高齢者はどのくらい卵を食べるのが健康的なのか?(2025年オーストラリアの疫学データ)
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Nutrients誌に2025年1月17日付で掲載された、
高齢者はどのくらい卵を食べるのが健康的かについての論文です。
卵と健康との関連については、
色々な見方があります。
卵黄には1個に200ミリグラムを超えるコレステロールが含まれています。
血液のコレステロールが高いと、
動脈硬化が進行しやすいという知見が得られてから、
食事のコレステロールを制限しようという動きが、
世界的に高まり、
そこで提唱された基準が、
食事のコレステロールを1日300ミリグラム以下にする、
というものです。
これを達成するためには、
卵をなるべく食べないことが、
必要不可欠ですから、
卵の制限が、
健康のためには必要であると考えられたのです。
ところが
2016年に公表されたアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールを制限しても、
血液のコレステロールを減らせるという根拠は乏しいとして、
その目標値は削除されました。
2020年の段階でその根拠となるデータをまとめた、
米国心臓病学会の総説がこちらになります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31838890/
このガイドラインの変更は、
「コレステロールの食事制限は不要」として、
一般にも報道されました。
その報道には誤解を招く点があり、
実際には数値目標が外れただけで、
コレステロールの制限自体は推奨されていたのですが、
コレステロールに制限は要らない、
という誤ったメッセージに受け取られたことは、
残念でした。
その後様々の研究データが発表されましたが、
概ね1日1個を超えない卵の摂取については、
大きな健康リスクはない、
というのがほぼ一致した考え方になっています。
ただ、その元になっているデータの多くは現役世代のもので、
高齢者でも同じとは限りません。
高齢者は摂取する蛋白量が低下していて、
それが体力低下の一因であるという指摘があります。
卵は簡単に蛋白質を摂ることの出来る食品なので、
その意味では卵を食べる習慣は健康に資すると考えることが出来ます。
一方で高齢者ではコレステロールが高い人は多く、
動脈硬化も進行している人が多いことが想定されるので、
コレステロールを多めに摂ることは、
矢張り良くないのではないか、
という考え方もあるのです。
実際にはどうなのでしょうか?
今回の研究はオーストラリアにおいて、
高齢者の健康調査のデータを活用することで、
卵の摂取量と生命予後との関連を検証しています。
対象は登録の時点で70歳以上の一般住民8756例です。
中間値で5から9年の観察期間において、
卵を殆ど食べない人と比較して、
毎週1から6回食べている人は、
心血管疾患による死亡のリスクが29%(95%CI:0.54から0.92)、
総死亡のリスクが17%(95%CI:0.71から0.96)、
それぞれ有意に低下していました。
その一方で毎日卵を食べる習慣のある人は、
殆ど食べない人と比較して、
心血管疾患による死亡リスクも総死亡のリスクも、
やや高い傾向が認められました。
ただ統計的に有意な増加ではありませんでした。
このように、
70歳以上の高齢者を対象とした今回の研究では、
毎日1回を超えないレベルで卵を食べることは、
むしろ健康長寿に役立つ可能性がある、
という結果が得られました。
これは回数のみの質問を元にしているので、
正確な卵の摂取量は不明ですが、
概ね毎日1個以上継続的に食べることは良くない可能性があるものの、
それを超えなければ健康に害はなく、
むしろ健康に資する可能性もある、
というくらいに考えて頂くのが良いと思います。
卵は食べ過ぎず、美味しく食べるのが吉であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Nutrients誌に2025年1月17日付で掲載された、
高齢者はどのくらい卵を食べるのが健康的かについての論文です。
卵と健康との関連については、
色々な見方があります。
卵黄には1個に200ミリグラムを超えるコレステロールが含まれています。
血液のコレステロールが高いと、
動脈硬化が進行しやすいという知見が得られてから、
食事のコレステロールを制限しようという動きが、
世界的に高まり、
そこで提唱された基準が、
食事のコレステロールを1日300ミリグラム以下にする、
というものです。
これを達成するためには、
卵をなるべく食べないことが、
必要不可欠ですから、
卵の制限が、
健康のためには必要であると考えられたのです。
ところが
2016年に公表されたアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールを制限しても、
血液のコレステロールを減らせるという根拠は乏しいとして、
その目標値は削除されました。
2020年の段階でその根拠となるデータをまとめた、
米国心臓病学会の総説がこちらになります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31838890/
このガイドラインの変更は、
「コレステロールの食事制限は不要」として、
一般にも報道されました。
その報道には誤解を招く点があり、
実際には数値目標が外れただけで、
コレステロールの制限自体は推奨されていたのですが、
コレステロールに制限は要らない、
という誤ったメッセージに受け取られたことは、
残念でした。
その後様々の研究データが発表されましたが、
概ね1日1個を超えない卵の摂取については、
大きな健康リスクはない、
というのがほぼ一致した考え方になっています。
ただ、その元になっているデータの多くは現役世代のもので、
高齢者でも同じとは限りません。
高齢者は摂取する蛋白量が低下していて、
それが体力低下の一因であるという指摘があります。
卵は簡単に蛋白質を摂ることの出来る食品なので、
その意味では卵を食べる習慣は健康に資すると考えることが出来ます。
一方で高齢者ではコレステロールが高い人は多く、
動脈硬化も進行している人が多いことが想定されるので、
コレステロールを多めに摂ることは、
矢張り良くないのではないか、
という考え方もあるのです。
実際にはどうなのでしょうか?
今回の研究はオーストラリアにおいて、
高齢者の健康調査のデータを活用することで、
卵の摂取量と生命予後との関連を検証しています。
対象は登録の時点で70歳以上の一般住民8756例です。
中間値で5から9年の観察期間において、
卵を殆ど食べない人と比較して、
毎週1から6回食べている人は、
心血管疾患による死亡のリスクが29%(95%CI:0.54から0.92)、
総死亡のリスクが17%(95%CI:0.71から0.96)、
それぞれ有意に低下していました。
その一方で毎日卵を食べる習慣のある人は、
殆ど食べない人と比較して、
心血管疾患による死亡リスクも総死亡のリスクも、
やや高い傾向が認められました。
ただ統計的に有意な増加ではありませんでした。
このように、
70歳以上の高齢者を対象とした今回の研究では、
毎日1回を超えないレベルで卵を食べることは、
むしろ健康長寿に役立つ可能性がある、
という結果が得られました。
これは回数のみの質問を元にしているので、
正確な卵の摂取量は不明ですが、
概ね毎日1個以上継続的に食べることは良くない可能性があるものの、
それを超えなければ健康に害はなく、
むしろ健康に資する可能性もある、
というくらいに考えて頂くのが良いと思います。
卵は食べ過ぎず、美味しく食べるのが吉であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
この記事へのコメント
詳しいデーターを基にした内容に感服いたしました。ありがとうごさいます。