アジスロマイシンの気管支喘息予後改善効果

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アジスロマイシンの喘息寛解効果.jpg
Chest誌に2024年8月付で掲載された、
マクロライド系抗菌薬の継続的治療の、
難治性喘息に対する効果を検証した論文です。

気管支喘息は気道がアレルギー性の炎症により収縮し、
喘息発作という喘鳴と呼吸困難を伴う発作を起こす病気です。

喘息の治療は吸入ステロイドなどの吸入剤の進歩や、
サイトカインなどを抑制する、
生物学的製剤の注射薬の導入などにより、
近年格段の進歩を遂げていますが、
そうした治療を継続しても、
発作を繰り返すような難治性の患者さんも、
一定数は存在しています。

そこで従来とは別のアプローチの治療として検討されているのが、
免疫調整的な作用を持つとされるマクロライド系の抗菌薬を、
通常治療に併用するという方法です。

アレルギー性の炎症を主体とした、
副鼻腔炎や慢性の細気管支炎などの慢性炎症に対して、
マクロライド系の抗菌薬を少量持続で使用するというのは、
日本ではかなり以前から、
経験的に臨床で行われていた治療です。
通常マクロライド系の抗菌薬を、
急性感染症に使用する量の、
半量程度で継続的に使用する、
というのが従来的な使用法です。

個人的には実証的なデータは乏しく、
その効果には懐疑的であったのですが、
最近ではどちらかと言えば海外で、
喘息を含むアレルギー性疾患全般で、
同様の試みが検証されるようになっています。

こうした場合、日本では主にクラリスロマイシンを使用していて、
保険診療でも概ね査定されずに治療が可能ですが、
海外ではアジスロマイシンが使用されることが多いようです。
ただ、アジスロマイシンの長期使用は、
日本の保険診療では認められていないので、
日本で現行アジスロマイシンの継続治療を行うことは困難です。

抗菌剤の継続的使用は、
耐性菌のリスクを増加させるとして、
通常はむしろ否定的に扱われています。

アジスロマイシンも抗菌剤であることに違いはありませんから、
耐性菌の観点から使用しない方が良いように思いますが、
マクロライドには免疫調整作用があり、
耐性菌を誘導しない、
というような意見もあって、
その点は見解が割れています。

今回の研究はアジスロマイシンを喘息治療に活用した、
臨床試験のデータを二次解析したものですが、
難治性の喘息に対する48週間のアジスロマイシン治療の、
喘息寛解効果を検証しているものです。

対象は難治性の喘息患者トータル335名で、
そのうちの168名は週3回、アジスロマイシンを500㎎内服することを、
通常治療の上乗せで48週間に渡り継続し、
残りの167名は偽薬を同様に使用して、
1年間の経過観察を施行しています。

その結果、
過去半年喘息の急性増悪や経口ステロイドの使用のない、
臨床的寛解に至った比率は、
偽薬群が38.9%であったのに対して、
アジスロマイシン群では50.6%で、
アジスロマイシンの使用は臨床的な喘息の予後を、
有意に改善していました。

臨床指標に加えて、肺機能の指標の正常化を含めた使用で見ても、
寛解に至った比率は、
偽薬群が37.1%であったのに対して、
アジスロマイシン使用群は50.8%で、
アジスロマイシンの使用は寛解率を有意に改善していました。

このように、
今回の検証では難治性の喘息に対して、
アジスロマイシンの継続的使用による、
一定の臨床的有効性が確認されました。
ただ、その使用は耐性菌の誘導や、
副作用や有害事象などのリスク増加が想定され、
今後その安全性については、
更なる検証が必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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