SGLT2阻害剤による糖尿病寛解効果
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

British Medical Journal誌に2025年1月22日付で掲載された、
糖尿病治療薬とカロリー制限の、
糖尿病寛解効果についての論文です。
糖尿病は治る病気でしょうか?
糖尿病にも色々な種類があり、
体質の影響が大きいものや、
膵臓が大きなダメージを受けていて、
それが回復し難いような場合には、
一生治療を続けてゆく必要があります。
つまり、完全に治ることはありません。
ただ、肥満を伴い、
過食や運動不足などの生活習慣が、
大きく影響して発症したような糖尿病は、
発症から数年以内の早期であれば、
カロリー制限などによる体重管理を行うことにより、
「寛解」という状態に持ち込むことは可能です。
「寛解」というのは、
継続的に医学的な治療や管理を要さない状態となることで、
糖尿病の場合、
HbA1cという指標が未治療でも、
2か月以上6.5%未満という、
糖尿病の診断基準を下回る状態とされています。
(他に血糖値が正常化することが、
条件として付加されることもあります)
2018年のLancet誌に発表された論文では、
イギリスで肥満に伴う糖尿病の患者さんに、
カロリー制限による減量を試みて、
46%の患者さんが寛解したと報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29221645/
今回の研究ではより寛解率を高める目的で、
カロリー制限に加えて、
代謝を改善して寛解を促す可能性のある、
SGLT-2阻害剤という糖尿病治療薬を、
併用する方法の有効性を検証しています。
対象は中国の16の専門施設で登録された、
BMIが25を超える過体重もしくは肥満のある、
2型糖尿病の患者トータル328名で、
糖尿病と診断されてから6年未満が条件となっています。
対象者をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は男性1200キロカロリー、
女性1000キロカロリーは維持しつつ、
運動量に合わせたカロリー制限に加えて、
SGLT-2阻害剤のダパグリフロジン1日10㎎を使用。
もう一方は偽薬を使用して、
12か月を超える経過観察を施行しています。
その結果、
ダパグリフロジン群では44%、
偽薬群では28%の患者さんが、
1年の治療後に糖尿病が寛解と診断されました。
つまり、カロリー制限のみを行った場合と比較して、
SGLT-2阻害剤を併用すると、
より多くの患者さんが糖尿病を寛解した、
という結果です。
今回の研究ではイギリスのカロリー制限のみのデータと比較して、
寛解率がかなり低いことが気になりますが、
欧米と比べてアジア人種の糖尿病は、
インスリン分泌不全の比率が高いことが指摘されていて、
そうした対象者の体質の違いが、
結果に影響した可能性などが考えられます。
これは糖尿病が完全に治った、
ということではありませんが、
一定期間の生活改善と治療により、
糖尿病が治ったに近い状態になる可能性がある、
という知見は、
患者さんにとっても、
医療者にとっても希望を感じるもので、
今後より寛解率を上げるための方法などについて、
検証の進むことを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

British Medical Journal誌に2025年1月22日付で掲載された、
糖尿病治療薬とカロリー制限の、
糖尿病寛解効果についての論文です。
糖尿病は治る病気でしょうか?
糖尿病にも色々な種類があり、
体質の影響が大きいものや、
膵臓が大きなダメージを受けていて、
それが回復し難いような場合には、
一生治療を続けてゆく必要があります。
つまり、完全に治ることはありません。
ただ、肥満を伴い、
過食や運動不足などの生活習慣が、
大きく影響して発症したような糖尿病は、
発症から数年以内の早期であれば、
カロリー制限などによる体重管理を行うことにより、
「寛解」という状態に持ち込むことは可能です。
「寛解」というのは、
継続的に医学的な治療や管理を要さない状態となることで、
糖尿病の場合、
HbA1cという指標が未治療でも、
2か月以上6.5%未満という、
糖尿病の診断基準を下回る状態とされています。
(他に血糖値が正常化することが、
条件として付加されることもあります)
2018年のLancet誌に発表された論文では、
イギリスで肥満に伴う糖尿病の患者さんに、
カロリー制限による減量を試みて、
46%の患者さんが寛解したと報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29221645/
今回の研究ではより寛解率を高める目的で、
カロリー制限に加えて、
代謝を改善して寛解を促す可能性のある、
SGLT-2阻害剤という糖尿病治療薬を、
併用する方法の有効性を検証しています。
対象は中国の16の専門施設で登録された、
BMIが25を超える過体重もしくは肥満のある、
2型糖尿病の患者トータル328名で、
糖尿病と診断されてから6年未満が条件となっています。
対象者をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は男性1200キロカロリー、
女性1000キロカロリーは維持しつつ、
運動量に合わせたカロリー制限に加えて、
SGLT-2阻害剤のダパグリフロジン1日10㎎を使用。
もう一方は偽薬を使用して、
12か月を超える経過観察を施行しています。
その結果、
ダパグリフロジン群では44%、
偽薬群では28%の患者さんが、
1年の治療後に糖尿病が寛解と診断されました。
つまり、カロリー制限のみを行った場合と比較して、
SGLT-2阻害剤を併用すると、
より多くの患者さんが糖尿病を寛解した、
という結果です。
今回の研究ではイギリスのカロリー制限のみのデータと比較して、
寛解率がかなり低いことが気になりますが、
欧米と比べてアジア人種の糖尿病は、
インスリン分泌不全の比率が高いことが指摘されていて、
そうした対象者の体質の違いが、
結果に影響した可能性などが考えられます。
これは糖尿病が完全に治った、
ということではありませんが、
一定期間の生活改善と治療により、
糖尿病が治ったに近い状態になる可能性がある、
という知見は、
患者さんにとっても、
医療者にとっても希望を感じるもので、
今後より寛解率を上げるための方法などについて、
検証の進むことを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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