人工甘味料による動脈硬化進行のメカニズム
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動や老人ホームの診療などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Cell Metabolism誌に、
2025年2月19日付で掲載された、
人工甘味料の健康リスクについての論文です。
人工甘味料を含むゼロカロリーのダイエット飲料の、
身体への影響については様々な意見があります。
人工甘味料は、
高価な砂糖の代用として開発された、
サッカリンがその始まりで、
その後アミノ酸の一種であるアスパルテームや、
スクラロースなど、
多くの「代用砂糖」が開発されました。
これはそもそもは高価な砂糖の代用品として、
商品価格を下げることが目的で、
サッカリンと言えば安かろう悪かろうという、
どちらかと言えば悪いイメージしかなかったのですが、
カロリーのないことを逆手に取って、
ダイエット目的や健康に良いというイメージで、
急速に普及することになったのです。
サッカリンには発癌性の危惧があって、
今でも使用はされていますが、
その後開発されたアスパルテームやスクラロースの方が、
今では主に使用されています。
普及しているダイエットコーラでも、
使用されているのはアスパルテームやスクラロースが主です。
砂糖の入っているコーラを飲んでいた人が、
それを人工甘味料の入ったダイエットコーラに変えれば、
摂取カロリーは減り、
特に肥満の方や糖尿病の傾向のあるような方では、
より健康にメリットがあるように、
普通に考えればそう思えます。
しかし、人工甘味料の使用により、
体重が減少して血糖コントロールにも良い影響が見られた、
という臨床データがある一方で、
むしろ体重が増加して糖尿病の発症リスクも増加した、
というような相反するデータも得られています。
人工甘味料が舌の甘味受容体に結合することにより、
身体が反応してインスリンを分泌し、
それが空腹感を増強するため、
結果として過食が誘発されるのでは、
という仮説もあります。
2017年に発表されたメタ解析の論文では、
7つの介入試験データと30の疫学研究データを、
まとめて解析した結果、
人工甘味料の使用は、
体格の指標であるBMIに明確な影響を与えていませんでした。
要するに、
ダイエットに対して有効でも無効でもない、という結果です。
一方で疫学研究に含まれる、
405907名のデータをまとめて解析した結果では、
人工甘味料の使用は若干のBMIの増加と関連が認められました。
また複数の疫学データにおいて、
人工甘味料による肥満や糖尿病、心血管疾患リスクの増加が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28716847/
このように、
人工甘味料はそこまで健康を害するとは言えませんが、
無害とも言えません。
仮に人口甘味料が心血管疾患リスクを増加させるとすれば、
そのメカニズムをどう考えれば良いのでしょうか?
今回の研究では、
動脈硬化のモデル動物であるネズミを利用して、
そのメカニズムの検証を行っています。
モデル動物のネズミに、
代表的な人工甘味料であるアスパルテームを12週間摂取させると、
4週間以降で動脈硬化病変の進行が認められました。
また、アスパルテームの摂取により、
血液中のインスリンが増加し、
アスパルテームの摂取量が多いほど、
インスリンの上昇も顕著であることが確認されました。
高インスリン血症とインスリン抵抗性は、
動脈硬化を進行させる要因であることが分かっていますから、
アスパルテームの摂取による高インスリン血症が、
動脈硬化を進行させた原因である可能性が想定されます。
ここで自律神経系の副交感神経である、
迷走神経を切除する実験を行うと、
迷走神経が切除されたネズミでは、
アスパルテームによる高インスリン血症は抑制され、
動脈硬化の進行も抑えられることが確認されました。
つまり、アスパルテームは副交感神経の刺激を介して、
インスリンの分泌を亢進させ、
動脈硬化を進行させている、
という機序が推測されたのです。
この研究はまだ動物実験のレベルで、
人間で同じことが言えるかどうかは分かりませんが、
人工甘味料にも一定の健康リスクがある可能性があり、
清涼飲料水の安全な代用品ではない、という認識は、
