老化によるバランス感覚と筋力の低下

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日なのでクリニックは休診ですが、
企業の健診などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バランス保持と年齢.jpg
PLOS ONE誌に2024年10月23日付で掲載された、
身体の老化に関わる指標の意義についての論文です。

誰でも長生きはしたいと考えますが、
寿命だけが長くなっても、
自由に外出することが出来ない、
身の周りのことを自分でやることが出来ない、
というような状態では、
長生きをしても仕方がない、
と考える人も多いと思います。

人間の筋肉量のピークは、
30歳くらいまでにあって、
それ以降は個人差はあるものの、
徐々に筋肉量は低下し、
それに伴って筋力も低下してゆきます。

身体を支えて立ち上がり、
その姿勢を維持するためには、
一定の筋肉量が必要ですから、
老化に伴って筋肉量が低下し、
筋力が低下すれば、
いずれは誰でも起き上がることが出来なくなる、
つまり寝たきりになる理屈です。

ただ、人間の体力というものは、
単純に筋肉量だけでは決められません。

老化に伴う体力の指標として、
筋力以外に重要視されているのが、
歩行の状態とバランス保持能力です。

老化に伴い歩行スピードは落ち、歩行は不安定となります。
また、バランス保持能力が低下すると、
少しバランスを崩しただけで、
転倒をしやすくなり、
それが骨折などの大きな要因となります。

それでは老化に伴うこうした変化の中で、
最も重要なものは何なのでしょうか?

その点についてはあまり検証されたことがありませんでした。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
50歳以上の持病のない40名を被験者として、
上下肢の筋力、片足で立っていられる時間などのバランス保持能力、
モーションキャプチャーで測定した歩行状態の3つの指標を計測し、
年齢との関連を比較検証しています。

その結果、
最も加齢による影響を強く受けていたのは、
バランス保持能力で、
特に片足立ちで姿勢を維持出来る時間が、
年齢と関連して減少していました。

一方で歩行の能力はあまり加齢の影響を受けておらず、
筋力の低下は加齢による影響は受けていたものの、
バランス保持能力に比較すると軽微なものでした。
性差は筋力のみで認められました。

このように、
複数の指標の中で、
最も老化による影響を受けやすいのは、
片足立ち持続時間などのバランス保持能力で、
仮に1つの指標のみを用いるとすれば、
片足立ちを30秒以上保持出来るかどうかが、
その後の体力低下などのリスクを、
最も鋭敏に反映すると考えられました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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