M&Oplaysプロデュース「鎌塚氏、震えあがる」

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
鎌塚氏、震えあがる.jpg
倉持裕さんが作演出を勤め、
三宅弘城さんが完璧なる執事の鎌塚氏を演じる、
シリーズの第7弾が、
ゲストに天海祐希さんを迎えるという豪華版で、
今三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演されています。

倉持裕さんは当代の台詞劇の書き手としては、
僕は最も好きな作家の1人です。

初期は前衛劇的なものが多くて、
「ワンマンショー」はその代表作ですが、
その後は娯楽劇から、コメディ、
生粋の台詞のみで情景を語る台詞劇まで、
極めて多彩な作品を発表されています。

中では「磁場」という作品が、
三島由紀夫の戯曲に極めて近い台詞劇の傑作で、
また最近の「リムジン」という作品は、
岩松了さんや松尾スズキさんの系譜上にある、
小劇場的台詞劇を、
より藝術性と社会性を高めて結晶化したような、
凄味のある作品で印象に残っています。

その一方で肩を張らずに楽しめる、
娯楽味の強い作品も量産していて、
その代表的な人気作と言えるのが、
「完璧なる執事」鎌塚氏を、
三宅弘城さんが演じるシリーズです。

こちらは三宅弘城さんが、
自分を徹底して律して、
主人に仕える執事という、
今の世の中の価値観と、
正反対とも思える役柄を演じ、
倉持さんの盟友の玉置孝匡さんが、
こちらはいい加減な今風の執事を、
ともさかりえさんが、
お互いに密かに思いを寄せる同僚の執事を演じる、
というところはシリーズで同一で、
そこに主人役のゲストが加わって、
新たなお屋敷で問題が起こり、
という趣向になっています。
ラスト近くでキャストが唐突にカラオケで1曲歌う、
という歌唱シーンがあるのも定番です。

シリーズはこれまでに3本くらい観ているのですが、
正直倉持さんの作品としては、
今一つという印象がありました。

いつも5、6人くらいの座組になるのですが、
お屋敷を舞台にしたコメディとしては、
人数が少なくてお話に無理のある感じがするのですね。
起こる事件も結局はいつも小粒なものなので、
その点にも物足りなさが残りました。

今回の作品は座組は7人ですが、
女主人に天海祐希さん、
その親戚の貴族に藤井隆さんと羽瀬川なぎさん、
近隣のお金持ちに池谷のぶえさんという、
相当重量級の布陣で、
内容も取り憑かれ系のホラーですから、
悪霊と天海さんが対決するという時点で、
人数が少なくても充分なスケール感があります。

天海さんのオーラは勿論のこと、
池谷のぶえさんも、
リミッターを外したような怪演で、
2人の人間離れ(誉め言葉です)した演技を観ているだけで、
充分元は取ったという気分になります。

おまけにラストの定番のカラオケは、
ユーミンを、天海さんの生歌で聴けるという、
サービスまで用意されています。

これはまことに素敵でした。

この作品は多分、
「ハリー・ポッターと呪いの子」の、
影響を受けているのだと思うのですね。
本家と比べると勿論小粒で、
ビジュアルな効果もあまりありませんが、
キャストはむしろこちらの方が数段充実しています。

更には結構詩的な台詞が多くて、
倉持さんとしても、かなり力がはいったのね、
という印象がありました。
三島由紀夫の通俗戯曲、
「黒蜥蜴」辺りを彷彿とさせる感じがありましたね。

三島ばりの台詞を書けるのは、
当代では倉持さんだけなのです。

そんな訳で個人的には実際に観たこのシリーズの中では、
最も楽しめた1本で、
大変贅沢な時間を過ごすことが出来ました。

ご興味のある方は是非。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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