乳製品の補充の高齢者骨折予防効果

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カルシウムとタンパクの骨折予防効果.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年10月20日ウェブ掲載された、
乳製品の使用による高齢者の転倒骨折予防効果についての論文です。

高齢者の転倒による骨折は、
寝たきりへの移行の大きな要因で、
その多くは大腿骨頸部骨折によるものです。

骨量が低下し骨が脆弱になっている高齢者では、
躓いて足を踏ん張っただけでも、
そうした骨折が簡単に起こってしまうのです。

この転倒や骨折の予防として、
これまで主に試みられてきたのがカルシウムの補充です。

ただ、カルシウムのみの補充は、
最近の臨床データではあまり良い結果がなく、
むしろ高齢者のトータルな予後に、
悪影響を与えたという報告もあります。

そこで栄養学的観点から検証されているのが、
カルシウムとタンパク質を、
同時に補充するという考え方です。

今回の研究はオーストラリアにおいて、
60の高齢者施設を登録して、
それをくじ引きで2つの群に分けると、
一方は1日700㎎のカルシウムと体重1キロ当たり0.9グラムのタンパク質を含む、
通常の食事を継続し、
もう一方はそれに加えて、
牛乳、チーズ、ヨーグルトの乳製品を強化して、
カルシウムは1日1142㎎、タンパク質は体重1キロ当たり1.1グラムを維持し、
2年間の経過観察を施行しています。

その結果、
カルシウムとタンパク質を強化した施設は、
通常の施設と比較して、
トータルな骨折のリスクが33%(95%CI:0.48から0.93)、
大腿骨頸部骨折のリスクが46%(95%CI:0.35から0.83)、
転倒のリスクが11%(95%CI:0.78から0.98)、
それぞれ有意に低下していました。
このリスクの低下は試験開始後3か月で認められ、
死亡リスクについては有意な差はありませんでした。

このように、
施設間の比較で個々の入居者の比較ではなく、
その点のバイアスは否定できないのですが、
栄養療法のみで、
かなり明確な転倒骨折リスクの差が見られたことは、
とても興味深い結果で、
今後より詳細な検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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