妊娠高血圧症とその後の脳神経疾患との関連性
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Neurology誌に2024年12月23日付でウェブ掲載された、
妊娠中の高血圧症と、
その後の脳神経症状との関連についての論文です。
正常妊娠では妊娠中には血圧は低下しますが、
その一方で妊娠の合併症として、
妊娠中に血圧が上昇する、
妊娠高血圧症候群が発症することがあります。
これは胎盤形成時の血管の形成不全により、
昇圧物質が母体血に入ることなどが原因と考えられています。
妊娠高血圧症候群の中には、
蛋白尿や痙攣発作などを伴い重症化する事例があり、
これを妊娠高血圧腎症と呼んでいます。
妊娠高血圧腎症においては、
痙攣発作や脳浮腫などの脳の異常を伴うことがありますが、
通常それは一時的なもので、
出産後には改善すると考えられています
しかし、脳のMRI検査などを用いた研究によると、
脳の虚血性変化などの形態的な異常が、
出産後も長期に渡り残存する、
という結果が報告されています。
更に現時点では小規模な観察研究のデータのみですが、
妊娠高血圧腎症の罹患後に、
認知機能の低下が、
長期に渡って認められたとする報告もあります。
これまでのメタ解析などの研究結果によると、
妊娠高血圧症候群の罹患後に、
脳卒中や脳血管性認知症のリスクが高まる、
という知見が得られています。
これは妊娠高血圧症候群によって生じた、
妊娠された女性の脳ダメージが、
長期に渡ってその後の人生に影響を与える、
という可能性を示しているものです。
それでは、脳卒中や認知症以外の脳神経系の異常も、
妊娠高血圧症候群の罹患後には、
生じる可能性があるのでしょうか?
そうした点については、
これまであまり信頼のおけるデータが存在していませんでした。
そこで今回の研究では、
国民総背番号制を取っているスウェーデンの医療データを活用して、
この問題の検証を行っています。
初回の妊娠時に平均28.5歳であった、
妊娠女性トータル648358名のデータをまとめて解析したところ、
妊娠高血圧症候群に罹患後には、
10から15年の観察期間において、
片頭痛、その他の症候性頭痛、てんかん、睡眠障害、
精神疲労を併せたリスクが、
有意に増加していることが確認されました。
内訳としては、
妊娠高血圧症の場合1.27倍(95%CI:1.12から1.45)、
妊娠高血圧腎症の場合1.32倍(95%CI:1.22から1.42)、
妊娠中の痙攣発作(子癇)の場合1.70倍(95%CI:1.16から2.50)、
それぞれ有意に増加していました。
精神症状の中では、
妊娠中の痙攣発作とその後のてんかんとの関連が最も高く、
妊娠中の痙攣発作後には、
てんかんのリスクが5.31倍(95%CI:2.85から9.89)、
有意に増加していました。
このように、
妊娠高血圧症候群に罹患後には、
多くの脳疾患のリスクが高まる可能性があり、
特に妊娠中の痙攣発作は、
その後のてんかんのリスクを5倍以上高める、
と推計されました。
この問題はまだ結論が出ているものではなく、
そのメカニズムを含めて今後も検証が必要ですが、
妊娠高血圧症候群を経験した妊娠女性の方は、
今後より慎重な経過観察が必要であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Neurology誌に2024年12月23日付でウェブ掲載された、
妊娠中の高血圧症と、
その後の脳神経症状との関連についての論文です。
正常妊娠では妊娠中には血圧は低下しますが、
その一方で妊娠の合併症として、
妊娠中に血圧が上昇する、
妊娠高血圧症候群が発症することがあります。
これは胎盤形成時の血管の形成不全により、
昇圧物質が母体血に入ることなどが原因と考えられています。
妊娠高血圧症候群の中には、
蛋白尿や痙攣発作などを伴い重症化する事例があり、
これを妊娠高血圧腎症と呼んでいます。
妊娠高血圧腎症においては、
痙攣発作や脳浮腫などの脳の異常を伴うことがありますが、
通常それは一時的なもので、
出産後には改善すると考えられています
しかし、脳のMRI検査などを用いた研究によると、
脳の虚血性変化などの形態的な異常が、
出産後も長期に渡り残存する、
という結果が報告されています。
更に現時点では小規模な観察研究のデータのみですが、
妊娠高血圧腎症の罹患後に、
認知機能の低下が、
長期に渡って認められたとする報告もあります。
これまでのメタ解析などの研究結果によると、
妊娠高血圧症候群の罹患後に、
脳卒中や脳血管性認知症のリスクが高まる、
という知見が得られています。
これは妊娠高血圧症候群によって生じた、
妊娠された女性の脳ダメージが、
長期に渡ってその後の人生に影響を与える、
という可能性を示しているものです。
それでは、脳卒中や認知症以外の脳神経系の異常も、
妊娠高血圧症候群の罹患後には、
生じる可能性があるのでしょうか?
そうした点については、
これまであまり信頼のおけるデータが存在していませんでした。
そこで今回の研究では、
国民総背番号制を取っているスウェーデンの医療データを活用して、
この問題の検証を行っています。
初回の妊娠時に平均28.5歳であった、
妊娠女性トータル648358名のデータをまとめて解析したところ、
妊娠高血圧症候群に罹患後には、
10から15年の観察期間において、
片頭痛、その他の症候性頭痛、てんかん、睡眠障害、
精神疲労を併せたリスクが、
有意に増加していることが確認されました。
内訳としては、
妊娠高血圧症の場合1.27倍(95%CI:1.12から1.45)、
妊娠高血圧腎症の場合1.32倍(95%CI:1.22から1.42)、
妊娠中の痙攣発作(子癇)の場合1.70倍(95%CI:1.16から2.50)、
それぞれ有意に増加していました。
精神症状の中では、
妊娠中の痙攣発作とその後のてんかんとの関連が最も高く、
妊娠中の痙攣発作後には、
てんかんのリスクが5.31倍(95%CI:2.85から9.89)、
有意に増加していました。
このように、
妊娠高血圧症候群に罹患後には、
多くの脳疾患のリスクが高まる可能性があり、
特に妊娠中の痙攣発作は、
その後のてんかんのリスクを5倍以上高める、
と推計されました。
この問題はまだ結論が出ているものではなく、
そのメカニズムを含めて今後も検証が必要ですが、
妊娠高血圧症候群を経験した妊娠女性の方は、
今後より慎重な経過観察が必要であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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