高齢者の疼痛への抗うつ剤の有効性(2024年メタ解析)

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の痛みに対する抗うつ剤の効果.jpg
British Journal of Clinical Pharmacology誌に、
2024年9月12日付で掲載された、
高齢者の痛みに対する抗うつ剤の有効性を検証した論文です。

腰痛や関節痛、頭痛などの身体の痛みは、
誰でも体験する非常にありふれたものですが、
日常生活に直結する深刻な症状でもあります。

特に慢性の原因不明の痛みに対しては、
痛み止めを使用する以外にあまり有効な手立てがありません。

こうした難治性の痛みに対して、
現行使用される薬の1つが抗うつ剤です。

抗うつ剤はうつ病の治療薬で、
疼痛治療薬ではありませんが、
慢性の原因不明の疼痛は、
脳内ホルモンなどが関連しているという仮説があり、
通常の消炎鎮痛剤よりも、
抗うつ剤がその緩和に有効であった、
という症例報告などがあります。

そうした知見を基にして、
抗うつ剤の処方が施行されているのですが、
大規模な臨床試験などのデータは乏しく、
その精度もそれほど高いものではない、
という問題点があります。

特に高齢者においては、
慢性疼痛の患者さんは多い一方で、
抗うつ剤の副作用や有害事象も多く発症することが予想され、
抗うつ剤の有効性を検証した臨床データの中に、
高齢者のものはより少ない、
という指摘があります。

そこで今回の研究では、
これまでの主だった臨床データをまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析という手法を用いて、
この問題の現時点での検証を行っています。

これまでの15の臨床研究に含まれる、
トータルで1369名の65歳以上の患者データをまとめて解析したところ、
最も多く検討されていた抗うつ剤は、
デュロキセチンとアミトリプチリンで、
対象となった痛みで多かったのは変形性膝関節症による膝の痛みでした。
臨床データの多くは対象者が100人未満という小規模なものでした
0から2週間という短期の投与では、
抗うつ薬の使用は痛みに対して有意な改善を示さず、
6週間から1年未満という中期間の使用において、
デュロキセチンのみが僅かながら有意な改善効果を示しました、
15件の研究中7件において、
対照群と比較して抗うつ剤使用群では、
有害事象などによって薬が継続困難な事例が多くなっていました。

このように、
65歳以上の高齢者においては、
抗うつ剤による慢性疼痛の改善効果は、
明確に実証されているとは言い難く、
今後より実証的な検証が必要と考えられました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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