コーヒーとお茶の頭頚部がんリスクとの関連

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーと頭頚部がんリスク.jpg
Cancer誌に2024年12月23日付で掲載された、
コーヒーとお茶を飲む習慣と、
頭頚部がんのリスクとの関連についての論文です。

頭頚部がんというのは、
口腔、咽頭、喉頭など、
口から咽喉周辺のがんの総称で、
色々な定義がありますが、
今回の論文では、
口腔、中咽頭、下咽頭、喉頭のがんの総称として、
その言葉が使用されています。

頭頚部がんはアルコールや喫煙が、
その発症リスクとなることが知られています。

つまり、その部位に接触する飲み物や煙などの影響を、
大きく受ける可能性がある訳です。

コーヒーやお茶(今回の場合は主に紅茶)には、
多くの生理活性物質が含有され、
一部のがんに対する予防効果の報告もあります。

ただ、飲み物の影響が大きいと想定される頭頚部がんについて、
コーヒーとお茶の影響についてはあまり明確なことが分かっていません。

今回の研究は世界規模で調査されている、
頭頚部がんの疫学研究のデータを活用して、
コーヒーやお茶を飲む習慣と、
頭頚部がんリスクとの関連を検証しているものです。

これは同様の研究結果が2010年にも論文化されていて、
一定の予防効果が確認されていたのですが、
その後のデータを含めて再度検証しているものです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20570908/

これまでの14の疫学研究に含まれる、
9548例の頭頚部がんの事例を、
15783名のコントロールと比較して検証したところ、
コーヒーを飲まない人と比較して、
毎日カフェインを含むコーヒーを4杯以上飲んでいる人は、
頭頚部がんのリスクが17%(95%CI: 0.69から1.00)低下している傾向があり、
個別の部位のがん毎の解析では、
口腔がんのリスクが30%(95%CI:0.55から0.89)、
中咽頭がんのリスクが22%(95%CI: 0.61から0.99)、
それぞれ有意に低下していました。

同様に毎日カフェインを含むコーヒーを、
1日3から4杯飲んでいる人は、飲まない人と比較して、
下咽頭がんのリスクが41%(95%CI:0.39から0.91)、
有意に低下していました。

また、口腔がんのリスクは、
カフェインを含まないコーヒーを飲まない人と比較して飲む人では、
25%(95%CI: 0.64から0.87)有意に低下していました。
ただ、1日0から1杯飲む人ではリスク低下があった一方で、
1杯以上飲む人では有意なリスク低下はなく、
データの解釈はかなり微妙です。

一方でお茶についての解析では、
お茶を飲む人は飲まない人と比較して、
下咽頭がんのリスクが29%(95%CI:0.59から0.87)、
有意に低下していました。
ただ、1日に0から1杯飲む人では、
頭頚部がんのリスクが9%(95%CI:0.84から0.98)、
下咽頭がんのリスクが27%(95%CI:0.59から0.91)、
有意に低下していた一方で、
1日にお茶を1杯を超えて飲む人では、
喉頭がんのリスクが38%(95%CI:1.09から1.74)、
有意に増加していました。

このようにデータは解釈が難しい面があるのですが、
概ねコーヒーを飲むことは、
頭頚部がんのリスクを下げる可能性が高く、
特にカフェインを含むコーヒーで、
その傾向は明確でした。
一方でお茶と頭頚部がんとの関連については、
一部のがんでリスクが増加しているなど、
現時点での判断は困難と考えられました。

こうしたデータは単独では判断の困難なものが多いので、
コーヒーもお茶も適度に飲む分には、
頭頚部がんのリスクとあまり関係がないと思って頂くのが、
現時点では妥当な判断であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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