土壌中のヒ素は米ぬかに蓄積し易いため、
玄米においてその含有量がかなり高まることは間違いがありません。

上記文献の著者らが特に強調しているのは、
生後2歳くらいまでの乳幼児期における玄米の摂取で、
ヒ素に対する身体の感受性の高い乳幼児においては、
その摂取により注意を払うことが必要ではないか、
という主張になっています。

欧米の論調はどちらかと言うと、
「アジア人は毒物の入った危険な食品を好んでいる」
というような、
やや偏見に満ちた差別的なニュアンスがあり、
それを鵜呑みにするのもどうか、
と思うところがあります。

一方で、農水省などの旗振りで、
日本でも食品残留ヒ素についての研究は行なわれていますが、
こちらは「安全なので食べてもらって心配ありません」と、
検査結果がどうあれ、
安心安全を強調する内容となっていて、
それも如何なものかな、
と思わなくはありません。

勿論、
現行玄米に含まれている程度の無機ヒ素が、
それほど強い健康への悪影響を持つとは考えにくいのですが、
日本においては主食でもあり、
玄米食は健康のために推奨され、
健康のために白米から玄米への変更を、
している人も多い現状を考えると、
土壌により差のあるヒ素の含有量は、
もっと広く検証されるべきだと思いますし、
それを認識した上で、
特にお子さんの食事については、
もう少し配慮をする必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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