帯状疱疹ワクチンの認知症予防効果

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
帯状疱疹ワクチンと認知症予防.jpg
JAMA誌に2024年10月18日付で掲載された解説記事ですが、
帯状疱疹の予防ワクチンの認知症予防効果についての内容です。

帯状疱疹は身体に帯状の湿疹が出来、
強い神経痛を伴う病気で、
症状自体は一時的ですが、
その後に帯状疱疹後神経痛という、
その名の通りの辛い神経痛が長く残ることがあります。

この病気は水ぼうそう(水痘)と同じウイルスの感染によって起こります。
初感染は水ぼうそうという形態を取り、
おそらくは神経節という部分に、
残存しているウイルスが、
身体の細胞性免疫が低下すると、
再燃して帯状疱疹を起こすのです。

帯状疱疹で問題となるのは、
帯状疱疹後神経痛ばかりではなく、
脳卒中などのリスクが、
その後に増加することが指摘されています。
2014年のClinical Infectious Diseases誌に掲載された論文では、
帯状疱疹発症後4週以内の脳卒中のリスクが、
通常より63%増加したと報告されていまる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24700656/

また、認知症との関連を指摘する意見もあります。

ウイルス感染症に罹患することが、
その後の認知症のリスクになるという考え方は以前からあり、
帯状疱疹との関連を指摘する知見もあります。
特に三叉神経領域への感染では、
直接脳神経に炎症が及んでいることから、
そのリスクを指摘する意見があります。

ただ、帯状疱疹後に認知症のリスクが増加した、
という報告がある一方で、
明確な関連は認められなかった、という報告もあり、
その結果は一致していません。

近年帯状疱疹の発症予防のために、
シングリックスという名前の不活化ワクチンと、
海外ではゾスタバックス、日本では国産の水痘ワクチンの、
弱毒生ワクチンの使用が、
開始され一定の予防効果が確認されています。

それでは、こうしたワクチンの接種により、
その後の認知症のリスクには何か変化があるのでしょうか?

これについては、
まだまとまったデータはありまないのですが、
2024年にmedRxivという、
まだ査読前の論文を公開さいているサイトに発表された研究では、
ウェールズ地方での疫学データの解析により、
帯状疱疹予防の弱毒生ワクチンを接種すると、
しない場合と比較して、
その後9年間に新たに軽度認知機能障害(認知症の前段階)を来すリスクが、
3%有意に低下しており、
不活化ワクチンのシングリックスを接種した、
認知症と診断されている患者さんは、
していない患者さんと比較して、
認知症により死亡するリスクが29.5%有意に低下していました。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2024.08.23.24312457v1

つまり、
帯状疱疹予防ワクチンの接種により、
認知症の発症リスクは低下し、
認知症に生命予後も改善される可能性がある、
ということを示唆するデータです。

このように、
帯状疱疹予防ワクチンにより、
認知症の予防と予後の改善が、
期待される知見が最近複数報告されて注目されていて、
まだ信頼のおける制度の高いデータは乏しいので、
実証されているとは言えないのですが、
今後の研究の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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