コレステロール値と認知症リスク
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は介護保険の審査会などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry誌に、
2025年3月25日付で掲載された、
LDLコレステロール値と認知症リスクとの関連についての論文です。
LDLコレステロールは悪玉コレステロールとも通称され、
その数値が高いことが、
心臓病などのリスクになることが知られています。
心筋梗塞後の患者さんにおいて、
主にスタチンと呼ばれる種類の、
コレステロール降下剤を使用することにより、
その再発予防効果のあることが確認され、
LDLコレステロールの目標値を設定して、
その数値以下にコントロールすることが、
動脈硬化の進行予防のために、
重要であることが広く認知されています。
ただ、認知症とLDLコレステロール値との関係については、
相反するデータもあって、
まだ結論が出ていません。
古くからコレステロールが低過ぎると、
認知症になり易い、という意見があり、
アメリカのFDAもコレステロール低下のリスクを、
指摘する見解を公表しています。
2023年のNeurology誌に発表された論文では、
LDLコレステロールが高くても低くても、
認知症のリスクは増加し、
スタチンの使用もそのリスクに影響した、
という内容が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37793911/
一方でコレステロールを強力に低下させる作用を持つ、
新薬の臨床試験のデータでは、
LDLコレステロール値を30mg/dL程度という、
非常に低いレベルまで薬剤で低下させても、
認知症のリスクの増加は見られなかった、
と報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30403574/
このように、LDLコレステロール値と認知症との関係は、
実証されているとは言えないのです。
今回の研究は韓国の11の大学病院の医療データを活用して、
LDLコレステロール値と認知症との関連を検証しているものです。
対象はLDLコレステロールが130mg/dLを超える高値群379006名と、
70mg/dL未満の低値群192213名で、
他の因子をマッチングさせて、
108908名のペアを作り、比較検証しています。
その結果、
LDLコレステロール低値群は高値群と比較して、
トータルな認知症のリスクが26%(95%CI:0.70から0.78)、
アルツハイマー型認知症のリスクが28%(95%CI:0.67から0.77)、
それぞれ有意に低下していました。
一方でLDLコレステロールが55mg/dL未満と、
より低い群を抽出して、高値群と比較すると、
トータルは認知症のリスクは18%(95%CI:0.77から0.88)、
アルツハイマー型認知症のリスクも18%(95%CI:0.76から0.89)、
の低下に留まっていました。
そして、LDLコレステロールが30mg/dL未満の群では、
高値群と比較して、
有意な認知症リスクの低下は認められませんでした。
スタチンによる治療は、
未治療と比較して、
やや認知症リスクを低下させる傾向は示したものの、
それほど明確な違いはありませんでした。
今回のデータでは、
スタチンの使用の有無には関わらず、
LDLコレステロールが低いことが、
認知症リスクの低下に結び付いていました。
ただ、その効果が最大となるのは、
LDLコレステロールが70mg/dLから50mg/dLくらいまでで、
30mg/dLを下回るような低下は、
認知症リスクの低下に有効ではないと考えられました。
現状行われている、
心血管疾患に対してのコレステロール降下療法は、
認知症予防にも一定の有効性があると、
そう考えて大きな間違いはないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は介護保険の審査会などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry誌に、
2025年3月25日付で掲載された、
LDLコレステロール値と認知症リスクとの関連についての論文です。
LDLコレステロールは悪玉コレステロールとも通称され、
その数値が高いことが、
心臓病などのリスクになることが知られています。
心筋梗塞後の患者さんにおいて、
主にスタチンと呼ばれる種類の、
コレステロール降下剤を使用することにより、
その再発予防効果のあることが確認され、
LDLコレステロールの目標値を設定して、
その数値以下にコントロールすることが、
動脈硬化の進行予防のために、
重要であることが広く認知されています。
ただ、認知症とLDLコレステロール値との関係については、
相反するデータもあって、
まだ結論が出ていません。
古くからコレステロールが低過ぎると、
認知症になり易い、という意見があり、
アメリカのFDAもコレステロール低下のリスクを、
指摘する見解を公表しています。
2023年のNeurology誌に発表された論文では、
LDLコレステロールが高くても低くても、
認知症のリスクは増加し、
スタチンの使用もそのリスクに影響した、
という内容が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37793911/
一方でコレステロールを強力に低下させる作用を持つ、
新薬の臨床試験のデータでは、
LDLコレステロール値を30mg/dL程度という、
非常に低いレベルまで薬剤で低下させても、
認知症のリスクの増加は見られなかった、
と報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30403574/
このように、LDLコレステロール値と認知症との関係は、
実証されているとは言えないのです。
今回の研究は韓国の11の大学病院の医療データを活用して、
LDLコレステロール値と認知症との関連を検証しているものです。
対象はLDLコレステロールが130mg/dLを超える高値群379006名と、
70mg/dL未満の低値群192213名で、
他の因子をマッチングさせて、
108908名のペアを作り、比較検証しています。
その結果、
LDLコレステロール低値群は高値群と比較して、
トータルな認知症のリスクが26%(95%CI:0.70から0.78)、
アルツハイマー型認知症のリスクが28%(95%CI:0.67から0.77)、
それぞれ有意に低下していました。
一方でLDLコレステロールが55mg/dL未満と、
より低い群を抽出して、高値群と比較すると、
トータルは認知症のリスクは18%(95%CI:0.77から0.88)、
アルツハイマー型認知症のリスクも18%(95%CI:0.76から0.89)、
の低下に留まっていました。
そして、LDLコレステロールが30mg/dL未満の群では、
高値群と比較して、
有意な認知症リスクの低下は認められませんでした。
スタチンによる治療は、
未治療と比較して、
やや認知症リスクを低下させる傾向は示したものの、
それほど明確な違いはありませんでした。
今回のデータでは、
スタチンの使用の有無には関わらず、
LDLコレステロールが低いことが、
認知症リスクの低下に結び付いていました。
ただ、その効果が最大となるのは、
LDLコレステロールが70mg/dLから50mg/dLくらいまでで、
30mg/dLを下回るような低下は、
認知症リスクの低下に有効ではないと考えられました。
現状行われている、
心血管疾患に対してのコレステロール降下療法は、
認知症予防にも一定の有効性があると、
そう考えて大きな間違いはないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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