「片思い世界」

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
片思い世界.jpg
傑作恋愛映画「花束みたいな恋をした」の、
坂元裕二さんと土井裕泰監督コンビの新作映画が、
今ロードショー公開されています。

今回は家族ではないのに、
古い家に3人だけで暮らす女性を、
広瀬すずさん、杉咲花さん、清原果耶さんが演じ、
不思議な「片思いの世界」の感動的な物語が展開されます。

これは大林宜彦さんの映画に近い感じ。
かなり意識はしていると思います。
途中で背景を昔の特撮合成みたいにしたカットがあるのですが、
あれは露骨に大林映画のオマージュだと思います。

ただ、大林さんの映画はかなり独善的に、
大林さんの思いを強烈に押し出す感じが強いのですが、
この映画はそこまで押しの強い感じではなくて、
様々な観客の感動のツボを、
かなり冷静に計算して作られているような気がします。

これはかなり良かったですね。

内容も一見平凡な設定に見えて、
かなりオリジナルティがあると思いますし、
主役の3人も個々の芝居もとても良い上に、
何より3人のアンサンブルが抜群でした。

1点、「悪」を1人の人間に体現させるところが、
正直危ういな、という印象はありました。
今の時代はこうした描き方をすると、
非難を浴びがちだと思うのですが、
多分坂元さんはそんなことは分かった上で、
こういう方向性にしたかったのかな、
というようにも思いました。

これは設定はファンタジー的なのですが、
暴力によって分断された世界の話ですよね。
分断された世界が共存していて、
いつかはそれが一体になることを夢見ながら、
今は「片思い」を伝えつつ、
自分達の世界を精一杯生きていく、
というお話なのだと理解しました。
主人公達の「無力さ」というのは、
戦争などの暴力行為を、
テレビで観ているだけの私達の無力さなのです。

正直坂元さんの作品としては、
完成度はそれほど高いものではないと思うのですが、
それだけに坂元さんの思いのようなものが、
結構ありのままに示されている、
という感じがありますし、
余白のある物語になっていて、
観客がそれぞれの立場で、
楽しめるような多様性のある作品になっていると思います。

何より3人の旬な俳優さんの演技が、
見応えがあって素晴らしく、
少しウキウキする感じで映画館を後にすることが出来ました。

お勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい、

石原がお送りしました。

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