バターと植物油の生命予後への影響
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年3月6日付で掲載された、
バターと植物油の健康影響についての論文です。
私が研修医の頃(随分と昔になります)の栄養指導は、
食事の脂肪を減らすことに、
重点が置かれていました。
その組成(中身)についてはあまり触れられず、
コレステロールなどの脂肪を減らすことが、
重視されていたように記憶しています。
ただ、その後コレステロールの食事からの摂取量が、
必ずしも血液中のコレステロールを反映していない、
という知見や、
オリーブオイルを多く含む地中海ダイエットという、
ギリシャなどの伝統食が、
健康長寿に効果があるという知見などがあり、
食事の脂質を制限するのではなく、
その組成(中身)を変えることが、
健康のためには有効ではないか、
という考え方に変わりました。
脂肪の主体は脂肪酸という成分ですが、
その構造から飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸という、
2種類に分かれます。
このうち飽和脂肪酸をなるべく減らし、
不飽和脂肪酸をなるべく増やすことが、
動脈硬化に関連する病気の予防にためには、
有効であると考えられています。
バターの主体は飽和脂肪酸です。
一方でオリーブオイルや大豆油などの植物性油は、
不飽和脂肪酸が成分の主体です。
このことからは、
バターを減らしてオリーブオイルなどの植物油を増やすことが、
健康長寿のためには有効ではないか、
という推測が出来ます。
ただ、確かにバターを多く摂ると、
動脈硬化に関連する病気が増える、
というデータはあるものの、
2016年に発表された、
これまでの臨床研究のデータをまとめて解析した、
メタ解析と呼ばれる手法の論文では、
バターの健康への悪影響は、
殆ど認められない、
という相反する結果も得られています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0158118
バターが健康に悪いかどうか、という問題も、
まだ解決されているとは言えないのです。
今回の研究はアメリカで医療従事者を対象とした、
大規模な疫学研究のデータを活用して、
バターの摂取量と生命予後との関連、
またバターをオリーブオイルなどの植物油に変更した場合の、
健康影響について解析しているものです。
Nurses’ Health Study(1990-2023)、
Nurses’ Health Study II(1991-2023)、
Health Professionals Follow-up Study(1990-2023)という、
3つの大規模な疫学研究のデータを元にして、
221054名の33年に及ぶ経過観察から、
関連する因子を補正して解析したところ、
4分割したバターの摂取量が最も多い群は、
最も少ない群と比較して、
総死亡のリスクが15%(95%CI:1.08 から1.22)、
有意に増加していました。
その一方で、
キャノーラ油(菜種油)、大豆油、オリーブオイルなどの植物油を、
最も多く摂取していた群は、最も少ない群と比較して、
総死亡のリスクが16%(95%CI:0.79から0.90)、
こちらは有意に低下していました。
ここからの推計として、
10グラムのバターを同量の植物油に変更すると、
総死亡リスクは17%(95%CI:0.79から0.86)、
有意に低下すると計算されました。
食事の脂肪の組成を見直すことが、
生命予後の改善に繋がるという今回のデータはとても興味深く、
今後より検証が進むことを期待したいと思います。
長生きのためには、
なるべくバターのような飽和脂肪酸を減らし、
植物油を増やすことが、
1つの重要なポイントであるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年3月6日付で掲載された、
バターと植物油の健康影響についての論文です。
私が研修医の頃(随分と昔になります)の栄養指導は、
食事の脂肪を減らすことに、
重点が置かれていました。
その組成(中身)についてはあまり触れられず、
コレステロールなどの脂肪を減らすことが、
重視されていたように記憶しています。
ただ、その後コレステロールの食事からの摂取量が、
必ずしも血液中のコレステロールを反映していない、
という知見や、
オリーブオイルを多く含む地中海ダイエットという、
ギリシャなどの伝統食が、
健康長寿に効果があるという知見などがあり、
食事の脂質を制限するのではなく、
その組成(中身)を変えることが、
健康のためには有効ではないか、
という考え方に変わりました。
脂肪の主体は脂肪酸という成分ですが、
その構造から飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸という、
2種類に分かれます。
このうち飽和脂肪酸をなるべく減らし、
不飽和脂肪酸をなるべく増やすことが、
動脈硬化に関連する病気の予防にためには、
有効であると考えられています。
バターの主体は飽和脂肪酸です。
一方でオリーブオイルや大豆油などの植物性油は、
不飽和脂肪酸が成分の主体です。
このことからは、
バターを減らしてオリーブオイルなどの植物油を増やすことが、
健康長寿のためには有効ではないか、
という推測が出来ます。
ただ、確かにバターを多く摂ると、
動脈硬化に関連する病気が増える、
というデータはあるものの、
2016年に発表された、
これまでの臨床研究のデータをまとめて解析した、
メタ解析と呼ばれる手法の論文では、
バターの健康への悪影響は、
殆ど認められない、
という相反する結果も得られています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0158118
バターが健康に悪いかどうか、という問題も、
まだ解決されているとは言えないのです。
今回の研究はアメリカで医療従事者を対象とした、
大規模な疫学研究のデータを活用して、
バターの摂取量と生命予後との関連、
またバターをオリーブオイルなどの植物油に変更した場合の、
健康影響について解析しているものです。
Nurses’ Health Study(1990-2023)、
Nurses’ Health Study II(1991-2023)、
Health Professionals Follow-up Study(1990-2023)という、
3つの大規模な疫学研究のデータを元にして、
221054名の33年に及ぶ経過観察から、
関連する因子を補正して解析したところ、
4分割したバターの摂取量が最も多い群は、
最も少ない群と比較して、
総死亡のリスクが15%(95%CI:1.08 から1.22)、
有意に増加していました。
その一方で、
キャノーラ油(菜種油)、大豆油、オリーブオイルなどの植物油を、
最も多く摂取していた群は、最も少ない群と比較して、
総死亡のリスクが16%(95%CI:0.79から0.90)、
こちらは有意に低下していました。
ここからの推計として、
10グラムのバターを同量の植物油に変更すると、
総死亡リスクは17%(95%CI:0.79から0.86)、
有意に低下すると計算されました。
食事の脂肪の組成を見直すことが、
生命予後の改善に繋がるという今回のデータはとても興味深く、
今後より検証が進むことを期待したいと思います。
長生きのためには、
なるべくバターのような飽和脂肪酸を減らし、
植物油を増やすことが、
1つの重要なポイントであるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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