「少し前から、何かがずっと震えていた。スマホの振動なのかもしれないし、私の身体からだがぶるぶるしているだけなのかもしれなかった。」(作・演出:本谷有希子)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
本谷有希子新作.jpg
本谷有希子さんの新作公演が、
上田遥さんの1人芝居として、
代田橋のCHUBBYというカフェで、
3日で5回のみ上演されました。

本谷有希子さんのお芝居は、
演劇をメインでされていた時期には、
結構まめに足を運んでいました。
出来にはかなり波のある感じで、
オヤオヤという感じのお芝居もありましたが、
松永玲子さんが主役を演じた「遭難、」は、
後から変な再演があったので印象が悪くなってしまいましたが、
初演は大傑作であったと思います。
松永さんは大好きな女優さんですが、
他のどのお芝居より、
「遭難、」の演技は絶品でした。

最近は小説の方に軸足を移していて、
こちらもなかなかどうして、
冴えている作品が多いのですが、
演劇の純粋な新作がないのは寂しいところです。

今回の作品は、
上演に至るまでには色々とあったようなのですが、
ナカゴーでの怪演なども印象的だった上田遥さんが、
youtubeでフォローしている孤独な女性の動画を、
タブレット端末を手にしながら実況する、
という趣向の1時間強くらいの小品で、
カフェ演劇というジャンルに相応しいスケールの、
なかなか完成度の高い作品で、
演劇のミニマルな楽しみに浸ることが出来ました。

上田さんはビジュアルはかなり違いがあるのですが、
その語り口を聞いていると、
作者の本谷さんが透けて見えて来るような感じがあり、
そのキャスティングには「なるほど」という感じがありました。
それもただ語るという感じではなくて、
声色も使い分けて多くの人物を描写し、
肉体を使った表現も交えながらの熱演で、
上田さんの魅力が十全に表現されているのはさすが、
という感じがありました。

ただ、ちょっと残念に感じたのはその内容で、
満員電車で他人の体を押し付けられて辛い、
というような情景を延々と描写するのですが、
これが本当に本谷さんが、
今どうしても言いたい、書きたいと思うことなのかしら、
と思うと、
何となくモヤモヤとした気分になってしまいました。

上演には本谷さん自身が立ち会って、
説明的なこともしてくれましたし、
とても和気あいあいとした雰囲気で、
これぞカフェ演劇という気分が醸成されていました。

個人的にはとても楽しめましたし、
またこうした企画など是非して欲しいな、
という思いに満たされた1時間余でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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