片頭痛の治療薬の直接比較(2024年ネットワークメタ解析)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や保育園の健診などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
片頭痛の治療比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2024年9月18日付で掲載された、
流通している片頭痛の治療薬の有効性と安全性とを、
比較したメタ解析の論文です。

片頭痛は習慣性頭痛の代表で、
セロトニンの1Bと1Dという種類の受容体を刺激する作用を持つ、
トリプタン製剤と呼ばれる薬が主に使用されています。

このタイプの薬は従来の痛み止めと比較すれば、
格段に片頭痛には効果の高い薬です。
ただ、片頭痛の患者さんの3分の1ではトリプタンは無効で、
3から4割の患者さんは使用後も発作を繰り返しています。
また、血管収縮作用のあることより、
心血管疾患のある患者さんではそれが悪化する可能性がある、
というリスクも持っています。

最近の考えではトリプタン製剤のターゲットである、
セロトニンの受容体は、
片頭痛の症状に関連はしていても、
その原因ではありません。
片頭痛というのは脳の一種の炎症で、
三叉神経の興奮により、
神経終末から遊離されるCGRP
(calcitonin gene-related peptide)
と呼ばれる炎症物質が、
そのきっかけであると考えられています。

そのため、
このCGRPやその受容体に対する抗体製剤が、
開発され使用されるようになってきています。

日本ではまだ注射で使用される製剤ですが、
海外ではその後開発された飲み薬の製剤が、
現在では主に使用されているようです。

このCGRP関連薬は、
トリプタン製剤が狭心症などのために、
使用出来ない患者さんでは第一選択となります。

ただ、その有効性は偽薬や、
ロキソニンのような痛み止めと比較した臨床試験においては、
確認されていますが、
トリプタン製剤と直接比較したようなデータは、
実際にはあまり存在していません。

「理屈の上ではトリプタン製剤より効きそうだ」
という推測は出来ても、
それが事実であるかどうかは、
まだ明確ではないのです。

今回の研究は、
これまでの個々の薬剤の臨床試験データを、
まとめて解析するネットワークメタ解析という手法を用いて、
各種のトリプタン製剤とCGRP関連薬の有効性と安全性とを、
比較検証しているものです。

対象となっている薬剤は、
トリプタン製剤の、スマトリプタン(イミグラン)、
エレトリプタン(レルパックス)、リボトリプタン(マクサルト)、
ゾルミトリプタン(ゾーミック)、
トリプタンと同じセロトニン系に作用するものの、
血管収縮作用のないラスミジタン(レイボー)、
そしてCGRP関連薬の飲み薬である、
日本未発売のリメゲパントとウブロゲパントです。

解析の結果、
4種類のトリプタン製剤は、
それらより新しい薬である、
ラスミジタンとCGRP関連薬よりも、
その有効性と継続可能性において優れていました。
そして上記の薬剤全てが、
その有効性において、
非ステロイド系消炎鎮痛剤などの、
従来の痛み止めより優れていました。

トリプタン製剤以外の新薬は、
確かに血管収縮作用がなく使いやすいという利点はある一方、
その有効性においては、
現状はトリプタン製剤に見劣りする可能性があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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