現時点で持っておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動や老人ホームの診療などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Cell Metabolism誌に、
2025年2月19日付で掲載された、
人工甘味料の健康リスクについての論文です。
人工甘味料を含むゼロカロリーのダイエット飲料の、
身体への影響については様々な意見があります。
人工甘味料は、
高価な砂糖の代用として開発された、
サッカリンがその始まりで、
その後アミノ酸の一種であるアスパルテームや、
スクラロースなど、
多くの「代用砂糖」が開発されました。
これはそもそもは高価な砂糖の代用品として、
商品価格を下げることが目的で、
サッカリンと言えば安かろう悪かろうという、
どちらかと言えば悪いイメージしかなかったのですが、
カロリーのないことを逆手に取って、
ダイエット目的や健康に良いというイメージで、
急速に普及することになったのです。
サッカリンには発癌性の危惧があって、
今でも使用はされていますが、
その後開発されたアスパルテームやスクラロースの方が、
今では主に使用されています。
普及しているダイエットコーラでも、
使用されているのはアスパルテームやスクラロースが主です。
砂糖の入っているコーラを飲んでいた人が、
それを人工甘味料の入ったダイエットコーラに変えれば、
摂取カロリーは減り、
特に肥満の方や糖尿病の傾向のあるような方では、
より健康にメリットがあるように、
普通に考えればそう思えます。
しかし、人工甘味料の使用により、
体重が減少して血糖コントロールにも良い影響が見られた、
という臨床データがある一方で、
むしろ体重が増加して糖尿病の発症リスクも増加した、
というような相反するデータも得られています。
人工甘味料が舌の甘味受容体に結合することにより、
身体が反応してインスリンを分泌し、
それが空腹感を増強するため、
結果として過食が誘発されるのでは、
という仮説もあります。
2017年に発表されたメタ解析の論文では、
7つの介入試験データと30の疫学研究データを、
まとめて解析した結果、
人工甘味料の使用は、
体格の指標であるBMIに明確な影響を与えていませんでした。
要するに、
ダイエットに対して有効でも無効でもない、という結果です。
一方で疫学研究に含まれる、
405907名のデータをまとめて解析した結果では、
人工甘味料の使用は若干のBMIの増加と関連が認められました。
また複数の疫学データにおいて、
人工甘味料による肥満や糖尿病、心血管疾患リスクの増加が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28716847/
このように、
人工甘味料はそこまで健康を害するとは言えませんが、
無害とも言えません。
仮に人口甘味料が心血管疾患リスクを増加させるとすれば、
そのメカニズムをどう考えれば良いのでしょうか?
今回の研究では、
動脈硬化のモデル動物であるネズミを利用して、
そのメカニズムの検証を行っています。
モデル動物のネズミに、
代表的な人工甘味料であるアスパルテームを12週間摂取させると、
4週間以降で動脈硬化病変の進行が認められました。
また、アスパルテームの摂取により、
血液中のインスリンが増加し、
アスパルテームの摂取量が多いほど、
インスリンの上昇も顕著であることが確認されました。
高インスリン血症とインスリン抵抗性は、
動脈硬化を進行させる要因であることが分かっていますから、
アスパルテームの摂取による高インスリン血症が、
動脈硬化を進行させた原因である可能性が想定されます。
ここで自律神経系の副交感神経である、
迷走神経を切除する実験を行うと、
迷走神経が切除されたネズミでは、
アスパルテームによる高インスリン血症は抑制され、
動脈硬化の進行も抑えられることが確認されました。
つまり、アスパルテームは副交感神経の刺激を介して、
インスリンの分泌を亢進させ、
動脈硬化を進行させている、
という機序が推測されたのです。
この研究はまだ動物実験のレベルで、
人間で同じことが言えるかどうかは分かりませんが、
人工甘味料にも一定の健康リスクがある可能性があり、
清涼飲料水の安全な代用品ではない、という認識は、
現時点で持っておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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