「アノーラ」

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アノーラ.jpg
米アカデミー作品賞と、
カンヌ国際映画祭のパルムドールに輝いた、
昨年を代表するアメリカ映画ですが、
油断しているうちにもう上映は終了しそうなので、
慌てて映画館に足を運びました。

ニューヨークのストリップダンサーのアノーラが、
ロシアの大富豪の道楽息子に気に入られ、
ラスベガスでその場の勢いで結婚したことから、
大富豪とその配下の人々を巻き込んで、
大騒動になるという物語ですが、
ラストはアメリカンニューシネマを彷彿とさせる、
苦く切ないラブシーン(?)に帰着します。

大体カンヌのグランプリは、
変態的で異常な映画が獲得し、
アカデミー作品賞は、
その時代に良しとされるメッセージが、
ラストに提示される映画が獲得するものですが、
両方を獲得したこの作品は、
描かれる退廃的な世界と、
主人公の破天荒な性格、
ロシアの大富豪が世界のヒエラルキーのトップに君臨するという、
屈折したやや嗜虐的な世界観が、
ヨーロッパ映画人に受け、
これからのアメリカは、
マイノリティが悲惨な現実の中で、
お互いの傷を舐め合うしかない、
というラストのメッセージ(?)が、
基本的には反トランプの、
アメリカ映画人に受けたのではないか、
というように感じました。

道楽息子の若旦那が売れっ子遊女を身請けして、
親から勘当される、
というようなお話ですから、
文楽や歌舞伎でもお馴染みの設定で、
日本の古典であれば、
2人で心中するか、若旦那が遊女を惨殺するか、
というような流れになるところですが、
同じ悲劇ではあっても今のアメリカのお話なので、
それとはまた別個の展開を、
物語は辿って行きます。

ラストは場面としてはとても印象的に仕上がっているのですが、
正直ニューシネマ的ラストとしては、
甘過ぎるという感じがしますし、
もっと捻りがあっても良いし、
むしろ意表を突いたハッピーエンドでもいいのに、
というようなモヤモヤは感じました。

そんな訳でかなり好き嫌いはあり、
日本人受けはし難い感じの漂う作品ですが、
映画としてのクオリティは非常に高くて、
主役を含めてキャラの立った人物像も面白く、
演技も上手く見応えがあり、
映像や編集、音楽などの技術レベルもなかなかです。

アメリカンニューシネマ世代としては、
何か懐かしい感じもする一本で、
観て損はない作品ではあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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