スタチンと認知症リスク(2025年メタ解析)
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Alzheimer's & Dementia誌に2025年1月16日付で掲載された、
コレステロール降下剤と認知症との関連についての論文です。
スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
コレステロールを下げるばかりではなく、
抗炎症作用などの多面的な作用を持ち、
それが動脈硬化の進行予防などに結び付いていると考えられています。
スタチンの心筋梗塞などの心疾患の予防効果は、
間違いなく実証された事実ですが、
認知症に対する効果についてはまだ議論があります。
スタチンの効果の1つとして、
コレステロールの中間代謝産物のイソプレノイドを抑制し、
これが認知症の発症に伴うβアミロイドなどの異常蛋白の蓄積を、
抑制する効果があるのではないか、
という考え方があります。
これが事実であるとすれば、
スタチンは認知症、特にアルツハイマー型認知症に対しては、
その発症を抑制するような効果が期待出来ます。
しかし、その一方でスタチンに使用において、
認知機能の低下が生じるような事例も報告されています。
また、疫学データにおいても、
スタチンの使用により一定の認知症予防効果が認められた、
という報告がある一方で、
そうした効果は認められなかった、
というような報告もあります。
たとえば、2024年に発表された、
日本の診療報酬のデータを元にした研究では、
スタチンの30日以内の使用では、
むしろ使用者の方が認知症リスクは増加していた一方で、
それを超える長期の処方においては、
認知症リスクは有意に低下していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38968046/
この問題はまだ結論が出ているとは言えないのです。
今回の研究は、
これまでの主な臨床データを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
この問題の現時点での検証を行っているものです。
これまでに発表された55の観察研究に含まれる、
トータルで700万例を超える臨床データをまとめて解析したところ、
スタチンを使用している人は、していない人と比較して、
その後の認知症のリスクが14%(95%CI:0.82から0.91)、
有意に低下していました。
個別の認知症毎の解析では、
スタチンの使用はアルツハイマー型認知症のリスクを、
18%(95%CI:0.74から0.90)有意に低下させていましたが、
脳血管性認知症のリスクについては、
低下の傾向はあるものの有意ではありませんでした。
条件毎の解析では、
スタチンの使用はその後の認知症のリスクを、
2型糖尿病の患者さんにおいて13%(95%CI:0.85から0.89)、
3年以上スタチンを継続している患者さんにおいて、
67%(95%CI:0.30から0.46)、
アジア人の集団において16%(95%CI:0.80から0.88)、
それぞれ有意に低下させていました。
また、スタチンの種別毎の解析では、
ロスバスタチンが最も認知症予防効果が高く、
28%(95%CI:0.60から0.88)、
認知症リスクを有意に低下させていました。
このように、
スタチンを数年を超えて使用することにより、
認知症、特にアルツハイマー型認知症のリスク低下に結び付くことは、
今回の大規模な解析でもほぼ間違いのない事実で、
今後そのメカニズムを含め、
より緻密で実証的な研究の進捗に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Alzheimer's & Dementia誌に2025年1月16日付で掲載された、
コレステロール降下剤と認知症との関連についての論文です。
スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
コレステロールを下げるばかりではなく、
抗炎症作用などの多面的な作用を持ち、
それが動脈硬化の進行予防などに結び付いていると考えられています。
スタチンの心筋梗塞などの心疾患の予防効果は、
間違いなく実証された事実ですが、
認知症に対する効果についてはまだ議論があります。
スタチンの効果の1つとして、
コレステロールの中間代謝産物のイソプレノイドを抑制し、
これが認知症の発症に伴うβアミロイドなどの異常蛋白の蓄積を、
抑制する効果があるのではないか、
という考え方があります。
これが事実であるとすれば、
スタチンは認知症、特にアルツハイマー型認知症に対しては、
その発症を抑制するような効果が期待出来ます。
しかし、その一方でスタチンに使用において、
認知機能の低下が生じるような事例も報告されています。
また、疫学データにおいても、
スタチンの使用により一定の認知症予防効果が認められた、
という報告がある一方で、
そうした効果は認められなかった、
というような報告もあります。
たとえば、2024年に発表された、
日本の診療報酬のデータを元にした研究では、
スタチンの30日以内の使用では、
むしろ使用者の方が認知症リスクは増加していた一方で、
それを超える長期の処方においては、
認知症リスクは有意に低下していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38968046/
この問題はまだ結論が出ているとは言えないのです。
今回の研究は、
これまでの主な臨床データを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
この問題の現時点での検証を行っているものです。
これまでに発表された55の観察研究に含まれる、
トータルで700万例を超える臨床データをまとめて解析したところ、
スタチンを使用している人は、していない人と比較して、
その後の認知症のリスクが14%(95%CI:0.82から0.91)、
有意に低下していました。
個別の認知症毎の解析では、
スタチンの使用はアルツハイマー型認知症のリスクを、
18%(95%CI:0.74から0.90)有意に低下させていましたが、
脳血管性認知症のリスクについては、
低下の傾向はあるものの有意ではありませんでした。
条件毎の解析では、
スタチンの使用はその後の認知症のリスクを、
2型糖尿病の患者さんにおいて13%(95%CI:0.85から0.89)、
3年以上スタチンを継続している患者さんにおいて、
67%(95%CI:0.30から0.46)、
アジア人の集団において16%(95%CI:0.80から0.88)、
それぞれ有意に低下させていました。
また、スタチンの種別毎の解析では、
ロスバスタチンが最も認知症予防効果が高く、
28%(95%CI:0.60から0.88)、
認知症リスクを有意に低下させていました。
このように、
スタチンを数年を超えて使用することにより、
認知症、特にアルツハイマー型認知症のリスク低下に結び付くことは、
今回の大規模な解析でもほぼ間違いのない事実で、
今後そのメカニズムを含め、
より緻密で実証的な研究の進捗に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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